運命に導かれた若者達の旅路『NORN9 ノルン+ノネット』

 主人公が3人いる作品です。主人公によって、攻略できるキャラクターが決まっています。さらに、主人公全員にCVが付いていて、乙女ゲームでは珍しく主人公達の演技も楽しめます。主人公達が和やかに、時にコミカルに会話をしているシーンには癒されます。

 特殊能力を持った男女が「ノルン」という球体の飛行船に乗せられて、遥か彼方の目的地を目指し、大空を旅していく。時空を超える壮大なファンタジー作品です。



『NORN9 LOFN for Nintendo Switch』



 私がプレイしたのは本編とFD1作目が同時収録された移植版です。FD2作目もいつかプレイしたいと思っているのですが、まだVitaからの移植の目途が立っていないので、今のところプレイ出来そうもありません。


 ノルンは以前アニメ化されていまして、単独イベントを開催した経験もあります。少し昔の作品にはなりますが、今でも一定のファンが付いている、オトメイトの人気作に当たると思います。

 私も原作をプレイする前に、アニメでノルンの物語を楽しみました。原作の世界観を忠実に表現し、主人公が3人存在するという特殊性も崩すことなく、上手く纏められたアニメ版だと思います。



 それでは、個性的な主人公三人娘を紹介していきましょう。


 主人公は、「こはる(CV藤村歩さん)」、「久我深琴(CV高垣彩陽さん)」、「不知火七海(CV瀬戸麻沙美さん)」の3人。


 こはるは、ボブカットにした薄桃色の髪が特徴的な心優しい女の子です。ノルンに乗船するまでは、ずっと独りで暮らしてきたため、世間知らずなところがあります。しかし、マナー本を読んで人との関わり方を学んでいたため、とても律儀で丁寧な言動をしています。こはるは明るくて、何事にも一生懸命。周りのことまで明るく出来る、とても愛らしい主人公ですね。能力は、炎を操る力です。


 深琴は大和撫子という表現がしっくりくる、長い黒髪が特徴的な美少女。公家の出身で、いわゆるお嬢様です。蝶よ花よと大切に育てられたため、少々高飛車な面があります。自分にも他人にも厳しいしっかり者で、公家の人間として民を守るのは自分の役目であるという強い責任感を持っています。能力は、結界を築く力。ノルン乗船前は、この能力を使って、要所の防衛に当たっていました。


 七海は、色素の薄い、ふんわりとした柔らかな髪を持つ寡黙な女の子。実家は忍びの家系で、七海も幼少期から修行を積んできました。いつ戦闘状態に入っても良いように、常に苦無を身に付けています。口数が少なく、とても冷静。酷く無感情に見えますが、他人の感情の機微に鋭い一面を持ちます。能力は、対象の記憶を消す力。他人の大切なものを奪ってしまう自身の能力を毛嫌いしています。



 この作品は珍しいことに、サブキャラクターの視点から物語が始まります。


 小学6年生の男の子「鈴原空汰」は、社会科見学で国会議事堂を訪れていました。すると、空汰の耳に綺麗な歌声が聞こえ始めたのです。そして、次の瞬間、空汰は見知らぬ街にいました。そこには、歴史の教科書に載っていた大正時代のような街並みが広がっています。なんと、空汰は謎の歌声に導かれ、大正時代にタイムスリップしてしまったのでした。

 空汰はそこで、こはると出会い、彼女に連れて行かれる形で、球体の巨大飛行船「ノルン」に乗船することになります。本来の大正時代ならば、決して有り得ない高度な技術を前にし、空汰は酷く驚きます。時空を超えた迷子の空汰は保護され、ノルンの目的地「世界」に到着するまで、特殊能力を持つ若者達と共同生活を送ることになるのでした。



 それでは、攻略対象の紹介をしましょう。

 まずは、こはるの攻略対象から。



 結賀駆ゆいがかける(CV梶裕貴さん)


 ノルンに乗っている能力者達を纏めるリーダー的存在。明るく、優しい好青年ですが、腹黒い一面もあります。自分の性格をよく理解していて、頭の回転も速く、曲者揃いのメンバーを笑顔で上手に束ねています。

 能力は、緑を操る力。植物の成長を促したり、蔓を使って対象を拘束したりと、使い方は様々です。



 市ノ瀬千里(CV下野紘さん)


 とても綺麗な顔立ちをしていますが、子供の頃の経験が原因で人と関わることが極端に苦手。ネガティブで、何でも悪い方に考えてしまう傾向があります。いつも自室に籠っていて、ノルンのメンバーとも最低限の関わりしか持とうとしません。



 遠矢正宗(CV佐藤拓也さん)


 ノルンのメンバーの中では年長者に当たり、皆のお兄さんのような存在です。手先が不器用で、細かい作業が苦手。年長者故に、メンバー間の喧嘩や揉め事の仲裁に入るものの、いつもを食らい、不憫な目に遭うことが多々。

 常に手袋をしていて、これは能力の制御に必要なものだそうです。



 続いて、深琴の攻略対象を紹介します。



 吾妻夏彦(CV小野大輔さん)


 攻略対象の中では珍しく、ノルンのメンバーではありません。とある理由から、ノルンとノルンに乗船している能力者達の命を狙っています。

 思考は冷めていて、合理主義。淡々とした口調で話します。機械にとても強く、エンジニアとしての一面を持ち、飛行船の操縦までこなすことができます。武器は、不思議な形をした拳銃です。



