第1章-4
最悪の出会いから十日後にカンナは思い切って太い
「ん? 水虫女か」
そう声をかけられたときは走って逃げるか、
こんな馬鹿と
「こんにちは」
「あ? ああ、こんにちは」
そう言いはしたものの彼はずっと口を動かしてる。鯛焼きを食べながらこたえたわけだ。カンナは奥歯を
「っていうか、ずっと見てるけど、これはあげないぞ。食いたいならそこで売ってるから買ってこいよ。二百円くらいなら持ってるだろ?」
「ん? なんだ、ペロ吉、もう疲れちゃったのか?」
「ニャ」
カンナを見上げ、猫はまた短く鳴いた。ハチワレの
「悪いんだけど、コイツを連れてきてくれないか? 手がふさがってて俺にはできない」
彼はそう言った。ふざけてるのかと思ったけど、ごく普通の顔つきだ。カンナは猫を抱き寄せながら、「この子の言ってることがわかるの?」と訊いた。でも、こたえはない。――なんなの? あいつは。猫は
「ニャ、ニャ」
「わかったから」
そう言って、カンナもあとにつづいた。
その頃の店には『蓮實淳の占いの
時代物の
「ちょっとうるさ過ぎない? こんなんじゃ苦情がくるわよ」
「そうか? うん、まあ、そうかもな」
猫用のごはん皿を持ってくると、彼はボリュームを下げた。
「それに、なんなのよ、この古ぼけた曲は」
「ん? ああ、こりゃ、ジミー・スミスの『The Cat』だな」
彼は鼻歌まじりに缶詰の中身をあけている。猫は床へと降りた。
「ねえ、テーブルに置いてあげたら? ここの床、
カンナは
「ああ、そうか。そうだな」
「で、この子はあなたの猫なの?」
「いや」
「いや? じゃ、どこの子?」
「ん、この近くで
この前と同じように彼は脚を伸ばしてる。ただ、どこかしら違和感があった。態度が大きく、
「あなたはその家の人と知りあいなの?」
「いや、まったく。会ったこともないね」
「じゃあ、なんでそんなに知ってるの?」
蓮實淳は奥へ向かいながら、「占い師だからさ」とこたえた。
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