「排出確率という運命操作」
昼休憩にコンビニへ行った(今日はパスタサラダにした)。弁当を作って持ってくるべきだとは思う。あの日からもうどれだけ経っているんだと、もう一人の俺に叱責される。女々しいよな。本音は「金の力で楽をしたい」なのに、建前に「妻が立っていた台所に立ちたくない」を用意するのは〝逃げ〟じゃなかろうか。そんなことは俺だってわかっているから、もう一人の俺は脳内の隅に追いやった。
俺は
「またこの子なの……?」
聞き覚えのある声がして、そちらに視線を向ける。コンビニの前にガチャポンが並んでいるのだけど、そのガチャポンの前にしゃがんでいる女性に見覚えがあった。硬貨を両手に挟んで「神様、お願いなの!」と拝み、一枚ずつ丁寧に投入口へ吸い込ませていく。それから、ガチャハンドルを回して、がこん! と音が鳴った。
「四連続!」
カプセルを取り出し、開封して中身を取り出して、思わず声を上げて、ガックリと肩を落とす。……見てられない。
「
秋月
「あっ、たーちゃん!」
声をかけてきたのが俺だと気付くと、秋月さんの表情が明るくなった。逃げるなら今のうちだぞともう一人の俺がささやく。逃げるのはお前のほう。
「このガチャポンの、黒いのが欲しくて回してるのに、ほら!」
「緑のばっかり」
ドラゴンガチャ。手のひらサイズのドラゴンのペンダントのようなものが、全七種。
「そう! さっきので四回目なの! 店員さん呼びたいぐらいなの!」
こんなものを買ってどうするのか、なんてのは、聞かないほうがいいんだろう。
「こういうのは運ですからね」
「お金もなくなっちゃったの……次は千円札崩さないといけないし……」
ちらっちらっ。
「俺が回してみますよ」
「いいの!?」
「そういう流れっぽかったので」
「当たったら買い取るの!」
「はいはい」
俺は財布から百円玉を、三枚か。三枚、指でつまんで、秋月さんのお目当てのガチャポンの機械のコイン投入口に入れる。三枚入れて、ガチャハンドルを握った。
「たーちゃん」
「何ですか?」
「祈らないの?」
ガチャポン、回すの何年ぶりだろうか。【硬化】の能力者になって、ものを直接手で触れることができなくなったから、……小さい頃かな。こういうことができるようになったのは、組織との繋がりができて、この手袋をもらったからだ。
「こういうのは運ですからね。回そうと決めた時点で決まってるんですよ」
俺は運がいいんだろうか。
悪いんだろうか。
「そういうものなの?」
一思いにぐるっと回して、がこん! とカプセルが落ちてきた。手袋に包まれた右手で掴んで、左手で押さえて開封する。
「出ましたよ」
さっき秋月さんが見せてくれた緑色のの色違い、黒いのが出てきた。こうやってみると、結構かっこいいかも。
「やったー! やったやったー!」
「これ買ってどうするんですか」
「飾っておくの」
あの部屋に飾るスペースがあったんだ……知らなかった……。
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