第16話


西島と会話をしたことで、僕は二つのことを思った。

一つは、やっぱり友情が一番いいということ。

そしてもう一つは、友情が一番でも、瀬戸のことを友達ではない、特別な存在だと感じ始めているということだ。

バカだと思う。それも、とてつもないレベルでバカだ。

友達、という言葉はとても扱いやすい。且つ、いつも一緒にいる人という体で一緒にいられる最高な関係だ。寂しい時は連絡し合えるし、一緒に出掛けたり授業に出たりしても楽しい。

そういう自分と友達を繋ぐ「友情」が一番だとは、高校の時から強く思っている。付き合う、という重い関係ではないラフなその関係性の方が、僕は上手く立ち回れるとも思う。確実に「友達」という関係を好む自分がいる。

それでも、瀬戸のことを考えると違った。瀬戸とは「友達」としてはいたくないのだ。「友達」という軽い関係性ではない。瀬戸が僕のことを知りたいと言うように、僕も瀬戸のことを知りたいと思ってしまった。

だが…と、僕は数年前自分が経験してしまった事柄を思い出した。その途端、「怖い」という感情が自分の思ってしまったことを踏みつけた。―――もう一度デジャヴを繰り返すのか。男女間の関係は大学でも面倒に違いない。第一、そういうことはしないと誓って大学に来たんだろ?―――僕自身が未だ否定しきれないその感情が、僕の思考を揺さぶる。


「やっぱり、これ以上は行かない方がいいんだろうな。」


深夜一人で窓を眺めながらそう思った時、僕の周りは悲しさに包まれた。

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