45話 勝利!
「きゃっ!」
マグマゴーレムは解き放たれたかのように、勢いよく立ち上がった。
その際、みなもは大きく上に飛ばされ、地面に叩きつけられた。
――ドンッ
「たこやきに耐性を借りられてなかったらこれで2回死んでたね……はぁ、ジェットコースターの地面激突バージョンだよまるで……」
痛みがないから感覚がおかしくなっている。
今だけだからね! 私! たこやきに返したら死ぬから!
「流石は勇者の娘か……しぶとい奴だ。マグマゴーレム! お前の拳で焼き尽くせ!!」
神徒は命令するが、ゴーレムは一切動く気配がない。
「おい! マグマゴーレム!」
そのやり取りをみて私は指をさしながら言い放った。
「マグマゴーレム! その神徒を鎖で縛って!」
「グォォ」
マグマゴーレムは神徒の方へ向いた。
そして、自分を縛っていた鎖を神徒に巻き始めたのだ。
「おい! そんな馬鹿な……! 百歩譲って鎖が切れて私の言う事を聞かないならわかる! だが、何故お前の言う事を聞くのだ!! こんな小娘の!!」
「小娘って……マグマゴーレム! 口も塞いじゃって!」
「あがが……ぐ……!」
そうして神徒は鎖でぐるぐる巻きになりその場で倒れこんだ。
「さて……皆と合流しないと……」
私は神徒が向かおうとしていた扉に手をかけ、次の部屋へ移った。
・・・
・・
・
――最奥 異色の扉前
「勇者殿。早くシア様のシールドを解いていただけませんか?」
扉を見ながら一人の男が勇者に話しかける。男の頭上には刺々しい黒い輪っかが浮いている。それは天使の輪の様に男の頭上にとどまっている。
そして、その男の横にはガリガリの骨と皮しかないような老人が椅子に腰かけている。
「断る」
魔王の鎖と呼ばれる呪いの鎖で手足を縛られたシンセは静かに答えた。
勇者の横には同じく鎖で縛られ、気絶したシアの姿があった。
「まったく……強情な奴じゃ……」
かすれた声で老人は話した。
「何を言っても私はシールドを解除しない」
「ならば殺せば解除されますかな?」
そう言って男は斧を持って勇者の方へと振り向いた。
「……本当に油断したよ……まさか君がこんな事をするなんて思わなかった。今でも信じたくないよ……」
「これが現実ですぞ。勇者殿」
「シアにもこんなひどい事をして……何も思わないのか?」
「ええ。シア様も大切な魔王族ですが、人物には優劣があるのですぞ」
その男の表情は変わらない。冷酷な顔をしている。
「その横の老人……魔王か」
シンセは腰かける老人を睨みつけた。すると、老人は杖でカンと地面を小突いた。
「ふぉっふぉ。このような醜い姿でもわかったか。さすが勇者じゃ。我と対峙しただけある」
深く被ったローブの奥から赤い目が光った。
「鎖が解けたら今のお前など一太刀だよ」
「そんな事は吾輩がさせませんぞ!」
そういう男の姿にシンセの目には涙が浮かんだ。
「頼む……目を覚ましてくれよ……ガウレス!!」
・・・
・・
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