第11章-4
九月の頭になって、やっと新しい動きがあらわれた。大和田義雄から連絡があったのだ。休みの日は昼過ぎまで寝てる蓮實淳も早くに起き、
「ちょっと早過ぎたかな?」
歩くだけでも汗が
「あっ、蓮實さん、お出かけでしたか。どちらへお出でです?」
「いえ、ちょっとそこまで」
「はあ、そうでしたか。――いや、すみません。こういうのを警察根性っていうんでしょうね。つい訊いちゃうんですよ。どこに行くのかとか、なにするのかって」
警官は笑った。二枚目面した男の笑顔にはそれなりの破壊力がある。ま、カンナが
「で、なにかご用でしたか?」
「そうなんですよ。ちょっとご相談がありまして」
自転車はからからと音を立てている。二人は
「なんです? 相談ってのは」
「いえ、この前のつづきなんですがね、先方がやはり被害届を出そうかと言ってまして」
彼は立ちどまった。
「
「ええ、それは言ってあるんですがね。勘違いで起こったのだから、同じことは起こらないですよって。その後も何度か話しに行ってるんです。しかし、納得いかないようでして」
「納得いかないと言われてもね」
蓮實淳は歩き出した。――まあ、これも俺たちを追い込む作戦の
「あの、蓮實さん?」
「あ? ああ、すみません。考えごとしてて、」
「まあ、考えちゃいますよね。私もほんと困ってまして。それでですね、もしそうしてもいいなら今日にでも
彼はふたたび立ちどまった。警官は
「どうしました?」
「いや、――その、それは先方がそう望んでるということですか?」
「はい。私にはそのように言ってきました。二度とああいうことが起こらない
どういうことだ?
「どうでしょうね? いえ、もちろんそれでいいならってことですよ。しかし、被害届などと言ってるのを考えると、そうした方がいいように思えるんですが」
「はあ――」
動きつづけていたものの、頭はじきに
「いいでしょう。勘違いとはいえ、やったことはやったことですからね。謝罪しろというなら幾らでもしますよ」
「そうですか。それはよかった」
「では、その方のお住まいを案内しますよ。お時間は大丈夫です?」
彼は時計を見た。――十一時四十一分。まあ、約束には間に合うだろう。それに、知ってるっていうのもなんだしな。
「ええ、まだ少しなら。ここから近いんですか?」
「もうすぐですから」
警官はいろいろ話しかけてくる。適当にこたえながら、彼は痺れた思考を戻そうとしていた。――謝罪させてどうするつもりなんだ? なんらかの
「――という感じでしてね。まあ、警察もけっこう大変なんですよ」
「はあ、でしょうね」
「っと、ここです。この
「柏木伊久男さんですか」
「そうです。ええと、六時くらいは
「はい、大丈夫です」
「では、そのように伝えておきます。いえ、そのときは私と
軽く頭を下げ、彼はそこを
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