二度目の縁談

 両親と俺は、いつも行く日本料理屋にいた。個室のまあまあ値が張る店。

俺は天ぷらを頼む。これは前回と同じでいいか。


「お誕生日おめでとう 和輝」「ありがとう」

「もう38でしょ。三十代が終わるわよ。ねぇお父さん。」

「あぁそろそろ、身を固めるべきだな。遅いくらいだ」


くるぞ、くるぞ


白髪の隙間から地肌が見えるようになった父

痩せて何回りか小さくなった母


 二人を見たら。見合いを断るなんて俺にはできなかったんだ.....前回は。

そりゃ息子がこの歳だ、老いるのは当たり前。俺が未だ独身でいる事を嘆く両親に、今回ばかりは.....。


「和輝 お前にいい話がある。綱川つながわさんから頂いた話だ。」

「綱川さんの遠いご親戚にね、お嬢さんがいらして。家柄もよくて是非うちとご縁があればって。ほら」

と母はシワシワの指先でお見合いのアルバムをすっと滑りの良い机に差し出した。

開けたくない、見たくない。あのクソババアの写真だろ。


はあ――。


断れねー。俺には.....

どうする、いやこれは未来を変えるためだ。


「俺は 俺には――――――、付き合ってる人がいる」

あ 何言ったんだ 俺.....


「あらまぁ てっきり誰もいないと、ねぇ お父さん」

「相手がいるんならなあ。綱川さんには丁重にお断りしよう。ただし場合によっては、もう一度縁談はうけるぞ。挨拶しないとな、今度、連れてきなさい。」


あぁぁぁぁ 

どうする......俺。

前回の38の俺はこのまま見合いして、アイツとあれよあれよと結婚した。


 それだけは是が非でも回避したい。

きっとその為に俺は一年タイムスリップした。

なんとしても、恋人を連れていかなければ。


 家に帰り、俺はとりあえずFace popの個人アカウントを作る。

知り合いかも?

知り合いかも?

知り合いかも?

が連発通知される

とりあえずは仕事関連だけは避けて

片っ端から友達リクエストを申請したのだった。


リクエストが承認されました

リクエストが承認されました

リクエストが承認されました

リクエストが承認されました


 あ、なんか承認されると嬉しいな.....

ありがとう。こんな非社交的な俺を承認してくれて。

昨日までの俺とはもう、おさらばだ!


『同窓会 メンバーとりあえずは3年の同じクラスの半分以上は集まりそう』

健太郎だ。さすがだ。健太郎様と呼びたいくらいだ。


『すごいな。さすが!楽しみにしてるわ同窓会』

『おまかせあれ!近々髪 来いよ。カッコよくしてやる』

『いくよ さんきゅー』

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