オトメイト

悪意を超えて未来へと『Collar×Malice -Unlimited-』

 連続凶悪殺人事件「X-Day事件」が発生していた新宿。

 そして、事件を首謀するテロ組織「アドニス」に命を握られた新人警察官「星野市香」は、その核心に手を伸ばした。


 事件を捜査する過程において、築かれた絆。生まれた情。育まれた恋慕。



 この世に悪意がある限り、これからも安心はできない。慢心してはならない。



 それでも、彼らは歩み出す。



 悪意の先にある、未来へ。



『Collar×Malice -Unlimited-』



 ということで、今回はラブサスペンス作品『Collar×Malice』のFDをご紹介しようと思います。



 まずは、作品の内容について。

 この作品は大まかに、4つのパートで構成されています。


 各攻略対象との後日談を描く「After Story」


 本編で語られなかった幕間「Interlude」


 サブキャラクターの物語「Side Story」


 アドニスに関するifストーリー「ADONIS」



 それでは、各パートをピックアップしながら、作品の魅力を語っていくとしましょう。



「After Story」については、シンプルに後日談です。

 攻略対象である柳愛時、岡崎契、榎本峰雄、笹塚尊、白石景之、それぞれのルートの本編ハッピーエンド後を描きます。

 本編の結末に触れることから、あまり詳細な内容をこの場で語ることはできませんが、ネタバレにならないように言うと、どのルートも攻略対象の特徴を活かしたシナリオでした。市香と攻略対象の関係性と言いますか、2人だからこそ成り立つ物語ですね。

 後日談であっても、ただただ甘いだけの物語ではなく、どこか考えさせられるというか、プレイヤーへのメッセージが込められているように感じられました。

 個人的には、柳さんと白石さんのルートが特に気に入っています。



「Interlude」は、本編の時間軸で起こった事案についての物語。

 市香が探偵事務所に通い、事件の捜査に奔走している中、事務所に依頼人がやって来ます。探偵事務所といっても実際に探偵業を営んでいる訳ではないと、依頼を断ろうとする柳を筆頭とした一同ですが、依頼人の話を聞くとアドニスの関与が疑われる案件であることに気付くのでした。

 本筋とは少し逸れながらも、市香と攻略対象の関係性がまた一歩深まる側面を持つ幕間です。

 そういえば、カラマリはFDであってもサスペンス要素は全く損なわれていません。本編では事件の推理パートが選択肢として実装されていましたが、FDでは謎解きが組み込まれています。しかも、そこそこ頭を使う必要があるタイプです。謎解きができないとクリア不可能ですので、苦手な方は注意です。私も初見で唸りました。そして、結局埒が明かなくて、先人の知恵に縋りました。



「Side Story」はサブキャラクターに焦点を当てていまして、3つの短編が収録されています。

 市香の弟である「星野香月」と周囲の人物の物語「ONWARD」、警視庁捜査一課の管理官「峰岸誠司」と星野市香の物語「Pride」、警視庁のSP「吉成秀明」と星野市香の物語「Crossroad」の3篇です。

 香月の物語は、本編の時間軸を中心に展開されていきます。香月がクラスメイトの「瀬良あきと」と出会い、意気投合して、その後どうなっていくのか。アドニスに命を握られた市香が奔走する中で、香月もまた悩み、藻掻き、足掻いていました。彼らの青春が詰まった短編です。

 峰岸さんや吉成君の物語は、サブキャラエンドに近い性質を持っています。攻略対象の誰とも結ばれていない市香が、2人と距離を縮める短編です。峰岸さんは本編終了後、吉成君は本編の時間軸で物語が展開されていきます。

 正規ルートとして、がっつり描いて欲しかったと思いながらも、この距離感は結構好きなので気に入っています。峰岸さん好みです。腹黒い大人はずるくて良いですよ。



「ADONIS」は特殊なシナリオでして、このFDの肝といっても問題ないくらい注目のパートです。

 X-Day事件の捜査をしていた星野市香は惨劇に見舞われます。惨劇を経て、星野市香は変貌しました。彼女に残る希望は、1つだけ。そのために、市香はアドニスの構成員となり、暗躍するようになります。そして、惨劇から2年。アドニスのトップに呼び出された市香は、とある仕事を命じられます。これは、己が目的のために全てを捨てた市香の、アドニスでの日々を描く物語。

 端的に言えば、星野市香が闇堕ちするifストーリーです。こちらについても、本編の重要なネタバレを多く含むシナリオであるため、詳細な言及は避けますが、かなりシリアスです。言うまでもない気はしますが。ただ、逆に意外とほっこりするというか、ギャグっぽい展開も含まれています。重いだけのシナリオではありません。メリハリが効いていると思います。本編では語られなかったアドニスの内情と、市香の壮絶な人生を同時に描いていきます。




 以上のように、1つの作品に様々な物語が詰め込まれた、ボリュームのあるFDです。



 未来に向けて進む彼らと、たった1つの希望に賭ける彼女。


 対照的でありながら、それはもしかしたら表裏一体なのかもしれません。


 彼らの未来と未知の可能性を見届けてみてはいかがでしょうか。


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