6話 エルフの国

――エルフ国 城前


「ごめんよ、みなも……遅くなっちゃったね」

「ううん! 大丈夫だよ!」

「さぁ、入ろうか」


 そうして私達は城へと入っていった。


「ようこそおいでました。勇者様」


 城を入ってすぐに、執事の様な人が現れた。

 執事ってダンディーなおじさまを想像するが、この執事はエルフだからか若々しくて凛とした顔つきだ。


「突然ごめんね。セバス、国王は居るかい?」

「申し訳ありません……先週から遠征に出ておりまして……しばらく不在が続くかと」

「そうだったんだね」

「ですが、食事と寝床はご用意できますので本日はどうぞお泊り下さい」

「いや……と言いたい所だけどお言葉に甘えるよ」

「ええ、是非そうしてください。ところでその方は……?」

「ああ、私の娘だよ」

「おや、この方が良く言っていた自慢の娘さんですか」

「あはは、本人がいるのに恥ずかしいな……みなも、この方は国王のお付きの方……セバスさんだ」

「セバスさん……初めまして! 私はみなもっていいます!」


 私は元気よくセバスさんに挨拶した。

 第一印象は大事だからね。


「元気があって良いですね。可愛らしい方です」

「ええっ! いや……そのぉ……」


 セバスは私に笑いかけた。

 そしてきょどってしまう私……しっかりしないと……。


「ではこちらでお待ちください。食事の用意を致しますので」


 そういってアニメとかでしか見た事の無い長ーい大理石のテーブルへと誘導された。


「すごい……リアルにこんなテーブル有るんだ。いや、リアルと言っていいのかな……?」

「あはは、みなもはお父さんの初めてと同じ反応だね。凄いよね。流石お城だよ」

「うんうん、てかお父さん?」

「どうしたんだい?」

「何で勇者って呼ばれてるの? 能力が勇者だから?」

「うーん……そうだね。気がつけばみんながそう呼んでくれてるんだ」

「何を言っているのですか勇者様。貴方は魔王を倒したお方……勇者と言わず何と呼びましょう」


 二人で会話をしていると、セバスが他のメイドさんと共に食事を運んできた。


「魔王を倒した?! え? お父さんが!?」

「おや、話してなかったのですか? 勇者様」

「そういえばそんな話はまだだったね……」

「だから町の人もあんなにお父さんの所に……! 凄すぎるよ! お父さん!」

「あはは、ありがとう、みなも」


 横にいるお父さんが勇者……全然実感が沸かないけれど、これ……とんでもなく凄い事だよね……。

 でも、あんなに大きな家に住んでたり、国王と知り合いだったり……勇者だからと言われて納得できたような気がする。


「ところで……北部の方に少し魔物の気配がするが……」

「やはり分かりますか、勇者様……そうですね。洞窟付近で繁殖してしまったようで……国王も遠征中なので少々て手間取っております」

「そうか……では食事のお礼にそこは私が片付けておくよ」

「本当ですか! 感謝いたします……!」

「他に困りごとはないかい?」

「ええ……実は……」


 そんな感じで二人は打ち合わせの様な事をしていた。

 私はご飯に集中している訳だが……。

 普通に美味しくてびっくりしている。今日食べている食事はまるで高級フレンチだし……。

 今日の中で一番おいしかったのは大きなエビの様な魚介類だ。

 日本で食べたエビより遥かにぷりぷりで濃厚な味で感動だ……。


「みなも、ちょっとセバスと出かけてくるよ。数時間もすれば帰れると思うから、先に休んでおきなさい」

「こんな夜に!? 気を付けてね……」


 さっき話をしていた魔物の討伐に行くのだろうか。

 少し心配だけど、お父さんは凄く強いっぽいし、大丈夫だよね……。


「じゃぁ行ってくるよ」

「うん。行ってらっしゃい!」


 そうして二人は出かけて行った。


「では、みなも様こちらで御座います」

「あ、はい!」


 そういって私は客室の方へと案内された。


「では、何かありましたら呼んでくださいませ」

「はい! 有難うございます!」


「綺麗な部屋だな~。あ、本がある」


 部屋を見渡してみると、ベッドの横に本棚があり、本がたくさん置いている事に気が付いた。

 みなもは何気なく1冊の本を手に取ってみた。


「何々……[勇者物語]……」


 みなもは何気なくその本を手に取り読み始めた。


――


 旧暦95年、神の加護を受けし勇者……彼は突然、中央神国に現れた。

 ボロボロに疲弊していたドワーフ、エルフ、獣人の国を救い、各国で出会った3人の仲間と共に魔王討伐の旅を続けた。


(中略)


 そして……たった5年で魔王討伐という伝説的な偉業を成し遂げたのだ。

 その後、仲間たちは各国に戻り、王となり国の復興に尽力を注いだ。

 旧暦100年……この年を節目とし、新たに新暦として呼ぶ事となった。(新暦0年)


(後略)


――


「あれ……そういえばこの文字全然読めるな……身体が変わった時に知識も備わったのかな……」


 というより……この勇者ってお父さんの事だよね?

 5年ってなってるけどお父さんが亡くなったのは2年前……時間が合わない……。


「あのすいません」

「はい? どうしましたか?」

「今って新暦? 何年ですか?」

「今は新暦5年ですよ」


 メイドさんは笑顔で答えた。


「あ、有難うございます」


 つまり、お父さんはこの世界に来てから10年経ってるって事よね!?

 地球と時間の進み方が違うのかな……?

 大体1年で5年経ってる感じよね。


「にしても凄いな……お父さん本になっちゃってるじゃん」


 ごろごろしながら本を眺めている内にみなもは眠りについていた。

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