生きる希望

 先日、テレビを見ていて、すごいなと思うことがありました。


 ドキュメンタリーですが、聴覚過敏や視覚過敏がありながらも、ピアニストになるという夢を叶えた男の子の話でした。


 彼は、私と同じ自閉スペクトラム症でしたが、過敏症を克服するために自ら苦手な音や、物を見ていました。


 それがどれほど苦痛なのかは、ご本人にしかわかりません。でも、他人事とは思えなくて、苦しむ姿に同じように苦しくなりましたし、楽しそうにピアノを弾いている姿を見て嬉しかったです。


 そんな彼が夢を叶えたのです。これは本当にすごいことだと思いますし、彼を心から尊敬しました。


 私は、障害を理由に挫折した側の人間です。

 建築士になりたかったのですが、数学どころか、算数さえできません。それでも諦めきれなくて建築会社に就職したけど、余計にできないことを思い知るだけでした。正直、失った時の喪失感は大きくて、全てがどうでもよくなりました。


 その後も、やりたいことを見つけたいと思いながらも、生きるためにはできることをしなければならないと、惰性で生きてきました。


 そして、ようやくまたやりたいことを見つけました。それが小説を書くことです。


 ですが、私にはまだ、彼ほどの熱意がありません。評価がなくても楽しければいい、と自分で逃げ道を作っているのでしょう。本気になって、これまでのように、また自分にがっかりしたくないからです。結局は傷つきたくないから逃げているのです。


 未だに私は、「自分は誰よりも劣っていて、夢を持つだけ無駄だ」という思い込みや、家族の言葉に囚われているのかもしれません。


「その殻を破ることで、生きる希望に繋がるのだろうか」


 彼の現在の姿を見て、そんな気持ちにさせられました。

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