第3章-1
【 3 】
そろそろ蓮實淳の〈能力〉についてきちんと説明する必要が出てきたようだ。それと、占い師になった
彼の〈能力〉には二つの異なる側面があった。ひとつは《見る》ことであり、もうひとつは《聴く》ことだ。《見る》方に関してはどのようになってるかの説明はした。まあ、それだって簡単には信じられないだろうけど、《聴く》方に
この雪の日から
彼が幾つも仕事をしてきたのはこれまでにも書いた。携帯電話販売店やレンタルビデオ屋、雑貨屋、喫茶店、そして、最後にしていたのが飲み屋の店長だった。そこが
その雑貨屋は名前が示す以上に
彼は四日間そこで店番をしていたのだけど、その最終日、空も気分もどんよりした木曜に大きな荷物を持ち、背中にも背負った男が入ってきた。白いゆったりした服の上にダウンコートを着た、腕に太い
「山崎サンハ、イナインデスカ? ドウシタンデスカ?」
男は入ってくるなりそう言った。そして、山崎さん(店主だ)の不在理由を聴くと、手首を
「今日ハ約束シテタノデ沢山品物ヲ持ッテ来タンデスヨ。ダカラ、コンナ大荷物ネ。ベリーヘビーダッタノヨ」
お前のせいで大変な
「それはお気の毒」
カウンターに寄りかかり、蓮實淳はそうとだけこたえた。男は
「オキノドク?」
「残念だったね、という意味ですよ」
「オウ! 残念ネ! ソウ、残念至極!」
男は突然笑いだした。言ってるのと表情がちぐはぐだし、
「ワタシ、ワザワザ、ベリーヘビーナ荷物持ッテ来タネ。
しゃがみ込むと男はごそごそと荷物を
「見ルダケハ、タダヨ。イッパイ見テ。ワタシ、オッパイ見セルノ嫌ダケド、イッパイハ見テ欲シイノヨ」
うわっ、今のジョークだ。蓮實淳はうんざりした。男はどうだとばかりに笑顔を強くしてる。
「コレハ、クレオパトラ
蓮實淳は入口を
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