第12話


対面授業が始まって数週間が経った。

対面になったからといって、生活はそんなに変わらなかった。時間通りに起床して大学へ行き、授業を受け、帰宅し、家事を済ませ、寝る。そのループを一週間単位で行っている感覚だった。友達の中では「対面が面倒くさい」と言う人もいたが、僕は苦に感じることは少なかった。全く同じ曜日でも、全く同じことをするわけではない。授業内容や西島と食べる昼食など、違うことは意外と沢山あった。大学では多少なりとも人と関わる機会があったし、西島とは昼食を一緒に取ることで親睦が深まった。土日も一人で行動せず二人で出掛けたりすることが増え、アパートの一室で「寂しい」という感情を抱くことは少なくなった。オンライン授業とは違い「他人」を感じる生活は、面倒だと思う以上に楽しかった。学校、という環境を楽しいと感じるのは、とても久しぶりのことだった。もしかしたら、大学に通い始め、自分自身の心境に変化があったのかもしれない。いや、そう思うのはさすがに早いか?

「…やめた。」

僕は右手で、その混沌とする頭を小突いた。こんなことを自分で淡々と思っても答えは出るわけじゃない。別に僕自身が変わっても変わっていなくても、周りには何も関係ないのだから。


ここ最近、僕は大学生活を過ごす中で一つだけ気になり始めたことがある。それは、西島と話す頻度が高くなるのに反比例するように、瀬戸と話すことは少なくなっていることだった。元々クラスが違うので、当然話さない期間もあった。が、授業でもカフェでも機会がなく、二週間程度話さないことは久しぶりだった。

僕はふと、最近カフェで会うことがなかったことに気づいた。この前会ってから、僕は何度かカフェに足を運んでいたのだが、彼女とは会わなかった。もしかしたら、それが話す頻度が減ったことの理由かもしれない。


まぁ、またカフェで会うことがあるだろう。僕はそれ以上考えるのをやめ、次の授業の準備を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る