40話 たこやき

――ぷるんっ!


「な! 何でこんな場所に……Bランクのチューイースライムが!? さすがにまずい……!」


 グートは汗をかきながら非常に焦っている。

 ブルーラインウルフも少し怖気づいている様子だ……。

 が、私はそのスライムに見覚えがあった。


「たこやき!」

「あ! おい! 危ないぞ!」


 私はそのスライムに飛びついた。


――ぷる!


「あれ……敵意を感じねぇ……」

「グート、大丈夫だよ。この子はたこやき! 家で飼っている魔物なの!」

「ドラゴンも居てチューイースライムの居るのかよお前の家……どうなってるんだよ」

「まぁ私が飼ってるわけじゃないんだけどね……でも、たこやきなんで一人で……」


 よく見ると、たこやきは結構汚れている。焦げ付いたような部分もある。


「とにかく、たこやき! 身体を拭いてあげるよ。おいで!」


 たこやきは素直にみなもの方へと寄り添った。


「凄いな……スライム種がここまでいう事を聞くなんて……」


 グートはたこやきが登場してから驚きっぱなしだ。


「それにしてもたこやき……シアはどうしたの?」


 スライムはその言葉に反応したように飛び上がり、移動をし始めた。


「あ、たこやき! ちょっと待って!」


 私はそのまま荷物をまとめ、たこやきを追った。


「あ、おい! どこ行くんだよ!」


 グートもつられて荷物をまとめて私の後を追った。


・・・


「おい、説明しろよ。こっちは魔王城の方面だぞ?」

「あ、そういえば何も言ってなかったね……」


 私は歩きながら状況を伝えた。

 お父さんとガウレス、シアが行方不明で多分魔王城付近に居るという事を。


「なんでまたそんな場所に……」

「わからないの。とにかく危険かもしれないからグートは一緒に来ちゃダメだよ」

「は? 危険ならなおさら一緒に行ってやるっての」

「え! でも……」

「おまえなぁ。そんな話を聞いて後で死んだとか聞かされたら胸糞わりぃだろ。俺達の方がお前より遥かにつええから安心しろ」

「うん……ありがとう」


 私はグートがついて来てくれる事にかなり安心感を覚えていた。


「さて、考えたくねーが戦闘場面が発生するかもしれねえ。お前、魔法は何色だ? 何が出来るか教えてくれ。連携に生かす」

「え! えっと私は……」


 黒色って……他人に行ってもいいものなのかな!?

 というよりそもそも魔法って私一つしか使えないしどうしよう……。


「どうした? ちなみに俺は青だ。基本的に俺の魔法で相手を拘束して、ウルフに始末してもらう事が多い」

「私は……その……」

「なんだよ。ハッキリしないな! そんなに言いたくないのか?」

「グート! 誰にも言わないでね?」

「当たり前だろ。さぁ教えてくれ」

「私は……黒色なの」


 グートは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに元の顔に戻った。

 どういう感情だったのだろうか……。


「黒色か、珍しいな。何が使えるんだ?」

「えっとぉ……魔法はまだ一つしか使えなくて……」


 私は今自分が使える魔法の詳細を伝えた。


黒色魔法:レジストレント

使役した魔物の耐性を借りる。借りられるのは一体のみ。

魔物が死ぬか、別の魔物に変えた場合、最初の魔物の耐性は消える。


「……だけ?」

「う、うん……」


 グートは少しだけ考えこんだ。


「とりあえず、そこのチューイースライムにそれ使えないのか? 使えるならお前自身かなり耐性が強くなるはずだ」

「さっきも言ったけど、私が飼ってる訳じゃなくてさ……パートナーにならないと出来ないの」

「そうなのか? どう見てもお前に懐いているのにな……それに家で飼っててなおかつ、元の飼い主が行方不明状態なら今だけお前が一番じゃないか?」

「1番?」

「魔物にとって、家族はパートナーみたいなもんなんだよ。まぁそんな判定でその魔法が使えるかは知らねーけどさ……」

「なるほど……ありがとう! とりあえず試してみる価値はある気がするよ!」


 そういって私は、たこやきに手をかざした。


――ぷるんっ


・・・

・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る