「その瞳には輝きが宿っている」
能力者保護法。
2000年の末に総理が亡くなって、年末だったもんで一時的に代わりの総理が立てられている間に作られた法律。
総理の秘書であった
ちなみに組織の正式名称はない。組織は組織なんで。よく聞かれるケド。
能力者に関連する組織はただひとつしかなくて他には存在しないから、単に『組織』と呼ばれるの。
名前があるっていうのは、世間に認知されるコトでもあるし。
わたしたち能力者は目立ってはいけないし。
出過ぎた杭は打たれるのだ。
――そう、
いやまあ、あの総理は足を滑らせて死んでるから自分のせいなの。
わたしが事情通みたいな口ぶりになっちゃったの。
なんか事件性があるみたいな言い方しちゃった。
たーちゃんはどう思う?
「当時の捜査記録は出そうとすれば出せますけど、実際ニュースになったのとそう変わんないですよ」
何の話をしたかったんだっけ。
ああ、そうだそうだ。
卒論を書くために作倉さんのところに足繁く通ってたって話をしたじゃない?
その時の話をするの。
今考えてみればわたしも常識知らずっていうか、よく作倉さんも会ってくれたなあって思うんだケド。
わたしが組織の電話番号に電話したら、作倉さんが出てくれたの。
「電話?」
メールアドレスは調べてもわからなかったし。
電話番号は調べたら出てきたから電話するしかなくない?
「まあ、そうですね」
電話口で「卒論で能力者保護法について書きたいんですケド」と話したら、とんとん拍子で面会の日時が決まったの。
こうやって組織に所属して、作倉さんと関わるようになってから思うけど、絶対面白がってたの。
「いやまあ、そうですね……」
何なのその顔。
たーちゃんもわたしのコト面白美少女だと思ってる?
「まあ、はい」
たーちゃんは正直者なの。
正直者のたーちゃんには
「いりません」
***
「あのー……」
ビルの一階。
受付のおねーさんにおずおずと話しかける大学生のわたし。
「はい」
目と目が合う。
恋は始まらない。
始まっても困っちゃうなー。
わたしったらモテモテなの。
「組織に用事があるんですケド」
わたしが〝組織〟というと、対応してくれているおねーさんの隣に座っているおねーさんまでわたしの顔を見た。
なんだろう。
警戒されているっていうか。
「担当のほうにお繋ぎします。少々お待ちください」
おねーさんが受話器を取って、どっかに電話をしている。
少々の少々を待って、電話でのやりとりが終わったらしく「奥のエレベーターにどうぞ」と案内された。
エレベーターにどうぞされても。
わたしは何階に行けばいいのかわからないの。
ちょっと困った顔をしていたら、トントンと肩を叩かれた。
「どもどもぉ。案内しちゃったり連れて行ったりしちゃってって頼まれちゃってぇ☆」
新キャラだ!!!!!!!!
どっから生えてきた?
おっと。
年上っぽい男の人に対してその反応はよくないの。
生えてきたってキノコかタケノコみたいな。
……年上だよね?
この人についていけばいいのかな。
案内してくれるらしいし。
連れて行ってくれるらしいし?
初対面のこの、見るからに『職業:遊び人』もしくは『職業:ホスト』っぽい男の人、ほんとに組織の人だよね?
「お名前はちなっちゃんで合ってるぅ?」
秋月千夏だから「ちなっちゃん」と呼ばれてもおかしかないケド。
友だちには「秋月さん」って呼ばれるから、あだ名らしいあだ名で呼ばれたコトはないの。
「そう言うあなたは作倉さん?」
違うだろうケド。
頼まれたって言ってたし。
「俺は
エレベーターに乗るだけじゃない?
護衛に日比谷さんがつく必要があるの?
安全にって、作倉さんのとこまでダンジョンでもあるの?
***
「最初に会ったのがあの人なんですか?」
口にはしないものの、ウヘェといった、嫌そうな感情をその言葉に乗せてきたたーちゃん。
わたしは別に日比谷さんのコト、嫌いじゃないけど好きでもないっていうか。
どっちかっていうとどっちでもない、フラットな感じ。
先輩だから先輩としてのリスペクトはあるケド。
あ!
一ヶ月に一度ぐらい奢ってくれるから好きかも!
給料日の後とか。
「あんまりいい噂を聞きませんけど、何もされてませんよね?」
何もって?
「ないならいいんですけど……」
たーちゃんは警察官だから、疑っちゃうのはわかる。
でも人を見た目で判断するのはよくないの!
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