4話 思っていた能力と違う

「さぁそこに座れ」

「はい……」


 アラキファは私を椅子に座らせ、額に手をかざした。


――シュゥゥ……


「完了だ」

「え? もう終わり?」

「ああ、代わりに! シンセの好きな食べ物を教えろ。シンセ、自分の話は一切してくれないんだよ……」

「ええ、でも私の書いた願いとかちゃんと……なってるの……?」

「もちろんだ。ここに描いている通りの能力を貴様は得ている」


 そう言って、最初に書いた紙を私に手渡してきた。


「実感ないけど……書かれている通りになって居れ――ば!?」


 私はそこにかかれている文字を改めて見た。

 そこには……


「イケメンからちやほやされモテモテになりたい……(魔物)!?」


 なんか不要そうな文字が増えてるんですけど!?


「あの、アラキファ様……私の書いたものと少し違う様なのですが……」

「最後の二文字が無ければ……」


 アラキファは私に指差しながら真剣な表情をした。


「僕も貴様を好きになってしまう可能性がある。考えただけで反吐が出る。なので改変した」

「えー!!」

「嫌ならその場で粉々になるか死ね」

「いやどっちも死ぬじゃんそれ!」

「さぁ早く好きな食べ物を教えろ!」

「えー……でもちゃんとやってくれてないし……」


 そう言った瞬間、アラキファは私の顔を掴んできた。


「貴様……調子に乗るなよ? 加護は言われた通りにした。だが、能力付与に関しては何も言っていないだろう?」

「はい……調子に乗ってずいまぜん……」

「分かればいいのだ。さぁ好きな食べ物はなんだ!」

「お父さんはたこ焼きが大好きだよ。たこ焼きの材料を自分で買って家で作ってたくらいだし……」

「ほう……よくやったぞ。じゃぁ用件は済んだな? 帰れ」

「ええ……まぁ帰りますけども……」


 そういって素っ気ない神は置いといて……私は扉を越えて帰っていった。


・・・

・・


「お、みなも! どうだった?」

「うん……何とか無事に終わった……かな?」

「なんだか納得していない感じだね……?」

「ううん! そんな事無いよ! さ、お家に帰ろ! 今日はなんだか疲れちゃったよ」

「ああ、そうだね。荷物も整理できてないし今日はそれを片付けて、ゆっくりしよう」


 お父さんはその場でゲートを開き、私達は一瞬で家へと帰って来たのであった。


・・・

・・


「みなもの部屋なんだけど……ここで良いかな?」


 そういってお父さんに案内されたのは、50畳ほどの部屋で机やベッドなど必要な物をあらかた揃っていた。


「広すぎるくらいだよ……ありがとう! 家具とははお父さんが全部用意してくれたの?」

「ああ、そうだよ。 みなもの趣味が分からないからとりあえずシンプルなもので統一したけど……気に入らなかったら言ってね」

「ううん、すごく気に入った! ありがとう!」

「よかった」


 お父さんはそう言ってほほ笑んだ。

 もちろんレン様の顔でだ……惚れてしまうわ!


「じゃぁ軽く家の説明をしておくね」


 そういってお父さんは風呂場やキッチン、リビングなどの場所を教えてくれた。

 旅館か!? って思う程に広い……掃除などが大変そうな家である。


・・・


「はぁ~ふっかふかなベッドだぁ」


 大きなお風呂大きな部屋……最高な環境だけど……。


「スマホが恋しい……本当にこっちへ来て良かったのかな……ほぼ勢いで来たけど」


 今日一日忙しかったこともあり、そう言った事を考える隙間は無かったが、

 こういった落ち着いた時にふと前の世界が恋しくなる。

 主にスマホだけど……。


「もう来てしまったんだから前の世界の事を考えても仕方ないか。さーて! 明日から何しようかな」


 そんな事を考えている内に私は眠りについていた。

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