35話 暖気
――ミュインミュインミュイーン……
「暑いぃぃぃ」
セミ……っぽい何かの鳴き声が外で鳴り響く。
気温も段々と上がっているのは分かっていたが日本の真夏位まで暑くなるとは……。
「湿気も凄いし、まるで日本の夏だよぉ……」
「すっかり暖気に入ったね」
「あ、お父さん! 所でクーラーは無いの? 暑さで死んじゃうよ!」
「こっち世界には夏の様な暖気、そして冬の様な寒気がある。もちろん、春と秋もね」
「へ~四季があるんだね、この世界にも……クーラーは無いの?」
「あと、12ヵ月で区切られているから分かりやすいね!」
「いやクーラーは!?」
すると、お父さんは私の顎をくいっとしてきた。
「みなも、すまねえ。この家には無いんだ」
「レ、レン様……じゃない!!」
お父さんは最近、たまにこういう事をしてくる……。
くそ! その度にきゅんとしてしまう私! 悔しい!
見た目と声に騙されてはいけないぞ私!
「ただちに設置しようよ! お父さんだって暑いでしょ?」
「それがこの世界にクーラーは無くてね……ごめんよ。お父さんも凄く暑いけど頑張る! だからみなも! 一緒に頑張ろう! ね?」
「わ……わかったよ……」
暑いという割には全く汗を感じさせない。
こんなに暑いのにローブを纏ってるし……。
「勇者殿! 今日はいい暑さですな~。あ、勇者殿はセーフティオーラが使えるのでしたな! 羨ましいですぞ!」
「お父さん……何それ……?」
「え? あはは……」
緑魔法
セーフティオーラ
自身の周囲を快適な状態にする。
「ずるいよお父さん!」
「ごめんよ……これ、他者に掛けれたら良かったんだけどね……」
「みなもも覚え……られないんだよね。くそー! 黒色魔法にそんな魔法は無いの!?」
「ありますよ」
クリウェ先生がいつの間にか来ていた。今日は勉強の日だ!
「先生!? 黒色魔法にもそんな奴があるの!!」
先生は私が近づくと、赤い顔で目を逸らし両手を前に突き出した。
なんで!? 嫌われちゃったのかな……!
「ええ、その前にみなも様……その薄着の格好を着替えてもらえませんか……」
「あ……」
そういえば上はインナーだけだった……。
・・・
・・
・
「えへへ、先生も薄着の女の子を見たりしたら照れるんだね! 顔を赤らめて可愛かったよ!」
「当たり前です。特にみなも様みたいな美しい人なら尚更ですよ」
「え!?」
先生は真っ直ぐな瞳でこちらを見ながら言ってきた。
その瞬間、自分でも分かる位顔が赤くなった。
え! 先生私の事美しいって……もしかして!
「ふふ。これでおあいこです」
先生はそっと人差し指で私の頬に触れた。
おあいこってそう言う事ですか……!
「先生のイジワル……」
「さ、勉強を始めますよ!」
「ふぁーい……」
そうして本日のお勉強が始まった。
「正直、私もまだまだ分からない事だらけです……黒色魔法は文献などもほとんど無く……」
「使い手が居ないんじゃしょうがないよね。魔王に聞くわけにもいかないし……」
「そんな中で一つだけ分かった魔法が今回の魔法なんです」
黒色魔法:レジストレント
使役した魔物の耐性を借りる。借りられるのは一体のみ。
魔物が死ぬか、別の魔物に変えた場合、最初の魔物の耐性は消える。
「魔物の耐性を借りる……?」
「ええ。例えば……溶岩地帯に生息する[マグマゴーレム]という魔物がいます」
「ゴーレム……!」
「この魔物は灼熱耐性が高く、氷結耐性は全くありません」
「ええと……灼熱耐性があると燃えたり焼けたりしなくて、氷結耐性が凍ったりしない……だっけ?」
「そうです! 我々は基本的にこういった耐性を持ち合わせていません」
「そうだね、燃えるし凍るし切れるし……人って本当に脆いよね……」
少しだけお父さんが撃たれた事を思い出して、少しセンチメンタルになったみなもだった。
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