第1章-7
カンナはふたたび時計を見た。三時二十九分。湯気で曇った向こうにはちらちらと白いものが
こういう
「ところで、曲変えないか? 客、いや、お客さんも来ないってのにずっとこんなのかけとくことないだろ?」
遊ぶのにも
「駄目よ。何回同じこと言わす気? あくまでもシックにいくの。これは決定事項よ」
「クラシックがシックかねぇ。――あ、いま言ったのギャグとかじゃないからな」
立ちあがると自然に
「ギャグだったとしたら、それ、面白くない方のだわ」
この二ヶ月、彼らの店はそこそこ混むようになった。二週間に一人しか来客のなかったのを考えると
自身でそうと信じていただけでなく、カンナには現実をしっかり見る目があったわけだ。現実をそのまま
また、SNSを活用し、
ただ、昨日と今日に限っては来るのは猫だけだった。カンナはこの子たちから五百円でもいいからもらえれば、どんなに売り上げが立つだろうと思うことがある。それくらい
しかし、現実をしっかり見る目を持つカンナはこうも思う。そんな馬鹿なことあるわけない。まあ、この男の〈能力〉は本物だし、その力がどこから来てるのかも
「ところで、なにか飲む? こう冷え切って、くさくさする日にはなにがいいかしら――」
カンナは奥へ向かった。細い通路には奥行きのない
「ええと、まずはジンジャーでしょ。あとはオレンジピール。それと、
ぶつぶつ
彼は素早く表情を調節し、
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