48話 魔王
私はそれをみて飛び出しそうになった。
しかしその瞬間、先生が大声を出した。
「ガウレス!! 君がこんな事をするとは思わなかった! だが良いのか? 君がここへ来たら勇者たちは逃げてしまいますよ? 私達の事などに構わず、戻った方が良いでは?」
「がっはっは! 大丈夫じゃ。魔王の鎖は断ち切れんからな! なによりも、お前達を放置する方が問題ありだ」
「くっ……やはり戦うしかないのか……」
先生……一瞬私と目が合ったのが分かった。
気づかれない様に伝えているんだ。
勇者はこの扉の奥に捕らえられていると……!
(みなも様……どうか気がついてください。勇者を捕えている鎖を外す事が出来れば……私達の勝ちなんです……! ガウレスはここで私が引き受けます)
「マゴちゃん。静かにこっちに来て。先に進むよ」
私は静かにその場を後にし、先の扉へと向かった。
・・・
・・
・
「長い通路だね……」
扉の先はとても長い1本の通路だった。
「よし、マゴちゃん。ここならもう音は聞こえないと思う! 私を乗せて全力で前進するよ!」
――グォォ!
マゴちゃんは大きい分走るスピードは速い! それに疲れしらずの様だ。
……そういえばたこやきはどこに行ったの!?
・・・
・・
・
――みなも達が飛ばされた扉の前
「ぷるんっ」
たこやきは何の反応も示さない扉に体当たりをしていた。
「ぷる……」
たこやきはついに疲れてしまい、隅で大人しく静止していた。
・・・
「マゴちゃん良い速さね! じゃぁ次の扉もそのまま通るよ!」
「グォォ!」
「あれ……マゴちゃんそのスピードで止まれるの……?」
「ゴォォ!」
マゴちゃんは減速する素振りを見せない。
まさかそのまま通るって言っちゃったから……?!
――ズドゥン……
マゴちゃんはそのまま最高スピードで扉に衝突し、扉を粉砕した……。
「げほ……こ、今度からちゃんと指示しないとね……」
「グォォ……」
目の前には先程までに見た扉より遥かに大きな扉……漆黒で禍々しい。その黒色は一切光を反射しておらず、殆ど闇に見える。見ていたら吸い込まれそうになる……。
そしてその扉は少しだけ開いており、赤い光が差し込んでいる。
間違いなくこれが……異色の扉なのだろう。
「みなも! どうしてここに?!」
「! お父さん、それにシア!! よかった無事だったのね!」
私はお父さんの声を聞いてハッと我に返った。
だけど、それと同時に心臓が凍るようなおぞましい気配を感じていた。
――カツン……
杖を地面につく音が響いた。その瞬間、一瞬で場は静寂となった。
「おや、マグマゴーレムが帰ってきたがお前は神徒では無いな……?」
「だ……だれなの……?」
「みなも! そいつが魔王だ……」
「魔王……この人が……!」
私が想像していた魔王より遥かに老人で、弱々しい姿だった。
マゴちゃんのパンチ一発で倒せそうな……。
でもまずはお父さん達の鎖を外さないと……。
「ふぉっふぉ……ならば試してみるか? 勇者の娘よ」
「え……! 私、声に出してないよね……?」
「魔王は強い意志を読むんだ……簡単に言えば心を読む」
「そんな……!」
「勇者の鎖を壊すには我を倒すしかないぞ……? どうする」
「魔王を倒すだなんて……!」
「みなも、それは違う! 杖さえ破壊すれば私の鎖は外れる!」
「なら……もうここまで来たんだ。やるしかないよ! マゴちゃん! 魔王の杖を叩き割って!」
「グォォ!!」
突撃するマゴちゃんに対し、魔王はゆっくりと杖を掲げる……。
「膝まずけ。我を誰だと思っている」
――バシン!!
その瞬間、マゴちゃんの全体に稲妻が走り、大人しくなった……。
この状況……たこやきの時と同じ……! まさか!
「グォ……」
マゴちゃんは反転し、私と対峙した。
「そんな……」
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