34話 学園について

――自宅にて


「クリウェ先生! 第一神国学園ってどんな所?」

「第一ですか。まぁ簡単に言うと、学校ですね」

「学校! って事くらいは分かるよ!」

「ふふ、そうですよね。この中央神国には神国学園という学校があるんですよ」

「ふむふむ」

「学園には第一から第六まで計六つの学園が存在します」

「へー!」

「で、第一というのは最難関であり超名門校です……神徒にもっとも近い存在ですね」

「神徒……神直々の命令を遂行する者ね……」


「ええ、とにかく天才や英才などと呼ばれる……選ばれた者しか入学できません。誰しもが一度は夢見る神徒……先生も若い頃はなりたかったですねぇ」


 ということはグートもそう言う類の奴って事なの……! というより、神徒になりたいって先生……神ってあんな奴なのに……。


「ほえー……神様の命令を聞くなんて大変そうじゃない?」

「何を言うんですか! 神様を直接目にする事が出来る上に命令までして頂けるのですよ?! これほどの幸せが他にあるでしょうか」

「そ、そうだね……!」


 中央神国というだけあってこの国の人はほぼ全員神様を信仰している。

 信仰の度合いは人それぞれだろうけど、神の教えが書かれている神書の内容は皆漏れなく知っているレベルだ。

 私はクリウェ先生にみっちりと教えられた……。


 でも、神徒って本当にすごい人しかなれないんだね。

 神の命令……あれ? たこ焼きの作り方を教えろとか色々命令を聞いてる私ってもう神徒では……?


「話がズレましたね。とにかく世界一の学園という事は間違いないですよ」

「ほー。先生! 私も行けるかな?」

「……」


 先生は沈黙した。何とも言えない表情で。


「みなも様が第一神国学園に……? 勇者様のコネでいけなくも……いやしかしそれでは……」


 先生は小さな声でブツブツ言っている……。


「あの……ぼそぼそ何言ってるんですか先生?」

「あ、いえ! とにかく、今からでも一生懸命勉強すれば入学出来るかもしれませんね!」

「ふむふむ」

「みなも様、学園に通いたいのですか?」

「うーん、選択肢の一つかな! 私もここで暮らしていく以上、お金を稼げる技術を身につけないと!」

「素晴らしいです! その齢でもう将来の事をしっかりと考えているのですね」

「え! そんな大層なものじゃないよぉ~」

「みなも様がどんな道に進むのか楽しみですね。私も出来る限りご助力いたしますよ」

「先生ありがとう!」


――自宅 風呂場にて


「ふう~」

「お姉ちゃんどうしたの?」

「ん~? 何でもないよ! さ、頭を洗ったげるよ!」


 何でもない……と言えば嘘になる。

 そういえばここに来る前、私は何になりたかったんだっけな。


(そういえば……シアの角、少し大きくなっているような……)


「お姉ちゃんいつまで洗うの!」

「あ、ごめんよ! 流すね!」

「そだ! シアはさ……将来なりたい職業とかある?」

「シアは勇者になる!」

「なるほど! す、すごい夢だね!」


 魔王の子供が勇者に……それはそれでありだね!


「たこやきといつか冒険するんだ。お姉ちゃんも一緒に行こうよ!」

「冒険……ふふ、楽しそうね!」

「んでお宝を見つけてみんなにプレゼントしよう!」

「うんうん、そうだね! さ、お湯につかって60数えたら出るよ!」


 何この子可愛すぎる! シアと冒険も楽しそうね! 魔物が出るだろうけど……。

 

「お姉ちゃん! ガウレスから60以上の数字を習ったぞ!」

「おお凄いね! じゃぁ習ったとこまで数えてみよう!」

「うん! いち……にい……」


 こっちに来てから色んな事が起きて楽しいな。

 なんだかんだで来て良かった!


・・・

・・


「ひゃくにじゅうはち……ひゃくにじゅうきゅう……」


「シ、シア……どこまで習ったの……私もうのぼせ……」


 シアのカウントはまだ終わりそうにない……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る