待ちに待った同窓会

 待ちに待った同窓会。38で同窓会で恋人いや結婚相手を探す奴なんて多分俺ぐらいだろう.....。

下心はぐっと隠して抑えて、爽やかに行かなければ。

あれから20年?だな。

恐ろしく長い年月。生まれた赤子が成人するぞ。

早く結婚してたら今頃高校生の子供居たりして。


 レストランを貸し切りにして、ビュッフェにした。健太郎と俺が幹事で。

みんなに挨拶しないと、と思いながらも目で必死こいて探すは、サトミちゃん。

まだ来てないのかな......。

それにしても、みんな......老けたな。

名前聞かないと身元不明者が多発だぞこれは。


 あれ?これは誰だっけ.......得意げにAGAの薬の話をするサラリーマンです!みたいな同級生と話していると、背後から誰かが呼ぶ。


「カズ!カズ!カズでしょ?」

この声は......サトミちゃん?!!


 俺は高鳴る胸を表情に出さないように、ゆっくりと心を落ち着かせ穏やかな顔で振り向いた。みんなの話声と食器が重なる賑やかだった雑音が遠くなる。


「やっぱり。カズ、変わらないね」

だ.....だれ......。

ふっくらとして、二重あごがさらにたるみを帯びて

愛想の良さそうなおばさん.....

むりやり着てきたと思われるキツめのワンピースが痛々しいくらいに食い込む脇腹。


目を見て俺はしばらく停止した。


「やだっ、分からない?ショックだわ。そりゃそうね。こんなんだもん。真木です。真木 里美」


―――全世界の俺が泣いた......。

サトミちゃんの後ろに立つ健太郎も読み取れないくらい不思議な表情をしている。


「あ!あ サトミちゃん。俺、そうだよ。和輝。久しぶりー。懐かしい。」

......俺!こら 俺!好きだったって言うんだろ!


そうだ。ルックスなんて関係ない。俺はあの頃言えなかった思いだけは伝えるんだ。


「カズは独身?そのカッコよさは独身でしょ。私はもう3児の母よ。」


 そうか、やっぱりサトミは幸せになった。良かったよ。サトミちゃん。


「あぁ 俺は悲しいことに独身。やっぱりか、あのサトミちゃんをほっとくわけないからな。この世の男がさ。俺だって.....高校ん時好きだったから。サトミちゃんが」


 言った!言ったどーー!母さん!俺言えた。

あ、母さんは関係ないな。


「え、あ ありがとう.......」

ん?もしかしてサトミちゃん知らなかったんだ。あんだけ喋り下手な高校時代の俺が、毎日サトミちゃんには頑張って絡みに行ったのに。


「子供さんは、何歳?女の子?男の子?」

「カズ!!!カズーッ!」

なんだよ。誰だよ.....


 白い大皿片手に小走りで近寄ってくる、なんだよ!こんな美人いたか?うちのクラスに。サトミちゃん以外。


俺はまたしても、その女性を見つめて停止。

女は分からん。変わりすぎる。

誰?


「何ぼーっとしてんだよっ。あっ、昔からか」

「あー!!もしかして、その話し方、アミ?アミなのか?」

「そうです!何を隠そうこの私が亜美ちゃんです!」


 アミは、柿崎かきざき 亜美あみ いい家のお嬢様なのに、口は良くないし、男っぽくて、高校時代はショートカット。ソフトボール部のエースで真っ黒だった。肩くるくる回して投げられる球は俺らでも打てなかった。

俺は仲は良かったけど、異性として意識したことはない。

が、今目の前にいるアミは....これを異性として意識しないアホはいないだろう。


 俺はすぐさま左薬指をチェック。指輪はない。

ないぞ。さー俺!どうする。どうすんだよっ。


「アミちゃん!めちゃくちゃ美人じゃん。結婚は?彼氏は?」

け、健太郎.....おまえ 早いわ。


「あっケンちゃん?ケンちゃん若っ。ビックリした。私はさ、この性格のせいか、孤独よ孤独」

結婚か彼氏がいるのかの問に、孤独と返したアミだった。

俺はこのチャンスを逃すまいと、今から必死をこくのであった。

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