亜美と居酒屋へ

 同窓会でなりふり構わず連絡先を聞いた俺。健太郎も聞いてたが。


 よし、まずは食事に誘うぞ。

朝からそんな学生みたいな頭で考えていた。


「ちょっとー和輝さぁん、か あん もー社長!」

「あ、はい すいません エリー」

「聞いてましたかぁ?さっきの佐々木さんの、て・い・あ・ん」

「あ、ごめん」


 たしか、プチプラアクセやるとかで、買い付けいくってやつだな。

プチプラ.....たしか、これはまだ一年しか試してないがあまり芳しくない数字....薄利多売まっしぐら。ブランドイメージも低下。

「買付はやめよう。他社と同じ事は。少し労力使ってもなにか無いかな、オリジナリティ溢れる展開」


「和輝さぁん どしたの?妙にイケてる社長みたいじゃない。わかったわ。スタッフ集めて考えてみる。いくわよっ佐々木さん」

 エリーは佐々木さんを連れて腰をくねくねさせながら後ろのミーティングテーブルへ行った。



さてと、亜美に....

え?


母さんから、慣れないのか毎回誤字脱字で送ってくる。


『和輝へ お父さんが来週末に食事にいこうてた 彼女を連れてきなさうと 母より』


 はぁ......来週末。

親は頑固だ。俺が恋を実らすまでなんて待ってくれないだろう。

直にクソババアが出動してくる前に.....。


 亜美を口説くのはさて置いて、事情を説明し頼むことにした。


 そして、食事に行く日。

待ち合わせ場所には.....

「おっカズ!」

はぁなんで健太郎が居るんだよ。

「アミちゃんに呼ばれてさ」

マジで.....。


「おーいっ。お待たせっ」

亜美の横に、もう一人女性がいた。

「ごめん。カズ なんかいっぱい誘っちゃった ははは。皆で久々に語ろうよ〜」

「お おう、あのそちらは?」

「大学の後輩 絵美えみ

「はじめまして 蔵田くらた 絵美です」


 まさに、俺が高校時代に惚れたサトミちゃんのような黒髪艶髪、優しい目つき、微笑みの女神。

なんと.....人生って一つ選択を変えれば次から次へと、だるま式に物事がかわり、移りゆくものなんだなあ......まさか、運転免許センターからこんな、美人に会うなんて......。


「おいっ行くぞ カズ」

「あっ」


「なんか、つまみながら飲むよね?」

亜美はやっぱり男らしい。みんなを引っ張って小さな居酒屋へ入った。


「同窓会楽しかったなぁ。でもさ、みんなやっぱり家庭あるからお互いになんか、距離感じたわ。あんたらは距離0メートルだけど」

上機嫌に話す亜美の横で、絵美さんはあまり口を開かない。


「でさ、カズ、私に頼みってなに?」

あーそうだった、俺は恋人のふりして、両親に会ってくれと頼むつもりで。

まさかこんなメンバーになるとは....。


「俺さ、見合いしろって言われてて、どーしてもその見合いが嫌でさ」

「なんでー?」

アホヅラで速攻ツッコむなよな健太郎。


「でもさ、会ってみなきゃわかんないでしょ?案外素敵ななレディかもしれんよ〜」

と亜美も言う。

「いや、絶対に阻止しなければ」

「は?」「は?」

「あぁ.....んで?何が頼みだっけ?」

「彼女のフリしてほしい!」

「え?ご両親に挨拶系?そのままマジで結婚してくれとかならない?」

「それは分からない」

あ、何言ってんだ。俺はもう結婚強要変態みたいだな。


「分からないって、冗談キツいわ。あっ、エミ!あんた得意分野じゃない?フリとかさっ」


ん?


「ああ、別にいいですけど。変なことはしないでくださいね。訴えますから」

あ あああ なんだろう。この絵美さんから放たれるちょい怖なオーラは.....。


「じゃ、いいよね?私じゃなくエミで。ね?」


 こうして、わりとあっさり?どこぞの誰ベエかも分からぬ俺の恋人役を引き受けてくれた絵美さんだった。

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