紀子と食事に行く日

 紀子と食事に行く日。やたらと母さんから連絡が来る、

『しっかりヤるのよ 失礼のないやうに』 


母さん....誤字脱字毎度だけど、なんでよりによってヤがカタカナよ。


 俺は「よっ」と右手だけを上げ会話もなく前を歩き、お嬢様という紀子をきったねぇ炉端居酒屋に連れて行った。

のれんをくぐり、そのまま手を離した。見事に紀子の顔にのれんが当たる。


「わぁ なんだか煙たい......」

フン 魚クセェだろ。


「あの、私魚苦手で」


ひっひっひっ。知ってましたよ。だからここに来ましたよ~。

あ、俺最低?

いやいや。魚は体にいいんだよ!肉肉で欧米食進んじゃカルシウムもDHAだかなんかも不足すんだぞ。サプリなんて何の意味もないからな、あんたが飲んでる高いやつよ。


「じゃ、違うの食えば?」


そうだ、俺はこいつにはレディセカンドだ。セカンドに徹するぞ。


「すいませーんっ」

普通に大声出して店員呼ぶ紀子、やっぱ年の功か

少しは困るかモジモジしろよ。


あぁ疲れた.....。

俺は無言、愛想ないヤツを演じ、酒を口に運ぶ回数がいつもより多くなる。

そういや、紀子は酒飲みが嫌いだ。だから、家では禁酒しろと言われていた。

だったら酒攻撃だ―――!


「飲まないのか?」

「あぁ私は.....」

「ふん つまんねーのっ」

「じゃ私も....」

「いや、飲むな」


......変に酔われても困る。


俺はどんどん飲み、酔っぱらいになる。


「あ〜飲みすぎたっ。」

「可愛いわね 和輝さんて」

「はあ?あんたは全然可愛くねー」

「まっ年上だし、仕方ないわね」

「ふぅん。俺は結婚しねーからな 二度とゴメンだ」

「え?バツイチ?」

「ちがーううっ」


 酔っぱらいの俺を紀子が店から連れ出し送ると言ってタクシーに乗り込んだ。

いや俺だけ乗せろよ、乗ってくんなよ。


「大丈夫?和輝さん」


うなだれる俺の膝に手を置かれる。や、やめてくれ。


「あ?すいません、ここでとめてくだっさいぃ。あんたはそのまま帰れー!」


俺は逃げるようにタクシーを降りた。マンションより手前で。家が知られたら困るからな.....こいつは押しかけ女房になりかねない。


これで、嫌がるだろ。


それからも、ずっと紀子は俺を食事に誘う......。

俺にはもう分からない、もしかして未来は変わらないのか.....変えられないのか?



+++



無視を決め通し、俺の39歳誕生日前日


 よーしっ!!

今回俺は結婚してないぞ!結婚せずに明日39歳を迎えられる。

謎のタイムスリップをしたこの1年。なんとか結婚は回避した。今まで夏休みの宿題だって土壇場で泣きながらやってプリント数枚ごまかして個人懇談で怒られるタイプだったけど、仕事もそうだこんな感じでいいんだろうって妥協してきたけど今回は達成した、人生かかってるから。

ならばこれからの未来で素敵な嫁さんを探すのみ!



明日起きたら絶対一人で寝ていることだろう。

希望に満ちて俺は眠りについたのだった。

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