33話 講習終わりに

「あの、グート君? 貴方は学ぶ側なのでこちらではなく……」

「ドラゴン種ってのはな! 一人にしか懐かねーんだよ!」


 グートの奴、テンションが凄く変わった……そして、講習の先生が不憫でならない……。


「うちの爺さんもドラゴンを飼っていたけど、じいさんが死んだ瞬間、居なくなった……爺さん以外はあいつにとってどうでも良かったんだ」


 グートの目から一瞬涙が見えた様な気がした……。


「爺さんのドラゴンは……爺さんの命令だったから俺や両親を守ってくれたり仲良くしてただけだった。だから俺は……本当のドラゴンの仲間を作る、ドラゴン使いになるんだ!」

「……」


 いや……急にどうしたのこの子!? 情緒不安定で怖いよ!


「おい、みなも! 分かったか!」

「え! あ、うん!」

「ならいいんだ」


 そういってグートは席に戻った。

 表情を見るに、俺は何を言いたかったんだっけって感じだよ……。


「こほん。では講習を始めますね」

「よろしくお願いします!」


 そうしてやっと講習が始まった。


・・・

・・


ペットを飼うにはテイマーライセンスが必要。

ライセンスには階級があり、階級によって飼える魔物や動物が変わる。

基本的に上位に成程なんでも飼えるようになる


ランクについて

合計6種のランクに分かれており、下に行くほど階級が高く、飼える魔物や動物の種類も多くなる。

ホワイト

ブロンズ

シルバー

ゴールド

プラチナ

ダイアモンド


自身のランクより上の魔物を飼っていた場合、魔物は施設送りになる。

(動物も同じ)


元々はライセンス制度などなかった。

そのせいで心無い飼い主が捨てたり、ルールを守らずに放し飼いにするなど色々なトラブルが絶えなかった。


ライセンス制度が始まり、そういった事は激減した。


・・・

・・


「ライセンス制度出来て良かったぜ本当に……」

「そうだね~」

「みなもに言ったわけじゃねぇ。いちいち反応すんな」

「そんなでかい独り言ある?! 心の中で言いなよ。私に言ったと思ったよ!」

「……くそ。お前がドラゴン乗っていたなんて信じられねえよ」

「なら帰りに見てみる? なんなら乗せてやってもいいよ?」

「ほ、本当か――」


 グートの目は一瞬輝いたが、すぐに顔をプイっとした。


「ばかか? ゴールドじゃねーのに乗ったらまた違反だろ。何を学んだんだよ」

「わかってるわよ! グートに言われるとなんか腹立つな……」

「さぁおしゃべりはそこまでですよ! 違反者講習は終わりです。もう違反しない様にね!!」

「はーい」

「わかってるって」


 そうして二人は講習室を後にした。


・・・


「ナブートに乗れないから歩いて帰らないと……ゴールドライセンス目指すしかないね……!」

「なぁみなも」

「なに?」

「みなもはどこの学校でテイマーの勉強してるんだ?」

「えっと……テイマーの学校には行ってないよ?」

「は? 独学でホワイトライセンスを取ったのか!?」

「ふふん、その通り!」

(とは言ってもチートのおかげだけど……)


「少しはやるようだな……! でもお前、どうするんだよシルバー以降」

「え?」

「ゴールドとるには指定学校の推薦状がいるだろうが」

「そうなの?!」


 それは予想外だ! 学校何て行ってないしど、どうしよう……。


「グートはどんな学校に行ってるの?」

「俺は第一神国学園のテイマー科に行っているぞ!」

「ほ~」

「いや! 反応薄くて腹立つな! 1神校だぜ?」

「ごめん……その辺について全然知らなくてさ……」

「なんだよそれ! まぁ良い……とりあえず、そろそろ帰るわ。俺」

「時間も遅くなってきたもんね」

「もう会う事もねーだろう。じゃぁな」


 そう言われると確かにそうなんだよね……折角同い年位の人と出会えたのに、なんだか寂しい気もするね。むかつく奴だけど……。


「そうだね……ばいばい」


 グートはじっと私をみて、口を開いた。


「……まぁゴールドライセンス位になったら嫌でも会うかも知れねーけどな! まぁお前には無理だろうけど!」


 その顔は少しだけ赤らんでいた。


「いちいち辛辣な奴ね……!」

「ふん、じゃぁな!」


 そういってグートはブルーラインウルフの背に乗って帰っていった。


「……ってあいつ、いきなり違反してるじゃん!!」


「……」

「ナブート!」


――グォォォ


 どうやって帰ったかは内緒という事で♪

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