39話 野営地

「……私もばかぁー! もっと頻繁にマップを見なさいよぉー!」


 みなも、絶賛迷子中。


「真っ直ぐ進むだけだからってどんどん進んでたけど……真逆だったなんて……しかも真っ直ぐ進めてないし!」


 マップを開きながらみなもは叫ぶ。もはや文句しか出てこない。


「そもそも、この自分の場所を指すマーク! 二等辺三角形だったらさ! このてっぺんの頂角が自分の向いてる方向と思うじゃん! 何で逆なのよ!」


――ガサガサッ


 突然横の茂みが大きくが動いた。


「ひっ……何か居る……!」


 みなもはすぐに態勢を整え、臨戦態勢に入った。これでも小学生の時は空手を習っていたのだ。


「だれ!」

「あ……?」


 茂みから現れたのはブルーラインウルフと見覚えのある顔だった。


「グート!」

「誰かと思えば、みなもか」

「はぁーよかった……」


 私は安堵感からか腰が抜けてその場に座り込んでしまった。


「てかお前! 何でこんな場所に居るんだ? 危険だから一緒に来い!!」

「ちょっと待って……腰が抜けて私……」

「ったく……世話のかかる奴だな」

「ひゃ!」


 そう言うとグートは私を担いだ。


「え! ちょっと!」


 私が何かを言い切る前にグートはウルフの背中に私をぽいっと乗せた。


「いてて……なんて雑な……もっと優しくしてよ!」

「うるさいな! 助けてやってるんだから文句を言うなよ!」


・・・

・・


「ここは?」


 グートに連れられてきたのは、古びたキャンプ場のような場所だった。

 小さな木の小屋が二つ、中央には石で組まれた焚火が設置されていた。


「ここは冒険者の野営場所だ」

「へー」


 グートは焚火に火を灯した。


「こんな場所があったんだね」

「ああ。各地にこういった野営場所はあるぞ。まぁ、最近はテイマーくらいしか使わないけどな」

「へー……」


 私はとりあえず小屋の中や周囲を見渡した。


「そういえば、グートはなんでこんな場所に? しかも一人だよね?」

「俺はこの辺に出現するっていう[クリスタルスネーク]をテイムしにきたんだ」

「ほえ~聞いた事無い魔物……」

「全身が水晶で出来た蛇だ。Cランクの魔物だな」

「C?」

「お前……魔物のランクも事も知らないのか」

「えへへ……恥ずかしながら……」

「ざっくり言うと、魔物は強さでランク分けされている。S・A・B・C・Dとあってそれぞれ+と-がある」

「ほ、ほう……」

「例えばお前が乗っていたドラゴンはランクA、俺のブルーラインウルフはランクD+だ」

「ほうほう。ってブルーラインウルフでD+なのにそれより強いって事!? クリスタルスネークってのは……危ないよ!」

「お前に心配されるとはな! 全く問題ねーよ。俺のブルーラインウルフはその辺の奴より遥かに成長してる。ランク以上の実力はあるな。それに俺自身もしっかり魔法を使えるしな」

「流石だね。グート……」


 魔法も使えて魔物もしっかり従えてて……私とは大違いだね……。


「さて、俺の居る理由は言ったけど、お前は何でこんな所に居る!? 魔物も連れずにたった一人で!」

「あ、私は……」


 そう言いかけた瞬間、突然グートは私の目の前に移動し、守るような態勢を取った。


「え? グート?」

「静かに……何か来るぞ」


 グートは真っ直ぐ茂みを凝視している。

 

――ガサガサッ


「みなも! 下がれ!」


 茂みから何かが飛び出した。

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