第2章-4
「ね、あの人、いくら払ってったと思う?」
カーテンを開け放つと、カンナは顔を寄せてきた。『ツィゴイネルワイゼン』が流れはじめ、それはもの悲しさと、どういうわけか
「ねえ、気にならないの?」
「ん、いくらもらったんだ?」
「五万円よ。五万え~ん。すごくない? お一人様で通常の二倍から三倍払っていくなんて」
彼はこめかみを押さえてる。出来るかわからないことを引き受けたのも気にかかるけど、それだけではなかった。目の奥にはまだ映像が残っている。浮気を
「あなたがゴネたおかげで成功
「ゴネたんじゃないよ。本当に出来るかわからないんだ」
「だって、あの人も言ってたけど指輪を見つけたことだってあったし、迷い犬も、猫なんて何匹も見つけてるでしょ。――そうだ!」
手をパシンっと
「なんだよ」
「料金表を
ソファに座り、彼は首を後ろへ倒した。
「あのな、俺は占い師で、
「でも、お金にはなるわ。あなた、なによりお金が大好きでしょ」
カンナも向かいにかけ、両手を脚の下に
「金は好きだけど、出来そうにないことを引き受けるのは心が痛む」
「そんなの、ぱっぱって占っちゃえばいいでしょ。なんでもお見通しの蓮實先生なんだから」
「毎度のことだけど、ほんと簡単に言ってくれるよな」
雪は弱いながらも降りつづいてる。風に
「ま、その辺のことはこれが解決出来たら考えてみましょ。ゆっくり話し合って決めればいいことだわ。ところで、あの人の浮気夫がどこで働いてるとかは必要な情報なの? その、あなたが相手の女を知るのに」
「テリトリーがあるんだよ」
彼は
「テリトリー?」
そう言ったのと同時に「ナア!」という声が聞こえてきた。戸を開けると、茶トラの猫がいる。
「おお、キティ。ちょうどいいときに来てくれたな」
蓮實淳は立ちあがり、両手を大きく広げた。
「ちょうどいいとき?」
カンナは足許を見つめてる。初めて来たときにもあらわれた猫だ。まあ、どういうわけかここにはたくさんの猫がやって来るし、そのうちの何匹かは顔と名前が
しかし、彼にとっては特別な存在のようだった。なにがどうとは言えないけど、他とは
蓮實淳は小さな頭を
「ちょっと上へ行くわ。用があったら携帯鳴らしてくれ。――ああ、それに立ち聞きとかするなよ」
「立ち聞きって、誰と話すのよ」
そう訊いてる間にも彼は奥へ向かっていった。二階は住居兼倉庫のようになっていて、カンナも出入りすることがある。店を開けなきゃならないのに降りてこないときは起こしにいくことだってあった。
「ん? ああ、ちょっと相談しなきゃならないんだよ」
「相談? その猫と?」
「いや、なんだ。――うん、間違えた。考え事だよ。一人になってさっきのを考えたいんだ。ほれ、俺って独り言が多いだろ? それを聞かれたくないんだ。そういうわけだから、上には来ないでくれ」
なんだか歯切れが悪い。そう思いながら見ていると、猫が
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