第51話 まだまだ続く夏休み
「もうダメ。別れましょ。私達」
「早速前回のフラグを回収するな」
まだまだ猛暑が続く夏休み。
そんな中、愛依は俺の家に遊びに来ていた。
そしてなぜか別れ話を切り出されていた。
「だって!私のプリン食べたでしょ!とっておいたのに!」
「ガキか。怒りの沸点低すぎだろ。それで別れ話切り出されてたらキリないわ」
そもそも、俺の家の冷蔵庫に自分のプリンを置いとくというのもよく分からないが。
「それに、食べたの俺じゃないぞ」
「……と、言い張る一方だから、玲夢ちゃんと李湖ちゃんにも集まってもらったの」
「何で私らまで。二人が仲良くするのは勝手だけど、イチャつくのは二人だけにしてほしいんですけど……」
「まぁまぁ。未来のお姉ちゃんなんだから私らも仲良くしようよ」
とまぁ、愛依のプリンを食べた容疑者として、俺ら神外家の3人が疑われているという訳だ。
「さて、それではこの名探偵が話を聞いていきましょうか。まず、このプリンを買ってここに置いといたのが昨日の昼2時過ぎ。それから今日の1時までが犯行推定時間となります」
「何それ……。何か、それっぽいこと言ってるけど……」
「何か始まっちゃったね…」
「二人とも静かに。愛依は至って本気なんだ」
「お兄ちゃんってなんだかんだ愛依姉に甘いよね」
「バカップルだし。バカ兄だし」
コホン、と咳払いをすると、愛依は推理を続けた。
「それでは、まず李湖ちゃん。昨日の昼からは何をしていましたか?」
「んーと……昨日は明日から始まる林間学校の準備してたかな?必要なものを買いに行ったり、押し入れの中探し回ったり…とか?」
「ふむ。李湖ちゃんはアリバイがあった、と」
………いや、押し入れの中探し回ってるってことは家にも居たんだからアリバイとするには弱くないか……?
「お次は玲夢ちゃん。昨日の昼からは何をしていましたか?」
「えっと、昼は友達と出掛けてたかな。街に行って服とか見て回ったり、ご飯食べたり。夕方からは夕食作ってその後は夏休みの宿題進めてたかな」
「ふむ。玲夢ちゃんはアリバイがあった、と」
だから、夕方からは家に居たんだからアリバイには弱いだろ。
「さて、本命の夕くん。昼からは何をしていましたか」
「聞く前から本命なのかよ。で、昼からだっけ?まず、お前が例のプリンを買ってきて、それからはお前に付きっきりでデートしてたよな?家に帰ってからも、夕食まで一緒に食べて、夜の9時くらいまで俺と一緒に遊んでたろ」
「ふむ。夕くんはアリバイがあった、と」
「お前が常に傍に居たんだからまず最初に容疑者から外されそうなんだけどな?」
これぞ完璧なアリバイであった。
被害者とずっと一緒だったのだからな。
「ふむ………手詰まった…」
「クソザコ探偵じゃねえか」
神外三兄妹から呆れた視線を送られる始末である。それからというもの、何も進展は無く、結局プリンを俺が買ってくるということでこの話は終結を迎えた。
いや、納得はしてないがな?
「ただいま~」
すると、買い物に行っていた母さんが帰ってきた。
「あ、おかえり。お母さん」
「あら愛依ちゃん。ただいま。留守中、誰も来なかった?」
「あ、宅配便来てたから受け取っておいたよ。そこに置いてるから」
「あらあら。ありがとね」
「そこのお二人さんや。愛依が毎日来るからってあたかも親子みたいな会話するのやめてくれます?混乱するから」
「あら?私、4人産まなかったかしら?」
「怖いわ。そういうの怖いから。3人しか産んでないから」
母さんは平常運転である。
「それで、皆集まって何してたの?夕の取り合い?」
「もう母さんは黙っててくれるかな……?」
「実は、かくかくしかじか」
「なるほど。愛依ちゃんのプリンを食べたのが誰か、推理してるのね」
「よく伝わるな…」
「でもその犯人なら知ってるかも」
「えっ!?」
………なんとなくそんな気はしてた。
玲夢も李湖も嘘ついてるような気配はなかったし、まぁある程度アリバイもあるし。
となると、犯人は俺を含めたこの3人以外の人物となる。
「はい。この前うっかり食べちゃったお詫び」
「あ!プリン!ま、お母さんなら許しましょう。プリンも返ってきた訳ですし」
プリン1つでここまで喜怒哀楽を出す高校生ってある意味凄い。というかどれだけプリン好きなんだよ。
「はぁ。人騒がせな……」
「そもそも、ウチの冷蔵庫に自分のプリンを置いときますかね…?」
「何言ってるの玲夢姉。玲夢姉だって自分の買ってきた物とか入れてるじゃん」
「李湖まで愛依さんを本当のお姉さんみたいに言うのやめてくれるかな?本当にお姉さんだったんじゃないかって思うから」
「一体いつから愛依ちゃんを姉じゃないと錯覚していた?」
「母さんもややこしくするな。元ネタから年代バレても知らんぞ。てかバレたところで若いのがバレるだけだわ。てか実際アンタは俺達の親にしては若いわ。って俺はどんだけ高度なノリツッコミしてんだよ」
「ふふっ。楽しい家族ね」
「そこの愛依さん?落ち着くとこじゃないからな?」
すっかりこの家族に馴染んだ愛依。
まぁ、夏休みのほとんどウチに来てるからな。馴染むのも無理はない。
ちなみに俺の母さんの年齢は31である。
と、言うことはその母さんの同級生だった咲希の母さん、蕾美さんも31である。
え?俺達が高校一年なのに母さん達が31歳なのが気になるって?まぁ、母さん達もいろいろあったんだろう。いろいろ。
まぁ、これでいつも母さんがほんわかムードで下ネタをぶっ込んでくる理由が分かっただろう。若さ故である。
「まぁ、一件落着だな」
「あ、そうそう。夕くん。明日デート行こ?」
「ここ最近、毎日行ってね?」
「何?嫌なの?」
「嫌じゃないけど……たまにはのんびりしたいかな……と」
「む~……」
不満そうに頬を膨らませる彼女。
可愛い。
「はいはい。毎日ご馳走さまです。は~、胸焼けするわこの二人」
「まぁまぁ。仲が良いが一番じゃん」
「この二人のやりとりにはこっちまでドキドキするわ~。面倒くさそうにしてる彼ほど、実は内心ドキドキしてて、グイグイくる彼女もそんな彼を振り向かせたいと懸命になる!くぅ~、いいわぁ~」
俺と愛依のやりとりがどうだのと長文で語っている乙女100%のコメントの主は他でもない母さんである。
母さんはまだまだ乙女らしい。
「そうだ。せっかくなら今度、皆でどこか行かない?」
「どこかってどこに?」
「ドライブでもしてどこか観光して、ホテルや旅館に泊まって……みたいな?」
「どこに、という疑問の答えになってないんだが?」
「私もお盆になったら休みだし、皆でまたどこか行きましょ。この前の海水浴に行ったメンバーで」
母さんの発案により、次なる夏休みの予定が出来た。
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