第6話
そんな訳で僕は、授業が終わって数日後のとある昼間に、電車と高速バスを使って帰省した。
「この時期に帰ってきていいのかしら…?」
親に帰省することを伝えると、親は不安そうにそう言った。ただ、僕が日々の外出を最低限にしていることや、大学の授業がひと段落したことを言うと、「分かった。」と言ってくれた。
実家は、アパートから3時間程掛かる場所にある。実家から大学までは、ギリギリ通えない訳ではないのだが、今後対面になる可能性があることを踏まえ、思い切ってアパートを借りた。普段も帰ろうと思えばできるのだが、片道三千円程掛かる交通費は、大学生にとって痛手だった。
つまり、僕は約四カ月ぶりに地元に帰ることになる。
電車を1時間程乗り、そこから地元の駅までは高速バスで移動する。東京湾アクアラインを通り、ぐんぐん南下していく。僕はしばらくの間寝ていて、起きた時には高速道路の終点まで来ていた。窓の外には地元の道の駅やコンビニがあり、周りは木々で囲まれていた。
あ、地元だ。
僕は数カ月ぶりに見たその景色に、どこか安心感を覚えた。慣れ親しみ、長い時間を過ごした場所は、やはり他の場所とは違う特別なものだった。
「ただいま。」
「おかえり。」
高速バスの終点で降りた僕は、迎えに来てくれていた母親と合流した。
車に乗るか否や、まるで毎日帰ってきているかのようにあいさつしたが、特に違和感はなかった。僕らは、そのままお互いの近況報告をしながら家まで帰った。
「大学はいつから開始するの?」
「あー、9月下旬だったかな。」
「それまではこっちにいるの?」
「そうかな。一度、東京に行きたい気持ちもあるんだけどね。社会状況によるよ。」
車から見える田舎道を見ながら、僕は言った。「バイトもしていないから、とりあえずニートです。」
「まだ大学生ってことになってるから、ニートじゃないでしょ。」
少しボケたつもりだったが、そのボケは冷静なツッコミによりすぐに消えた。
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