第4話 神外家の休日
高校に入学し、一週間が過ぎた土曜日の朝。
俺、神外夕はカーテンの隙間から射してくる朝日を受け、眠りから目を覚ました。
気だるい体をゆらりと起こし洗面台に向かい、寝ぼけている顔を洗った。
高校に入学してこの一週間。
いろいろあった。いや、いろいろとは言うが、大きく言えばアイツの存在ただ一つなんだが。
まぁ、でも結局やることは変わらない。今までの学校生活と何ら変わらない生活をするだけ。つまり、ただの延長だ。小学の頃からの距離をお互い守る、それをこれからも続けていくだけである。
と、そこへ俺のスマホに一本の連絡が。
「ただ今まで通り、のはずなんだが……」
一人、俺たちの関係を知って、何やら良からぬことを考えている輩がいるのであった。
『おはよう!まぁ神外くんの事だし、どうせまだ寝てたんでしょうけど。だがそんな貴方に丁度いい目覚ましをプレゼント!
私が二人を仲良くさせようとしてること、咲希にも話したからそのつもりで』
と、綴られていた。
「………そりゃ目ぇ覚めるわ」
八重野愛依。今後の行動に要注意だ。
すっかり目が覚めた俺はいつものように朝食を食べ、ぐーたらと休日を満喫する。
先程の愛依からの連絡なんて気にしてたら駄目だ。休日くらい休日らしく体を休めることが大切なのだ。
「ねぇお兄ちゃん」
「どうした?
「文句というかさ。朝から早速そんなぐーたらしてていいの?高校生なんでしょ?もっとこう、しっかりしてよ!」
この少し口うるさい女の子は
俺の妹にしては頭も良く、容姿も良い。去年までは俺も同じ中学に在学していたのだが、その頃から、つまり中学1年生の新入生というのに李湖は男子に人気があったのだ。
成績優秀で容姿端麗、そういうところは今のアイツと似てるのかも……。
あ、先に言っておくが俺と李湖は血縁関係だ。よくある血の繋がってない義妹ではない。
「って、現実で義妹なんて方が珍しいわな」
「何言ってるの?義妹……?……はっ!も、もしかして私を義妹として扱って私を口説こうとしているんですか!確かに歳上の人は好きですけど流石に血の繋がっている兄と恋仲になる気は全く無いし第一あなたみたいな頭もっさり童貞君には興味がないので無理です!ごめんなさい!」
「はいはい…分かったから。そんなこと1ミリも考えてないから。そしてその既視感のある言い回しやめろな」
と、まぁ兄妹仲は良い方だ。
こっちはな。
「ちょっと、そこどいてくれる?」
「噂をすれば、だ」
「は?」
李湖とはうって変わって、強気で兄の俺に対してもまるでゴミクズを前にしているかのような扱いをしてくるこの少女は
つまり、年長者から数えて、俺が長男、そして玲夢が長女、李湖が次女。俺達兄妹の関係はこのようになっている。
あ、言い忘れていたが玲夢とてスペックは李湖と同等。いや、玲夢の方が姉ということもあってか少し上かもしれない。
ま、つまり容姿も普通、成績も普通、普通まみれの凡人たる俺がこの家系の中では突然変異なのである。
「聞いてるの?ソファに寝転がってたら私が座れないでしょ?どいて、突然変異君」
突然変異君なんて呼ばれる兄がいまだかつて居たであろうか。
それに、ここまで言われてしまうと流石にこちらだって怒りという感情が芽生えるものだ。
李湖も見ている手前、ここは兄の威厳というやつを見せてやる。
「おい、兄に向かってその口の利き方は何だ?突然変異君だ?ふっ、違うな。逆だよ逆。何もかもが普通の凡人である俺が普通であり、お前らのような成績優秀、容姿端麗の方が突然変異ちゃんじゃボケぇ!!」
と、俺は大人気もなく妹に怒鳴ってしまう。
だが、これはやむなしだ。これくらい反抗しないと兄の威厳がない。
「……わ…」
「ん?」
「…わ、私……突然変異ちゃん……?」
「へ?」
俺の目に飛び込んできたのは、目に涙を浮かばせている李湖であった。その姿に驚いたのと同時に俺は自分の言い放ったセリフを再確認していた。
『おい、兄に向かってその口の利き方は何だ?突然変異君だ?ふっ、違うな。逆だよ逆。何もかもが普通の凡人である俺が普通であり、お前らのような成績優秀、容姿端麗の方が突然変異ちゃんじゃボケぇ!!』
「………ら…?」
日本語というのものは実に難解である。
日本語の中にはたった一文字で意味が全く変わってしまうこともあるのだ。
つまり俺は………突然変異ちゃんという枠組みに、知らず知らずのうちに李湖もカテゴライズしてしまっていた………。
「……お兄ちゃん…嫌い……」
「……………」
『長男』神外夕と『次女』神外李湖の好感度が40下がった!
おまけに、
『長男』神外夕と『長女』神外玲夢の好感度が20下がった!
効果は抜群だ!
「抜群でたまるか……」
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