5話 お出かけ
「折角だし旅行でもしようか!」
朝食時に、お父さんは突然言い出した。
現状が既に旅行気分ではあるけど……。
「突然だね……!」
「ここは色々な国があるんだよ」
そういってお父さんは説明をし始めた。
住んでいるこの国はアラキファを敬う国、中央神国 そしてドワーフ、エルフ、獣人が住む国がそれぞれあると聞いた。
「というのも……お父さんどちらにしろ今日行かないとならない場所があるんだ」
「そうなんだね! じゃぁ私も一緒に行くよ」
「良かった!」
「ちょっと! いちいち抱きつかないでって……! それより何処に行くの?」
「とりあえずエルフの国だね!」
「そこは遠いの?」
「そうだね……馬で行ったとすれば2週間はかかるけど……」
「馬……!」
「ゲートを開けば2時間ほど歩いたら着くよ!」
「そのゲートって魔法? 便利だね……みんなそれで移動するの?」
「うーん……使えるのはこの世界ではお父さんと神だけかな?」
「え……」
何それめちゃくちゃ凄くない?
と思ったけどあえて何も言わないみなもであった。
・・・
・・
・
――エルフ領 郊外
「うわー綺麗な場所だね!」
「そうだろう? この森の香りはいつ来ても素晴らしいよ」
「だね~落ち着いた緑の森でお昼寝とかできそうだよ~」
「でも、魔物は出るから気を付けてね?」
「魔物!? そっか……そういうの出るんだねこの世界は……」
いまだに魔物の姿は見ていないが、どんな奴がいるんだろう?
この際、魔物でも良いからイケメンにモテたいってものだよ……。
淡く青色に光る広葉樹に囲まれた道を二人で進んでいる。
「てか、直接国には飛べないの? ゲートって」
「普通の人が近くにいると飛ぶことが出来なくてね……だからお父さんたちの家も周囲には誰も住んでいない郊外なんだ。それでもたまに近くに人がいるみたいで直接飛べなかったりもするね」
「へ~。超万能って訳でもないのね」
「でも、言ってる間に……見えて来たよ」
森を抜けて、お父さんは目の前を指差した。
「うわあ……綺麗な所だね……」
「あれがエルフの国だよ」
目の前には国を囲う様に樹木が立ち並び、それが門の役割も果たしているようだ。
人工的な光は無く、蛍の様な優しい光が道を照らしている。
「さぁ入るよ。王にも挨拶しないとね」
「あ、うん」
ぼーっと眺めてしまう程、心が安らぐ場ところである。
「あ! 勇者様! ようこそおいでました!」
「あはは。有難う。平和そうで何よりだね」
「ええ! おかげさまで! 我ら守備兵は暇なほどですよ」
「そういった役割の人は暇な方が良いんだ。だけど、鍛錬を怠っては行けないよ?」
「ええ! もちろんです! さ、門が開きました。どうぞお入りください」
会話中に兵士はせっせと門を上げていた。
そのまま二人で門をくぐり、入国した。
「お父さん、あの兵士さんとは知り合いなの?」
「え? いや、初めて見る顔だったね」
「でもお父さんの事は知ってたよね……?」
その瞬間、酒場らしき所から一人のエルフが出てきた。
(うわぁ、すっごいカッコいい人だ……というか、ここに居る人達みんなイケメンじゃない!!)
そんな事を思っていると、出てきたエルフはお父さんの前に酒を持って現れた。
「勇者様! どうですか一杯! 良質な樹液糖酒が出来たんですよ!」
「いいね! でも今はダメだ。国王に会う前だからね」
「そうかい! なら一本持ってってくれ!」
「ええ、いいのかい……?」
「国王と一緒に飲んだらいい! それに勇者様も絶賛の酒って宣伝ができるしな!」
「あはは。ちゃっかりしてるね。ありがとう! 頂くよ」
そんな会話の後も……。
「勇者様、今日も凛々しいお姿で……」
「ゆうしゃだー! ねぇサイン頂戴ー!」
そんな声が道中絶えないのだ。
お父さんはその声に全て対応しながら進んでいた。
気づけば、辺りは薄暗くなっている。
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