36話 黒色の魔法

「耐性は細かく言うと何種類もありますが……それを自分にも適応できるのですよ!」

「ほ……ほう!」


「さっき言った[マグマゴーレム]をもし仲間にし、[レジストレント]を使用した場合、みなもさんの身体は灼熱に耐えられるようになります」

「ええ!? 例えば釜戸に手を突っ込んでも暑くないとか?」

「そうですね。それどころか溶岩に入っても大丈夫ですよ。借りている間はですが……」

「すごい! でも代わりに私がゴーレムの姿になったりするとか……?」

「いえいえ、借りて纏う様なイメージですので、姿は変わりません」

「へー!」

「なので! 暑さに強い魔物を仲間に出来れば、この暑い状況も何とか出来るかもしれませんよ!」

「おお、そう言う事! 凄い、早速覚えたい!」

「ふふ、食いつきが良くてやりがいがありますね。これでやっと魔法修練の勉強に入れます!」

「私も……ついに魔法を覚えられるのね……!」

「シアさんにもこの魔法、大きくなったら教えようと思ってるんです。チューイースライムにレジストレントが出来れば、打撃耐性と魔法耐性がつきます。最強ですよある意味」

「私もチューイースライムを仲間にしたい……てかシアのスライムには出来ないのかな!?」

「無理ですね。あくまでもパートナーにしか発動しません」

「そうだよね~てことはナブートにも出来ないのね……」

「ええ、仰る通りです。ナブートもブルードラゴンですので、灼熱耐性はもちろん氷結耐性も高く、斬撃と打撃耐性もあるので並大抵の攻撃は弾くでしょうね」

「つ……強い」


 でも、この魔法をしっかりと使える様になったら、少なくとも自衛は出来るようになりそう。

 襲われても耐える事が出来る。とっても凄いよね。

 その為には強い魔物を仲間にしないと行けないけど……。


「とにかく、その魔法を使えるようにならなくちゃ! 先生ご指導をお願いします!」

「ええ。もちろんですよ」

「その前に耐性について今一度整理しましょう」

「はーい!」


――――


耐性は大きく分けて5種類ある。


灼熱耐性:耐性が高いと焼けたり燃えたりしなくなる。

火遊びしても怪我する事がない! 料理の時。熱い物を素手でひっくり返せる。暑さに強くなる!


氷結耐性:耐性が高いと凍ったりしない。

アイスを食べてもキーンとしない! 氷をずっと手で持っても平気! 寒さに強くなる!


打撃耐性:耐性が高いと叩いたり吹き飛ばされたりしても傷がつかない。

吹き飛ばされた後、地面に小石があると刺さって痛い。高いとこから落ちてもある程度なら平気!


斬撃耐性:耐性が高いと切ったり突いたりされても傷がつかない。

風切りの森を一人で歩ける。料理の時指を切らなくなる。


魔法耐性:耐性が高いと魔力を帯びた技が効かなくなる。

魔法を撃たれる機会はあるのだろうか……。


――――


「耐性について、具体的な例を挙げると分かりやすいでしょう?」

「うんうん! 全部欲しくなっちゃうね耐性!」


(何というか、みなも様らしい具体例ですね……)


「ちなみに魔法を撃たれる機会についてですが……戦うとしても相手は魔物なので殆ど無いと言っていいでしょう」

「え! そうなの?」

「ええ、魔法は言語を介さなければなりません。話す事が出来る、高度な知能を持つ生物しか使えませんから、魔物には使えないのです」

(超高ランクの魔物と魔王族は別ですが……)


「なるほど……ナブートも魔法は使えないのね」

「ええ。魔法は使えませんが、普通に火とか吐きますけどね」

「成程……ならその火は魔法耐性があっても防げない訳ね……」

「ええ。そう言う事ですね!」

「やば! 結構私賢くなってない?」

「ええ。大変良く出来ました。みなも様」


 そう言いながら先生は頭を撫でてくれた。


「えへへ……」


 興味のある事だったら本当によく覚えられるな私! この調子で魔法の実戦もさくっと出来そうね!


「では早速、実技と行きましょうか。外へ出ましょう」

「待ってました!」


 そうして、先生と私は中庭の方へと移動した。


・・・


「どうですか? 取り込むような感覚はありますか?」

「むむむ……全然ないです……!」


 早速修行? を始めたんだけど、いきなり躓いている私……。


 両掌を前方に突き出し、手全体で空気中の魔力を感じ取る。

 これは出来たんだけど、それを取り込むってのが出来ない!


「ふむ……使える色によって取り込み方に個性は出るのですが……全くできないと言うのは初めて見ます。黒色の特徴でしょうか……」


 先生も驚きを隠せないまま頭を悩ませている。


「ちょっと勇者様に見てもらいましょう!」


 そういって先生はお父さんを呼びに行った。


・・・

・・


「ふーむ……お父さんと同じ感じだ」

「同じ感じって、全然取り込めないって事?」

「うんうん。白色魔法を使う時は漂う魔力に頼らず、己の内にある魔力のみを使うんだ」

「なるほど、白と黒は特殊な色……その辺は似た性質なのかもしれませんね……」

「私の中に魔力ってあるの……?」

「ええ勿論です。外の魔力が使えない分、燃費が心配ですが……よし、こちらの実技を先にしましょう!」


 そういって先生は一本の枝を取り出した。


「枝?」

「そうです。魔力の木の枝です」

「ほお!」

「葉っぱはすぐに反応しますが、枝になると相当の魔力を込めなければ反応がありません」

「ふむふむ」

「本来なら、しっかりと空気中の魔力を取り込んでから枝に込めるのですが……みなも様はその前準備無しにしなければなりません」

「え、でも取り込まなくて、すぐできるなら早くて良いね!」


「ええ、やってみましょう……」

(基本的に外と内、両方の魔力が無ければ魔法は発動しません……魔力の総量が足りないのです)


「とにかくやってみるよ!」


(自身の魔力の総量は増える事が無い……内包した魔力だけで足りなかった場合、取り込む修行をして取り込める量を増やすのですが……)


「いくよ……!」


(みなも様はそれが出来ない。足りなければ魔法を使う事が――)


――シュゥゥ……


「――なッ!」


 私の握った枝は音も無く真っ黒に変色した後ボロボロになり、消し炭となった。


「な……無くなっちゃった……!」


 先生とお父さんは驚いた顔をしている。


(流石、勇者様の娘さん……! 驚くべき量の魔力を内包している……)


「あの、先生? これは大丈夫なんですか……?」

「大丈夫どころか素晴らしい魔力の量ですよ! ね、勇者様!」

「ああ、正直驚いたよ……魔力の量だけで言ったら、お父さんより多いかも……」


「そんなになの!」


 お父さんより魔力が多い……けどお父さんみたいに色々な魔法を使えない!

 私にそんな多くの魔力が宿っても活用できるのかな……。


「これは教え甲斐がありますね……」


 先生の目の色が少し変わった気がする……。

 とにかく! 魔力の量は問題ないようだ!

 

 引き続き、魔法の授業は続く……。

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