健太郎の美容室に行く
健太郎の美容室へ出向いた。
そりゃ40近いおっさんになると、身なりの整え方が分からなくなる。気付けば同じような服を何着も持ち、同じ髪型、同じ靴をすり減っては何回も買い替えたりする。
冒険しなくなるんだ。
何事も。
仕事では、スタッフからは代表だからか大きな溝がある。いや、近づこうとしない俺が悪い。
ジュエリー系だから女性が、多いんだが。きっと俺はパッとしないと思われている。
まだ俺の部下、エリーの方が人気だ。もう40は過ぎているゲイだ。ゲイには抜群のコミュ力がある。
俺もそこを買って彼を側においた。あ、仕事上だけの意味で。
「今日はどうする?ちょっと変えたら?」
鏡に映る健太郎と俺......。
健太郎はなんというか華がある。
高校時代は、俺のほうがイケてた?と自負していたのにな.....何がどこで変わったんだ。俺の人生。
「あぁ 変えたくてもなー今更この歳でどうやったら変わるんだ」
健太郎はヘアカタログを持ってきてあれやこれやウンチクを並べだす。
「いや、若作りしたいわけじゃないんだよなあ。」
「これは?前髪ちょいと作って浅めのツーブロックだから長めにトップ残す。カズ、なかなか女みてぇな顔だから似合うぞ」
は?褒めたのかイジられてんのか分からないが、とりあえずはお任せした。
俺が苦手とするワックスも渡される。
「さんきゅー健太郎」
「あっ忘れてた。同窓会6月ラストの週だから日曜日夕方から。子供いる人たちがさ、夏休みより前がいいって」
そうか、夏休みか。子供かぁ。
へー。
俺の知らない世界だ.....
「そっか。ありがとう。あんさ、サトミちゃんは?」
「くるぞ」
「え」
「んじゃな!また詳細は連絡するわ」
来る!サトミちゃんが来る。
俺の頭ん中は一気に高校生かよってくらいに無邪気になって喜んだ。
ふと、Facepopアプリがふぁんふぁんなったので
チェックした。
あれからお知らせ通知が大量に来て、やっぱりマメさに欠ける俺は放置気味だった。
ん?ん?んーなんで?
あのクソババア妻から友達申請リクエスト.......
背筋が凍った。
俺は全く理解できない。なんの接点もないはずだ。
38歳。出会っていないなら電話番号なんぞ入っているわけがない。
あ、アイツと共通の知り合い......綱川さんの娘さんか。
俺はとりあえず、可能性のある連絡先をブロックした。俺は、チキンだ。かなりのチキン。
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