51話 魔物のお家

――神の間


「やはり、魔王が復活していたんだね。よくやってくれたよシンセ」

「今回は私一人ではどうにもならなかった……」

「見えなくなって連絡がなくなってから本当に心配したんだぞ!」

「ごめんよ……」

「しかし、結局また封印するしかなかったね。本当は埋める勢いで、扉を完全封鎖が出来れば、誰かが封印を剥がす事も無いのだろうけど」

「完全に扉を埋めてしまうと魔力暴走するんだったね」

「ああ、埋めてしまうと魔力滞留してしまい、溜まって爆発……魔物が散る事になるだろう。しかもすぐにね」

「所でアラキファ。魔王をあっちに帰した上で扉を閉じる方法が思いついたかもしれない」

「ダメだシンセ! どうせまた君が黒色世界から扉を引いて閉じるとか言うのだろう! 僕が絶対に許さない」


 以前の説明通り異色の扉の開閉は、神の力を持つ者が黒色界側から引くか魔神の力を持つ者が白色界側から押すしか方法はない。

 勇者が黒色世界に残り扉を引くか、魔王が白色世界から押すしかないのである。


「いや、そうでは無いよ。ただ、確証も何もないからもう少し待って欲しい」

「……わかったよシンセ。君を信じよう」


「……みなもやグート、それにクリウェ。誰か一人でも欠けていたら負けていたかもしれない。応援を呼んでくれて本当に有難うアラキファ」

「君のお願いなら何だって聞くよ!」

「で……では……そろそろ膝から降りてくれません……?」

「それは無理☆」


・・・


「では戻るよアラキファ」

「もっと居てくれていいのにさー。すぐ帰ろうとするよなシンセ」

「あはは。もうお昼になってしまったし、皆もまだ完全に回復していない。心配なんだ」

「わかったよ」

「ではまた! アラキファ」

「シンセ。たまには神様らしいことも言っておこう」

「……?」

「君は今まで、この世界の中心だったと言ってもいい。魔王を倒すまではね」

「……」

「中心は……変わりつつある。君のいない所で、とんでもない事が発生する可能性も十分にあるだろう。出来るだけ、みなもの傍には居てあげた方がいいだろうね」

「……分かりました」

「では気をつけて。シンセ……」


・・・

・・


「お父さん! 何ぼーっとしてるの、昼食冷えるよ!」

「あ、ああ……ごめんよちょっと考え事してた」


 今は皆で昼食を取っている。

 お父さん、シア、ガウレス……少しだけぎこちない様な気もするけど、やっと日常が戻ってきた!


 午前中の内に、グートは帰ってしまった。

 帰り際に言われた、


「お前、マグマゴーレムも飼うのか? また違反者講習行きになるぜ? シルバーライセンスを取らないとな」


 という言葉が少し気がかりだが、連れ出すわけじゃないからとりあえず大丈夫……よね?


――ズガアアン……


「何の音!?」


 私は急いでバルコニーに出た。

 すると、門横の白い建物……今は魔力の木を育てる場所兼たこやきとマゴちゃんの居住区なのだけど……。

 それの入り口がマゴちゃんによって破壊されていた。


「マゴちゃん!」

「あー。やはりマグマゴーレムにあそこは狭いか……」

「どうしよう、お父さん」

「そうだね……せっかく土地は沢山あるし……マゴちゃんとたこやきの居住区、それに魔力の木も生産量も増やそうか」

「マゴちゃん、葉っぱめっちゃ食べるもんね……でもそんな簡単に作れるの? それに土地ってどこまでが……」

「あっちが神国方面で、白い建物の横の門の所から……」

「うんうん。改めて見るとそれだけで相当広い……」

「反対方向は基本的になんでもありだよ」

「!? え、全部お父さんの土地?」

「お父さんのって訳じゃないよ。ただ、危険な場所もあるから誰も所有していないんだ。神様からは自由に開拓して貰っていいとは言われてるけど、それを行使しようか!」

「す……すごい」

「と言う訳でガウレスとシア! 一緒に考えよう!」

「はっ! 分かりましたぞ! シア様行きましょう! たこやきのお家を作るそうですよ!」

「たこやきのお家! 良い!」


 そうして、たこやきとマゴちゃんの家造りが始まった!

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