第3話「第2の難関」
犬浦は手馴れた手つきで客をあしらっていく。
「はーい、ちょっと退いてくださいね〜」
そんな声が前方から聞こえてきた。
俺達は話に夢中になりすぎて何やら周りが騒がしくなっていたことに気づかなかったのだ。
「え?あれ涼ちゃんじゃない!?」
「えぇっ藍ちゃんも居るんだけど!!」
「あ!真也様だ♡」
「キャー!めちゃくちゃイケメン♡」
「ライブで見るよりもかっこいいんだけど!!」
「涼雅様〜、こっち向いて〜♡」
お店があっという間にファン会場のようになって黄色い歓声が上がってくる。
「大体さ、もっと藍原はみーちゃんの可愛さを知った方がいいよ」とブツブツ文句を言う犬浦はファンの目の前でこれでもかとみーちゃんの事を語り続ける。
「え?涼ちゃん、みーちゃんって?」
「彼女とかじゃないの?真也様は勿論、彼女とか居ないけどね〜♡」
「嘘でしょ?」
「え〜?なになにー?彼女疑惑?笑」
そんな声が上がり始めてやっと俺は天然…にも程があるな…バカに声を掛けた。
「おい、このバ…犬浦!みーちゃんのことをそれ以上ファンに言ってはダメだ!みーちゃんが危険にさらされるんだぞ!?」
小声でそういうとバカはみーちゃんと言う言葉に反応したのか喋るのを辞めた。
「ごめんね〜、俺らもう帰るから道を開けて貰えるかな?」
近くにいる人達に微笑み、「あ、あ、どうぞ」と言っている人の様子を伺ってから俺らはそこを何とか切り抜けた。
いきなりバカが喋りだすから焦って俺も公表しそうになったのだ。
それから犬浦は魂を無くしてしまったかのように一言も喋らなかった。
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