2人のアリスは鏡を超えて『白と黒のアリス』

 不思議の国のアリスは、モチーフとして色んなジャンルで取り入れられている童話ですよね。ろろアリも、不思議の国のアリスをモチーフとしたファンタジー作品です。

 ただし、ふんわり、ほわほわした可愛らしいだけのシナリオではありません。本質は、かなりダークです。狂気と陰謀がちらついています。



『白と黒のアリス for Nintendo Switch』



 私がプレイしたのはいつもの如く、本編とFDが同時収録された移植版。とりあえず通常版で購入したのですが、限定版を予約すべきだったかと少し後悔しています。限定版には、フルバージョンの主題歌を収録した円盤が付いていたんですよね。主題歌が素敵なので欲しかった。



 この作品には、普通の人間界である「白の世界」と、不思議の国のアリスをモチーフとした異世界「黒の世界」が存在します。2つの世界は通常決して交わらないのですが、唯一、とある不思議な鏡を通して繋がっています。この鏡を用いれば、2つの世界を行き来することが出来るのです。


 そして、この作品は、それぞれの世界で生きる2人の女の子が主人公となっています。「愛日梨あいり」と「ルナ」です。


 愛日梨は白の世界で生きる少し控えめで、心優しい、ごく普通の女子高生です。彼女は突如、黒の世界に連れ去られ、黒の世界の女王になるよう強要されてしまいます。


 一方、ルナは黒の世界を統治する若き女王。少し高飛車なところはありますが、女王としての誇りと責任感を強く持っています。ある日、黒の世界でクーデターが発生し、ルナの身の安全を確保するために、白の世界へ渡ることとなります。

 これにより、黒の世界の女王が不在となってしまうため、新女王候補として愛日梨が白の世界から連れて来られることになります。



 白の世界と黒の世界。2つの世界でそれぞれ生きる少女は、入れ替わる形で見知らぬ世界に足を踏み入れることになります。

 愛日梨は白の世界から、黒の世界へ。女王となるために。

 ルナは黒の世界から、白の世界へ。身の危険から逃れるために。

 2人の少女は、鏡を通って未知の異世界へと赴き、慣れない生活に困惑、苦悩しながら生きていくこととなるのです。



 それでは攻略対象を紹介していきましょう。


 まずは、愛日梨の攻略対象から。



 レイン(CV梅原裕一郎さん)


 女王の側近である黒兎。後述する白兎のスノウとは双子です。

 常に冷静で口数は少なく、次期女王候補である愛日梨に対しても、余計な感情は向けず、冷たい態度で接します。とても職務に忠実で、その為ならば手段を選ばないところがあります。



 ミネット(CV木村良平さん)


 魔法使いのチェシャ猫。城の敷地内に平気で侵入し、ふらふらとしていることが多いです。飄々とした言動で真意を見せません。後述する親衛隊隊長のジャックとは幼馴染です。



 ネロ(CV下野紘さん)


 城に出入りする商人で三月兎。楽しい事が好きな明るい性格。黒の世界に無理矢理連れ去られて気落ちする愛日梨を笑顔にしようと手を尽くします。頭を使うのは苦手。

 後述する帽子屋のカノンとは、よく一緒にお茶会をする仲です。



 そして、ルナの攻略対象。



 スノウ(CV増田俊樹さん)


 女王の側近で白兎。レインの双子の兄です。

 物腰柔らかな好青年で、穏やかな雰囲気を纏っています。しかし、女王の為ならば手段を選ばない点は、レインとよく似ていると言えるでしょう。



 ジャック(CV興津和幸さん)


 女王の身辺警護を担う親衛隊隊長であるハートの騎士。真面目な性格な上に剣の腕も優れていて、とても優秀な兵ですが、ルナの前では緊張して挙動不審になってしまいます。

 ミネットと幼馴染です。



 カノン(CV花江夏樹さん)


 城下町で帽子屋を営む青年。時折、城に出入りすることがあります。性格は捻くれていますが、裁縫の腕がとても優れています。

 基本的に他人に興味がないものの、ネロとは気が合うのか、よく会っているようです。



 不思議の国のアリスがモチーフとなっているだけあって、全体的に可愛らしいイラストが多いです。ただ、シナリオは不穏と言いますか、暗めな方だと感じました。日常パートでは、遊んだり、お茶会をしたりと、アリスらしいファンシーなシーンが散りばめられていますが、本質はかなりダークです。

 確かに、私がこれまでプレイしてきた物騒なシナリオの作品と比較すれば、まだ明るい雰囲気だとは思います。が、この作品はシリアスシーンとバッドエンドに強い狂気を感じました。ヤンデレと言いますか、ちょっと闇や病みっぽい要素が好きな方は楽しめるのではないかと。この独特な雰囲気は、アリスの世界観だからこそなのかもしれません。


 また、この作品はダブル主人公となっています。そのため、最初の段階で主人公と、プレイしたい攻略対象のルートを自由に選択できます。初心者の方でも楽しみやすいと思います。主人公が複数存在する作品には、任意で攻略対象を選択できるシステムが搭載されやすいですね。



 それでは攻略順と推しについて。

 私は、ミネット→ジャック→ネロ→カノン→レイン→スノウの順で攻略しました。

 双子の兎は真相のような意味合いを持つルートとなっていますので、ラストに回した方が良いと感じました。その他の攻略対象は好きな順でプレイしてしまって問題ないです。

 ただ個人的には、ずっと同じ主人公を選択していくよりも、交互に主人公を変えてプレイした方が、物語の全体像が掴みやすいと思います。愛日梨あるいはルナの攻略対象を纏めてプレイしてしまうより、愛日梨の攻略対象をクリアしたら、次はルナの攻略対象を……といった具合にチェンジしていくと、主人公や攻略対象達の心中や立場といったものが捉えやすいかと。


 推しはミネットです。なんですかね、木村良平さんが演じているキャラに惹かれやすいです。乙女ゲームでは。

 ミネットの飄々とした言動からして、この男は裏がヤバいだろうと初見から思っていましたが、案の定という感じです。この作品の狂気的なシーンは多々あれど、私はミネットルートの展開が結構好きでしたね。FDにおいては、愛日梨のことをとても溺愛していて最高でした。大人げないミネットが良い。



 ファンタジーとヤンデレ要素が好きな方は、きっと楽しめる作品だと思います。


 個人的には、本編よりもFDの方がシナリオが濃密になっていて好みです。狂気も割増になっていますし、FDのシナリオは全体的にかなり感動出来ました。本編で世界観とキャラクターを知って、FDがメインと言っても過言ではないかと。



 2人のアリスと2つの世界に隠された秘密とは。


 ファンタジックな世界観とダークなシナリオの組み合わせは、癖になるものがありました。

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