Rejet
己が為、君が為に剣を執る『剣が君』
私にとって初めてのRejet作品です。
オトメイトとのシステムの違いに少々戸惑いましたが、すぐ慣れました。
生い立ち、信念、因縁。様々な因果によって剣を執る男達の生き様を描くこの作品。
私がプレイしたのは本編とFDが同時収録された移植版です。
『剣が君 for S』
こちらには追加要素として、Switch移植版オリジナルのオープニングが収録されていました。もちろん、本編とFDのオープニングも、それぞれきちんと楽しめます。
まずは主人公の紹介を。
主人公は「香夜」。料理茶屋の看板娘です。
亡き母が武家出身であったことから、料理茶屋を営む商人の父を持ちながらも、道場で薙刀を習っています。
ある日、彼女は幕府に勤める侍から、容貌が家光将軍の妹姫である久姫に瓜二つだと告げられ、病弱な久姫に代わり花嫁行列に参加し、駿府まで向かって欲しいと頼まれます。
実家の料理茶屋の経営難や、幕府のお達しを拒んだ結果どのような事態になるかを憂慮した香夜は、花嫁行列の案件を引き受けることにします。
そして、香夜は花嫁行列にて用心棒を務める6人の侍と出会うことになるのです。
この作品は共通シナリオ「東海道偽花嫁行列編」と個別シナリオ「江戸城剣取り御前試合編」の2章に大別されます。
剣取り御前試合とは、日の本各地でしばしば開催される真剣勝負の御前試合です。この試合で優勝した侍は一番刀と呼ばれ、天下五剣の一振りが授けられることがありました。武士を志す者はこの試合で優勝し、天下五剣を手にすることを目指しています。天下五剣を手にすることは侍の栄誉と言われているのです。
攻略対象の中にも、この御前試合に出場する者がいます。
それでは、攻略対象の紹介と行きましょう。
陸奥国出身の浪人。田宮流居合の使い手。
純朴な青年で、心優しい性格。侍としての実力を試すため、剣取り御前試合に出場することを目指しています。
食べることが好きで、体格に見合わない量の食事を余裕で摂取します。あまりにも食べる量が多いため、よく金子を切らして困っています。
成人しているのですが、年齢の割に体格が小柄であるため、よく子供と間違えられてしまいます。
吉備国出身で、普段は江戸で御用聞きの仕事をしています。剣術は二刀流です。愛刀は風切と雷切。
口が悪く、ついキツい物言いをしてしまいがちですが、それは不器用なだけで、本当は情に厚い性格。何だかんだ言って面倒見の良い兄貴肌なため、街の人からも好かれています。祖母と一緒に暮らしています。
剣取り御前試合で優勝し、天下五剣を手に入れることを強く志しています。
黒羽実彰(CV前野智昭さん)
肥前国出身で隠れ切支丹。
物静かで穏やかな性格をしていますが、考えていることがわかりにくい青年です。人付き合いにおいては、他人と一定の距離を置くようにしていて、秘密主義。
愛刀の孫六兼元には、ハバキ憑きという少女の姿をした悪戯好きな妖が取り憑いています。彼女を認識できるのは、基本的に刀の持ち主である実彰のみですが、稀に霊感の強い人間には見えることがあるようです。
生まれは常陸国。
江戸幕府の公儀隠密です。しかし、彼の身分を知る者は非常に限られています。
性格は能天気。ふらふらと街で呑み歩いていることが多く、彼がいつ働いているのか疑問に思う者も多いです。
ただ、剣術や体術といった武術の腕は一流で並の人間では太刀打ちできません。
香夜のことを花嫁行列を終えた後も姫と呼び続け、とても可愛がっています。
鷺原左京(CV保志総一朗さん)
山城国出身で幕府直参旗本である鷺原家の嫡男。しかし、子供の頃に両親と姉を惨殺されたことで復讐を決意し、仇討赦免状を手にして国を飛び出しました。愛刀は大太刀である蛍丸。
女性と見間違えるような美しい容貌の青年で、普段は非常に品のある言動をします。このような外見故に世間知らずと勘違いされがちですが、一人旅をして長いため処世術に長けています。
生まれて間もなく口減らしに高尾山に捨てられ、天狗に拾われて育った青年。高尾山では妖怪と共に暮らしていました。そこで、剣術と医術を学びました。
素直で明るい性格をしていて、山育ち故の世間知らずであるため、突拍子もないことを仕出かすこともしばしば。
純粋な性情であるため、木霊の存在や声を認識する能力があり、木霊の力を借りて窮地を突破することもあります。
それでは感想を。
とてもシナリオが長かったです。特に、共通シナリオが長かったですね。これまでプレイした作品の中で最長だったと感じています。
しかし、無駄に長いという訳ではなく、その後の展開のための伏線や匂わせが数多く散りばめられていて、共通シナリオあってこその作品だと思います。
世界観設定や人間関係がかなり複雑になっていますが、とても綺麗に回収されていたと思います。本編で気になった点もFDで見事に回収されていましたね。