 二条朔也(CV斎賀みつきさん)


 深琴の幼馴染。深琴と同じく公家の出身。とても美しい容姿の青年で、物腰は柔らか。特に、女性に対して紳士的です。

 深琴のことをとても大切にしていて、深琴にちょっかいを出す男には容赦しません。



 加賀見一月(CV遊佐浩二さん)


 メンバーの中では年長者な方ですが、軽薄な遊び人です。揶揄いがいのある深琴によくちょっかいを出しては、朔也に鉄槌を下されています。嘘と冗談ばかりを口にし、決して本心を見せません。

 七海、平士と仲が良く、3人でつるんでいることが多いです。



 最後は七海の攻略対象です。



 宿吏暁人しゅくりあきと(CV杉山紀彰さん)


 いつも不機嫌な気難しい青年。怒りっぽく、ほんの些細なことでも声を荒げることが多いです。他人から揶揄われたり、馬鹿にされたりすることをとても嫌がります。

 意外にも料理が得意で、「暁人の料理は、お袋の味がする」とメンバーの中で評判の腕前です。

 七海と何らかの因縁があるのか、きつく当たることが多いです。



 室星ロン(CV杉田智和さん)


 いつもサングラスを掛けていて、いかにも怪しげな容貌をしていますが、意外に気さくで、話しやすい青年です。ただ、人の名前を覚えようとしないため、相手を苛立たせることが多々。

 のんびりと寝ていることが多く、船内の色んな所で昼寝をしています。自分のことを明かそうとせず、メンバーの誰もロンの経歴を知りません。



 乙丸平士おとまるへいし(CV吉野裕行さん)


 元気で活発な、メンバーのムードメーカー。陽気で裏表のない性格です。しかし、そのせいで隠し事がとても下手。言わない方がいい本音を口にしてしまうことも多く、女性陣の不評を買うことがあります。

 能力はテレパシー。感情が高ぶると心の声が周囲に漏れてしまうことがあります。この力は、メンバーの招集といった様々な用途で役立てられています。



 本題の感想ですが、この作品はイラストと音楽がとても好みです。特に音楽が素敵です。ピアノや弦楽器を中心とした透明感のあるBGMと、同じく繊細なタッチのイラストが合わさって、幻想的な世界観を表現しています。また、本作の主題歌を担当されているのは、やなぎなぎさん。彼女は、作中で「アイオン」という少女も演じていまして、アイオンは作品の鍵を握る重要人物です。

 大正時代という古めかしい時代設定、しかし、その設定にそぐわないハイテクノロジーが存在し、さらには特殊能力というファンタジーまで詰め込まれている。これらを上手く纏め、一つの世界観として成立させている要素として、音楽は大きな役割を果たしていると個人的に思っています。


 また、この作品は主人公や攻略するキャラクターを任意で選択できる仕様になっています。そのため、共通ルートで好感度を上手く調整して、気になるキャラクターの個別ルートに向かうという手間が要りません。初心者の方でもプレイしやすいのではないでしょうか。

 ファンタジーやタイムスリップといった要素、綺麗な音楽が好きな方はきっと気に入るのではないかと思います。


 シナリオは冒頭で表現した通り、壮大な物語です。全てのルートをクリアした先にある真相には、涙が止まらないはず。主人公と攻略対象が紡ぐ物語にも、もちろん感動しますが、その先にある世界の真相が最も感動出来ると言っても過言ではありません。ノルンは、全てのルートをクリアした後のシナリオがとても重要です。



 それでは攻略順と推しについて。

 先に言っておきますと、攻略制限はあります。

 主人公3人に合わせて、攻略対象は3つのグループに分けられます。こはるの攻略対象、深琴の攻略対象、七海の攻略対象の3つですね。どのグループも、攻略対象は3人ずつ。先の攻略対象紹介は、このグループに基づいて紹介させて頂きました。

 各グループにおける攻略対象3人のうち、どのグループにおいても1人に攻略制限が掛かっています。つまり、最初は攻略無制限キャラの2人から、どちらかを選んで頂くことになります。攻略制限の解除方法は簡単ですし、何より攻略対象の選択画面で、きちんと説明がありますので、何の心配もしなくて大丈夫です。


 こんな感じで、私の攻略順は

 千里→平士→朔也→正宗→ロン→夏彦→駆→暁人→一月

 でした。気になるキャラを最後に回しました。

 おすすめの攻略順ですが、正直そこまで順番を気にしなくてもいいのかなと思います。気になるキャラから攻略してしまって大丈夫です。攻略制限キャラは他のルートよりも少し真相に迫るため、後半に回した方がいいかもしれませんが、私は中盤で攻略して、何の問題もありませんでした。


 そして、推しについて。最推しは一月です。あと、朔也、暁人、夏彦も気に入っています。

 私は一月役である遊佐浩二さんが、声優さんの中でもかなりお気に入りでして、その影響がとても大きかったですね。また、深琴と一月の関係性がすごく良い。この2人の距離の縮まり方は、とても好みでした。



 主人公が3人という特殊な仕様の作品ですが、とても作り込まれた世界観で最後まで楽しめると思います。

 異なる主人公が紡ぐ恋の物語と、世界に隠された真実の物語。2つの物語は、どちらも同じくらい感動できる内容となっています。


 ノルンに乗って、大空の旅に出てみてはいかがでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る