白の少女は己の半身を求める『オランピアソワレ』

 海の果てに存在する神聖な島々。

 二つの島には、とある神話が言い伝えられていました。



『オランピアソワレ』



 この作品はとても糖度が高い作品となっていますので、色気が苦手な方は注意して下さい。



 運命の人。そんな存在が実在するとは信じ難い現代ですが、この作品では違います。

 自身の魂の片割れ。運命の相手。「魂の半身」を本気で探す物語です。



 物語の舞台は海に囲まれた二つの島々。「天供島てんぐうとう」と「天女島てんにょとう」です。この島々では、とある神話が言い伝えられていて、島民達はその神話を信じて暮らしています。

 この作品の世界観はかなり独特なので、ネタバレにならない程度に神話の概要を綴っておきます。


 葦の舟に乗った者が、とある島に流れ着いた。

 その者は、自らが漂着した島を天供島と名付けた。

 そして、次にその者は赤、青、黄の三つの色を生み出した。更に、その色を二つに分けて、男と女を創ったという。

 その者の名は、「卑流呼ひるこ」。これが、人の誕生の物語である。


 卑流呼によって色と人が生み出された天供島では、色を第一に考える文化が根付き、徹底的な階級社会が構築されました。島民はそれぞれ自分の色を有し、その色によって身分の優劣が決められているのです。卑流呼が最初に生み出した原始の三色、これらの色に近ければ近いほど高い身分とされていました。

 そして、美しい色を維持するために最も適切な相手と交配することが島民の義務とされていました。つまり、自分の想いや意思に関係なく、色によって結婚相手が決められてしまうのでした。


 そんな天供島の近くに、天女島があります。天女島の周囲には、常に大きな渦潮がいくつも出来ているため、天供島の民は船を使っても近付くことが出来ません。

 そして、天女島には、天供島には存在しない色、白の人々が暮らしていました。



 この作品の主人公は「オランピア」。天供島で暮らす白の少女です。

 十数年前、とある事件によって白の人々が命を落としました。災禍を唯一生き残ったオランピアは、たった一人の白となってしまったのです。

 そして、白には重要な役目が課されています。それは、太陽を輝かせること。

 白の者が天に祈りを捧げなければ、地上から太陽が失われてしまうのです。

 オランピアは生き残った白として、定期的に太陽へ舞を奉納しています。


 そんなオランピアは18歳の結婚適齢期を迎えました。

 天供島では、男性は20歳、女性は18歳で結婚が出来るようになります。


 オランピアは生き延びた唯一の白。必ずその色を次代へと繋げなければなりません。

 白が消えれば、太陽も消える。オランピアに迷っている時間はありません。

 オランピア自身に何かが起こる前に、白を受け継ぐ子を産まねばならないのです。


 オランピアは亡き母の言葉を胸に、夫となる者――自身の魂の半身を探し始めるのでした。



 それでは攻略対象を紹介していきましょう。



 朱砂アカザ(CV松岡禎丞さん)


 天供島における中立組織「コトワリ」の所長を務める青年。

 結婚適齢期を迎えたオランピアを保護するための政令を打ち出し、貴重な白を後世へ残すために夫となる相手を探すようオランピアに促します。

 冷静沈着で淡々と職務をこなす印象が強いですが、意外と面倒見は良く、夫探しを始めたオランピアを支えます。



 玄葉クロバ(CV杉田智和さん)


 コトワリの副所長であり、医学博士。

 天供島に蔓延している死病を克服するため、免疫に関する研究をしています。オランピアの行動を興味深く感じていて、オランピアに積極的に関わろうとします。

 明るい雰囲気の兄貴肌で、子供からも好かれやすい性格。

 天供島を支配する色の階級制度に対して、強い嫌悪感を抱いています。



 璃空リクウ(CV島崎信長さん)


 天供島の警察組織の中でも、黄泉を担当する部隊「黄泉警邏隊」に所属する軍人。

 生真面目な性格で頑固ですが、根は良い青年。決まりや規律を守ることを重んじています。

 島民の魂を「しょう」に変える「ばつ」という能力が使える上に、璃空の拔は特に強い力を持ちます。青の次期長になることが決まっているため、長となる日に向けて精進に励んでいます。



 天草四郎時貞アマクサシロウトキサダ(CV上村祐翔さん)


 外界から天供島に流れ着いた人間「マレビト」たる少年。

 天供島で生きていくために緑の色が与えられ、現在は緑の長の元に身を寄せています。明るく人懐っこい性格をしていますが、天供島に来る前の記憶については、あまり口にしたがりません。