この作品は、かなりサブキャラクターに惹かれてしまったので、攻略対象の推しについては後でゆっくりと語るとして、まずサブキャラの話をさせて下さい。
サブキャラとしては、徳川の面々に惹かれました。上様――徳川家光様と、その側近である松平辰影様に惹かれすぎて、どうしてこの2人が攻略対象ではないのかと、何度も頭を抱えたものです。
ポジションや立ち回りを考えれば、どちらもサブキャラに収まって然るべき人物なのですが、普通に格好良かったです。攻略対象さながらの格好良さでした。
特に、FDにおける上様。勘弁して下さいよ。私の呼吸を何度止めたとお思いですか。心臓に悪いとは、まさにこのこと。
辰影様は主人公や攻略対象に対して辛辣な態度を取ることもありますが、それも彼の立場や生い立ち故と思うと胸が締め付けられましたね。普段の気の強さと時折見せる儚げな雰囲気に、完全に心を持っていかれました。
若しかしたら、攻略対象以上に、この2名が気に入っているのやもしれませんね。
この作品には、ハッピーエンドとバッドエンドが設定されていませんでした。個別シナリオの後半から剣ルートと君ルートに分かれ、そこから更に和魂、幸魂、荒魂、奇魂の4つのエンドに辿り着きます。
剣ルートでは、荒魂または奇魂エンド。君ルートでは、和魂または幸魂エンドに到達するようになっていました。
どの結末をハッピーエンドやバッドエンドと受け取るかは、完全にプレイヤーの感性次第。ハピエン厨であっても、バドエン厨であっても楽しめる仕様で、面白いと思いましたね。
さて、そろそろ攻略順と推しについて語りたいと思います。
私は
実彰→縁→左京→螢→鈴懸→九十九丸
の順で攻略しました。
推奨攻略順については、攻略制限も特にかかっていませんし、気になるキャラがいるなら、そこから始めてしまっていいと思います。
ただ、鈴懸のシナリオには左京と螢の出自や経歴について軽く触れる部分があるので、出来れば左京と螢を終えてから攻略することをお勧めします。
しかし、左京や九十九丸のシナリオを最後に回すと後味が良いような気もします。
兎に角、気になるキャラから始めてしまって大丈夫です。直感の赴くままにどうぞ。
そして、推しについて。
最推しは実彰です。縁も推しています。
2人の抱えている事情に非常に共感できたところが大きいですね。あと、出自や経歴に少々意表を突かれたので気に入りました。
実彰の経歴や、それに対する彼の感情が本当に好みで、ただでさえ口数の少ない実彰が自身の抱えているものを徐々に明らかにしていくと、自然に沼っていきました。数々の修羅場を潜り抜けて来たが故の老成した雰囲気には安心しますし、ハバキ憑き相手にコミカルなやり取りをしてくれるところも良いです。ハバキ憑きと話している時が、一番年相応な言動をしているのではないかと思います。香夜の前では年長者の風格が出ますから。実彰の人物像に慣れてくると、何気ない瞬間に実彰も年相応な青年だと感じるようになりまして、そういうシーンでは愛しさのままに手頃な位置にある枕を殴っています。尊い、これに尽きる。
縁については、出自が明らかになった瞬間に、これはハマると直感しましたね。この手のキャラにハマるんですよ、本当に。縁の抱える複雑な事情や感情には、非常に共感しましたし、普段はそれを全く表に出さない点が本当に良かった。ふらふらしている人間ほど、色々と抱えているものですよ。人間らしいというか、自身の生き方や在り方について思い悩むその姿に惹かれましたね。また、エンドもかなり極端と言いますか、結末によって縁の在り方そのものが大きく変わっていくので、どのエンドも楽しめました。けれど、やはり香夜を可愛がっている姿が一番見ていてしっくり来ますね。縁はこうでなくでは。
かなり長くなってしまいました。が、それだけボリューミィな作品だということです。
和風作品は必ずと言っていい程にハマるのですが、今回もハマりましたね、見事に。
そろそろ10周年を迎える作品ですし、新作も期待できるのではないかと思います。
シナリオの重い作品が好きな方や、じっくり作品を楽しみたい方にはお勧めできますね。
ただ、既読スキップや選択肢スキップを駆使しても、かなりプレイ時間が掛かったので、纏まった時間を作るか、長期間プレイすることを覚悟して頂く必要があると思います。
しかし、その分、シナリオがしっかりしているので、世界観にどっぷり浸ることが出来るでしょう。
剣士として生きるか。愛する人と共に生きるか。
侍達の生き様。そして、彼らの抱える苦悩。
剣を手に生きる男達の軌跡を見届けることができる作品です。
FDの紹介はこちら!
https://kakuyomu.jp/works/16816700426699717598/episodes/16817330655643762218
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