49話 魔王封印!

「マゴちゃん! どうしたの! 気をしっかり持って!」

「グォォ……!」

「ふぉっふぉ……魔物の支配とは、より強者に移るものなのだ……小娘如きの言葉に耳も貸すまい」

「そんな事無いよ! それに支配だなんて! 無理やり命令するなんて可哀そうだよ!」


 魔王はそういうけど、私にはマゴちゃんがまだ迷っているように見える……!


「マグマゴーレムよ。小娘を叩き潰せ」


「グ……ォォ……!」

「マゴちゃん……! お願い、やめて……!」


 マグマゴーレムは私の声など一切響かず、拳を振り上げた。

 ……様に見えた。


――ズガァ!!


「な……に……?」


 マグマゴーレムはその場で反転し、魔王の杖を叩き割った。


「馬鹿な……! 我の支配力……魔力をこの小娘が上回っていると言うのか……!」


――ザシュゥ……!


「がはっ……勇者……流石に早いな……!」


 杖が破壊された瞬間、父さんは鎖をちぎり瞬時に剣を抜き魔王の胸を貫いた。


「みなも……本当に助かった……! 魔王! もう一度お前は扉に封印する!!」

「また、貴様に敗れるとはのう。封印か……芸がない……」

「いずれあっちの世界に戻す! 必ず……!」

「ふぉっふぉ……ここは大人しく封印されてやろう……面白い物も見られたしのう……」


 魔王はシア、そしてみなもを見て、不気味な笑みを浮かべながら扉に吸い込まれていった。


――ズゥゥン……


 魔王が吸収されると同時に、父さんは異色の扉を完全に閉じた。


「はぁ……はぁ……」

「お父さん大丈夫?!」

「みなもこそ……! 本当によくやったよ……!」

「ねぇ! それより大変なの……一緒に来ていたグートと先生がガウレスと戦ってるの!」

「な……すぐに向かう!」

「壊れた入り口の先だよ!」

「わかった」

「みなもはシアも見てあげて! バリアを張っていたけど今は解除している! 怪我とかしているかも知れない」

「わ、わかった!」


 お父さんは私の何倍も速い速度で駆けて行った。

 そして私は椅子で気を失っているシアの状態を診た。


・・・

・・


「クリウェ!! ガウレス!!」

「勇者様! よくご無事で! みなも様が頑張ってくださったのですね!」

 

 シンセの目にはうずくまって頭を抑えるガウレス、そしてボロボロのクリウェと少年が目に映った。


「ガウレス……!」

「うぐ、ううう……頭が割れそうじゃ……吾輩は……一体……!」

「支配のリングがまだ解けていない。魔王は封印したのに……!」

「勇者様、やはりガウレスは……」

「ああ。私のせいだ。魔王の洗脳が完全に消えてなかったんだ。小さな種が残っていた……」

「そんな……勇者様のせいではありません」

「だが、現にこうして困っている仲間がいる……ッ! そして、こうなってしまったら私もどうすればいいのか」


 シンセは拳を強く握った。目の前に居る友の救い方が分からない。これほどに悔しい事があるだろうか……。


「ぐあぁぁ……」


 ガウレスは苦しそうに頭を抱え続ける。目は白目をむき、唇を強く噛んだのか血が多く出ている。

 いっその事、楽に……そんな事を考えてしまいそうになったその時だった。


「ガウレス!!」


 シアの声がフロアに響いた。


「お父さん! シアが突然目を覚ましてすごいスピードでこっちに……!」


 マゴちゃんの最高速度に負けない速さでシアはこのフロアへと走って来たのだ。


「シア……様……」


 シアはゆっくりとガウレスの元へ近づく……。


「あ、シア、あぶな……」


 私はそう言いかけた時、父さんは私を止めた。


「シア様……本当に申し訳ありません……吾輩は……」

「ガウレス。もう大丈夫」


 シアは苦しみながらも跪くガウレスの前に立ち、おもむろにガウレスの頭上にあったリングに触れた。


「お姉ちゃん。シアだけじゃ足りない。手伝って」

「え……?」

「早く」

「う、うん!」


 シアに呼ばれ、私は急いでガウレスの元へと向かった。


「シアの手の甲に手を乗せて」

「うん」


 言われるがままにシアに従った。


「シア様……一体何を……」

「ガウレス……ちょっと痛いかも。我慢して」


――バシィ!!


「ぐう……!」


 シアの手から輪っかに向かって黒い電流が走った。


「な……凄い魔力を持ってかれ……!」

「お姉ちゃんも、もう少し頑張って!」

「ええ、もちろん!」


――ジジジジ……!


 魔力をまるで掃除機か何かで吸われるような気分が少し続き、輪っかは真っ白に光り始め……

 

――ガシャン!!


 粉々に砕け散った。


――バタン


 それと同時に3人は気を失ってしまった。


・・・

・・

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