 オランピアが飼っている白鼠「だいふく」の弟、「パリス」を飼っています。

 黄泉の湯屋を頻繁に利用していて、そこで売られている薄荷ショコラが大好物。



 ヨスガ(CV内田雄馬さん)


 黄泉で繁盛している湯屋「死菫城しきんじょう」の主人。

「地獄太夫」という通り名を名乗っていて、黄泉の権力者でもあります。

 普段は接客上手で穏やかな青年ですが、黄泉の権力者として容赦ない一面も持ちます。夫探しに奔走するオランピアを優しく見守っています。

 死菫城では、縁による花占いと薬湯が人気です。



 ヒムカ(CV堀江瞬さん)


 死者を見送る「弔い屋」を務める少年。

 璃空よりも強い拔の能力を持ち、依頼に応じて日々黄泉の人間を晶に変えています。

 口数が少なく、自分のことは特に語らないため、ヒムカの経歴を知る者はいません。



 日本神話がモチーフとなっていることから、シナリオだけでなく、音楽といった要素も含めて全体的に神聖な雰囲気が漂っています。色がメインテーマということもあり、メニュー画面やオープニング映像には、ステンドグラスのような美しいデザインや演出が散りばめられています。


 シナリオについては、本当に糖度が高いですね。攻略対象のオランピアに対する好感度が最初から高いように感じられました。それぞれオランピアへの感情は様々ありましたが、オランピアに惹かれる理由がきちんと存在していて腑に落ちます。

 とても恋愛過程が丁寧に描かれるため、違和感なく読み進められると思います。お色気な展開については、全ルートに存在します。年下の攻略対象でもありますね。ただ、先に言った通り、恋愛過程が丁寧なので、そういった展開に唐突な印象はなく、自然と受け入れられる流れが出来ています。

 また、シナリオの注意点としては、結構バッドがきついです。スチル付きで各ルート2種類ずつあるため、バッドも全て回収しなければフルコンは不可能となっています。糖度が高い分、バッドの展開がえげつなく感じられました。それでも、気に入っているバッドもありますので、相性次第なところもあると思います。また、不穏なシーンや展開では、オランピアが貞操の危機に晒されやすいので、そういった展開を不快に感じられる方は注意です。


 そして、個人的にはオランピアが飼っている白鼠「だいふく」とその弟妹達が気に入っています。だいふくは三兄弟の長男に当たります。弟は時貞が飼っている「パリス」、妹は死菫城のメイド「カメリア」が飼っている「ジュリエット」です。

 この白鼠三兄弟は、ただの鼠ではありません。人の言葉を理解していて、オランピアの夫探しを応援しています。カメリアは三兄弟の言葉を理解しているようです。

 鳴き声が可愛らしいのと、何気ない彼らの言動に癒されるんですよね。だいふくは、とても食いしん坊なので、つい食べ物で釣られてしまうことも多く、お茶目で愛らしいです。



 次に攻略順について。

 この作品には攻略制限が存在しています。しかし、共通から個別に入る際に、任意のルートを選択できますので、攻略制限以外の気になるキャラから好きに攻略することが可能です。

 私は縁→時貞→璃空→玄葉→ヒムカ→朱砂の順で攻略しました。

 攻略制限のないキャラについては、他のルートのネタバレは特にありませんでしたので、好きなキャラから始めて問題ないかと。

 個人的に、璃空のシナリオは全体的に世界観の説明がしっかりされているように感じましたので、作品の世界観を最初に把握したい方は璃空から始めることをおすすめします。もちろん、私のように璃空から始めなくても十分楽しめます。


 推しは縁ですね。璃空と朱砂のシナリオも良かったと思います。

 縁の第一印象は色気のあるお兄さんといった感じだったので、すごく色っぽいルートでオランピアが滅茶苦茶口説かれるのだろうかと思ったのですが、良い意味で裏切られましたね。縁というキャラの在り方、生い立ち、経歴、背負っているものがしんどくて、これは好みだと。オランピアの前では優しいお兄さんですが、通り名が「地獄太夫」ですからね。容赦ないところもあって、優しいけど綺麗ではないと言いますか。清濁併せ吞むキャラに弱いです。



 魂の半身。自身と結ばれる運命にある相手。


 生き延びた少女は、幸せを手にすることが出来るのか。


 そして、島々に言い伝えられる神話の真相とは。



 美しい恋物語と神話が織りなす、少女の軌跡を追ってみてはいかがでしょう。

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