3話 神の加護!
「で! 何でその姿なの?」
「ああ、父さん死んだだろ? んで魂みたいな状態になって目の前には神様が居たんだ」
「いきなり非現実的な話だけど……ここに居る時点で全部信じるしかないよね……」
「で、神様に聞かれたんだ……」
「どうせなら君の思うカッコいい姿で転生しよう。さぁ、その顔を思い浮かべて」
「それでお父さん……咄嗟に思いついたイケメンがあのポスターのキャラしかなくてね……それがそのまま反映されてしまった訳なんだ」
「よりによってだね……」
「んで、その時に一緒に神の加護を授かって……あ!」
「どうしたの?」
「そうだ、神の加護! みなももそれ受けないと三日以内には死んじゃうんだ。こっちきたらすぐ神様の所へ連れて来いって言われてたんだ」
「ちょっと! そんな大事なこと忘れないでよ! お菓子食べてる場合じゃないよ!」
「そうだね。少し下がって、開くから」
「開く……?」
お父さんはそう言うと、何もない空間を指でなぞった。
すると、空間が裂ける様に開いた。
「さぁ入って!」
「何これ……こわっ」
お父さんが先にそこへ入り、私は手を引かれ続けて入った。
――シュゥゥ……
「ついたよ。神の間だ!」
「うわー……すっごい綺麗な所……」
大きな銀色の噴水がどんと構えており、見た事もない程の真っ白な壁・床で出来た空間だった。
その先には浮いたような階段が伸びており、大きな真っ白の門扉が構えている。
「いくよ」
「あ、ちょっとお父さん! 心の準備が……」
「大丈夫だよ、みなも! 神様はとっても良い人なんだ。あの人が居なければ父さんはここまで実現できなかったよ。みなもをここに呼ぶことだってね」
「そ、そうなんだね……!」
そうこう言ってるうちに門扉の前へやってきた。
「よし、入るよ!」
――キィィ……
門扉は触れる前にゆっくりと開いた。
「シンセ! 会いたかったよ!」
扉が開くと同時に綺麗な銀色髪の青年がお父さんに飛びついた。
(何この人イケメン……!)
「ちょ、神様! この前会ったばかりでしょう」
「え、この人が神様!?」
びっくりだ……まさかこの人が神様何て……。
見た目はお父さん(変身後)と同い年位……大学の同級生二人って感じに見える。
にしても……綺麗な銀髪だなぁ……。
神様って髪が長ーいイメージだけど、ツンツンヘアーの神様も居るんだね……。
「そうだよ。この方が神のアラキファ様だ」
「シンセー! 呼び捨てで良いって言ってるだろ?」
「いやしかし、神様を呼び捨てだなんて……」
「いいんだって! むしろ、様なんか次つけたら神の加護の話は……」
「いやそれは困る! わかったよアラキファ! 慣れないけど頑張るよ……」
そのやり取りと姿を私はじーっと眺めていた。
(あぁ~目の保養だぁ~……)
そう思った瞬間我に返った。
(でもこれ、お父さんと神様なんだよなぁー……)
何とも言えない気持ちになったみなもであった。
・・・
・・
・
神の加護とは!
こちらの世界へ新たに来た場合に受けられる加護である。
というより、その加護を受けなければこの世界では生きて行く事ができない。
このタイミングで身体の組織が完全にこちら側に適した身体になる。(この影響で基本的に元の世界に帰れない)
本来なら変換されるだけなのだが、神様の力で一つだけチート能力的な物をつけてくれるみたい!
「じゃぁその紙に君の欲しい能力を一つ書いてね」
「よし、書いたよ! そういえば、お父さんは何を書いたの?」
「お父さんは……人を護る為の力が欲しいって頼んだよ。護っても自分だけ死なないようにね」
「そう! それで僕は授けたんだ。勇者の能力を……! 素晴らしい澄んだ心の持ち主……たった一つしかないこの能力はシンセにこそ相応しいと思ったわけだ」
「あはは。そんな大げさな……」
「お父さん……」
「でも、能力を貰っても、完全に開花できるかどうかは自分次第みたいだよ。むちゃな願いは辞めておくんだよ」
「う……うん」
「じゃぁ預かるね」
「あっ……!」
そういって用紙を神様に取られてしまった。
「なになに……イケメンからちやほやされて、モテモテになりたい」
「きゃー!! ちょっと読み上げないでー!」
「あはは。みなもらしいね」
お父さんの立派な願いの後にこれは本当に恥ずかしい……でもこれくらいしか思いつかないし良いんだ! 自分に正直になるぞ!
「わかった。完全に意向に添えられるか分からないけれど……」
「本当!? やったぁ!」
「じゃぁシンセ、儀式を始めるから噴水あたりで待っていてねっ!」
「分かったよアラキファ。じゃぁみなも、頑張るんだよ」
「うん!」
そういってお父さんは先に門扉から出て行った。
それを見送り、神様の方へ顔を戻すと先程までには考えられないような不機嫌な顔になっていた。
「あの……アラキファ?」
「何を呼び捨てしている。アラキファ様と呼べメス豚が」
「!?」
低いトーンで冷たい声……てか今絶対悪口言われたよね……私。
「あの、すいません。アラキファ様」
「気安く僕の名を呼ぶな。頭が高いぞ」
(えー!)
「くそ……こいつが居るせいでシンセは……」
なんか……ブツブツ凄く何か言ってる……!
というか何この変わりよう……さっきの人とは別人……? 別神なの……?
「あの……アラキファ様、加護をお願い出来ますでしょうか……」
「断る。さっさと視界から消えろ」
「そんな! だって加護が無いと私死んじゃうよ……」
「シンセ以外が死のうとどうでも良い。むしろ貴様が居なくなれば……フフフ」
「さっきまでしてくれるって言ってたじゃない!」
「気が変わった。僕にメリットが無さすぎるんだよ。貴様の心は見た事にない程に煩悩に溢れている……真っ直ぐに澄んだシンセの心を見習ってほしいものだね」
なんて奴なの……そんなの恋する乙女なんだから多少は仕方ないじゃない! ……でもこのままお父さんに言いつけるのも何だか負けた気がする……。
何か……そうだ!
「メリット……あるわよ!」
「は? これ以上僕を怒らせる気か?」
「お父さんの事、色々知ってるよ! 例えば一番好きな食べ物とか……」
――ガタッ!!
「何だと……?」
(いや凄い前のめり……食らいつき方が半端ないよ!!)
「ちゃんと神の加護をしてくれたら色々教えてあげるよ? 好きな色とか好きなタイプとかなんでも……」
「なん……でも?」
「う……うん」
気がつけばアラキファの顔は目の前まで来ていた。
その表情は恐ろしく真剣な眼差しである。
「おい、こっちへ来い」
「え? うん……」
アラキファ様にそう言われ、私はその後をついて行った。
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