第2章-5
カンナは雑誌を取った。ぺらぺらと
「
猫
「ほんと、なにしてんだろ。――ま、別にいいけど」
いつしかカンナは彼の〈能力〉に
とはいえ、こうやってたまに猫と二人っきりになりたがるのを見せられると、そこに不可思議さの
しかし、その天井の上ではまさに馬鹿げたことが起こっていた。彼は猫としゃべっていたのだ。
「難しいことを引き受けちまったもんだねぇ。どうせ、あの小娘がしゃしゃり出てきたんだろ」
「まあね。でも、気になることもあったんだ。浮気のことだけじゃなく、その男にはなにかありそうなんだよ。俺はそれも知りたいんだ」
「ふうん。ま、あんたは優しいからね。でも、あの小娘は考えものだよ。だいいち
ニヤついた顔で蓮實淳はキティを見つめた。猫と人間とはいっても同性同士というのは、どうしてこうも
「なに笑ってるんだい。アタシはね、ほんとに腹を立ててるんだよ。この前は下らないネズミのオモチャなんか出してきたんだからね。馬鹿にしてんだよ、あの小娘は」
「でも、キティは若く見えるからさ」
「ふんっ!」
鼻を鳴らしたもののヒゲはぴんと張った。やはり、女性は女性なのだ。
彼にもこの猫がどれくらい生きてきたのかわからない。キティは自分のことを話したがらなかったし、他の猫たちはほぼすべて彼女より若かったからだ。どうも生まれてしばらくは
「ま、いずれにしたってそれを受けるのは考えもんだね。ちょっとばかり危ないかもしれないんだよ」
水を飲みながら、キティはそう言った。
「危ない? なにかあったのか?」
「まあね。――あんた、この近くの学校でウサギが殺されたの知ってるかい?」
「ウサギが? いや、知らないな」
「たまにゃ新聞でも読むんだね。けっこうな
彼は真顔になった。猫に新聞を読めと言われるとは思ってもなかったのだ。
「で、それがどうかしたのか?」
「アタシたちだって
「酷いな」
キティは
「ああ、人間ってのはほんと酷いもんさ。――ま、そんな顔するこたないけどね。別にあんたが悪いわけじゃないんだから」
「まあ、そうかもしれないけど」
腕組みしたまま蓮實淳はしばらく
しかし、いずれにしても実際的な
彼は弱く唸りつづけた。自分では気づいてないけど、こういうときの表情は女性に
そして、彼にはそういう間にぴったりと合わせられる
「でも、キティ、君の力が必要なんだ」
蓮實淳は瞳を輝かせ(すくなくともキティにはそう見えた)、
「みんなにはあの学校に近づくなって言っとく。だから、助けてくれよ。これからは新聞も読むようにするからさ」
「ふんっ!」
キティは鼻を鳴らした。それから、
「カンナにもきちっと言っとくよ。人間であれ猫であれ年長者には
立ちあがるとキティは
「しょうがないね。わかった、やってやるよ」
「ありがとう! キティ!」
彼は強く抱きしめた。身体を
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