2話 引っ越し完了!

「本当かい! 嬉しいよ!」

「ちょっと抱きつかないで! 父さんも荷物持つの手伝ってよ!」

「そうだね……てか結構な量だね……しかも殆どお菓子とフライドポテト……?」

「だって向こうにはこんなお菓子無いんでしょ? これでも少ないくらいだよ!」

「でも……冷凍のフライドポテトはチンする機械ないけど……? てか溶けるよ」

「……じゃぁその分お菓子詰めるから待ってて!」

「はいはい」


 そういって最後の荷物整理を終えて、異世界に行く準備は整った。


「じゃぁ……本当に行くよ?」

「うん。心の準備は出来てる」


「じゃぁその場から動かないでね……」


 すると、私達の身体は光始め、視界は真っ白になっていった。


・・・

・・


「もう目を開けても大丈夫だよ」

「うん……(あれ、お父さんの声じゃない……?)」


 違和感を感じながらもゆっくりと目を開けると、目の前には超美形の青年が立っていた。


「――ッええ! ちょ、あれ? え? お父さんは?!」


 何これ、いきなり超美形男子が目の前に……!!

 っていうかブラウンヘアーで短めのポニーテール……髪全体にウェーブがかかってる感じ……そして何より顔!! この人は私の推しの……!


「レン様と同じ姿ッッ!!」


――ビターン!


「ちょ! みなも!?」


 私はあまりの嬉しさに思わず卒倒してしまった。


・・・

・・


「うう……」

「あ、みなも、目が覚めたかい?」

「うわあああ! レン様!」

「待って! 落ち着いて!」

「な……何でレン様が私の所に……」

「みなも……ごめん、姿は変わったけどね、父さんだよ」

「……え? いやいや何を言ってるの! そんなの信じられ……」


 でも確かに、レン様はこんなおっとりした性格じゃない。もっと毒のある感じなのに……。


「ちょっとは落ち着いた?」


 おっとりとした感じと話し方はお父さんと似ているっちゃ似ている……。


「いやでも信じられないよ……」

「ここまで姿が違うとそうなるよね……あ! ならみなもと父さんしか知らない秘密を知っていたら信じる?」

「うーん、じゃぁ試しに言ってみてよ」

「じゃぁ小学校の6年生の時、お友達が家に来て泊まった時……みなもテンションが上がりすぎたせいか、おねし――」

「あーわかった! お父さんだね! てか何でそれをチョイスするの!」

「ごめんよ、でも信じてくれてよかった!」

「……」

「ご、ごめんね? こうなる事は言ってなかったね、てか見過ぎだよ」

「う……」


 そりゃ見ちゃうでしょう!! だって推しが目の前に……声も姿も……!

 でも……。


「中身がお父さんとかなんかモヤるわっっ!」

「とにかく座りなよ。どう? この景色。地球では見れなかっただろ?」


 そういって、お父さんは目の前の景色を指した。

 広大な自然が広がっており、時より飛んでいる鳥は見た事も無い形状をしている。

 木も色々な形が生えている。かなりでかい黄色のヤシの木みたいな奴とか……氷で出来たように見えるサンゴ礁の様な……木?

 とにかく、お父さんが指す森と呼ぶそこは、パステルカラーでキラキラしている。


「確かに……綺麗な景色だね。てか……」


 私は周囲を見渡した。

 開けた空間でテーブルと椅子がいくつか設置されている。まるで結婚披露宴会場の様だ。


「ここは……?」

「バルコニーだよ! ここで紅茶を飲むのが最近の日課だね」

「……貴族かよッ! てかこれがバルコニー?! 広すぎでしょ!」

「そう……だね、言った通り前の家よりは広いでしょ?」

「ええ、予想を遥かに越える広さよ!」

「まぁそれはうすうす父さんも思っていたよ……一人暮らしなのに広すぎるなって……」

「お家というか……砦じゃん……」


 そう思ったのは上を見上げると頑丈そうな岩で出来た塔や城壁などが目に付いたからである。


「そうだ! お菓子を用意してたんだ。座って待っててよ。こっちのお菓子も食べてみて欲しいんだ」


 そういってお父さんは部屋に戻っていった。

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