9-1.現破治にて(別視点)
☆ 四夜視点 ☆
ハンバーガーショップに入って注文。
とりあえず……てりやきのセットに季節限定のバーガーにしておこう。足りなかったらパイかチキンを注文しよ。
そう思いながら注文をして、電子マネーで決算をして商品を受け取ってみんなを待つ。
ナイトは店のビッグネームのセットをポテトとドリンクのサイズアップで、レンは肉の代わりに魚のフライが挟まれているバーガーでセットはサラダとドリンクみたいだった。
戦士たちはハンバーガーとかを単品数個ぐらい。……お金ないんだろうなー。
え、ボクたち? 決まってるよ! 持っているスマホのアプリに聖女が定期的にお金をチャージしてくれているからお金は十分にあるから!
まあ、不破治で暮らしてたら聖女に申し訳ないって気持ちがあるから、基本的には使わないけどね。
そんなことを思いながらボクらは2階の奥にある席に向かう。
2人用のテーブルと椅子をくっつけて6人用にして、ボクたち女子組と戦士たち男子組で分かれて座ると話をする。
前世での彼らが死んでからの魔王を討伐するまでのこと。
そして今世でのこと。
それらを話していると彼らは感心したように頷き、時折驚いた顔を見せていた。
「そうか……。やったな、勇者」
「オレたちの決死の覚悟はムダじゃなくて良かったぜ」
「ククッ、そうでなくては困るよ……」
目に涙を浮かべつつ戦士は笑い、武闘家は鼻をすすり、魔術師はメガネをクイッとしていたけど目が潤んで見えた。
そんな彼らを見ながらボクも少し鼻をすすってしまう。
当りまえだろ? だってこいつら、ボクらを先に進ませるために戦って……笑顔で死んだんだから。
他にも散った仲間はいたし、彼らの思いを継いでボクは――ううん、ボクたちは魔王に立ち向かい、倒すことができた。
「だけどもう会うことが無いって思ってたのに、こうして出会うことになるなんてね」
「別に会わないままでも、よかった」
「えっと、は、半田さん……それは失礼では――いや、ナイト殿、彼女とこいつらは相性が悪すぎるのだ――そ、そうですのね」
ボクの言葉に隣に座るレンがムスッとしながら言うと、苦笑しながらナイトがレンを窘めようとする。
けれど途中で騎士が表に出てきて、レンと戦士たちもてないトリオの水と油の関係を口にすると納得していた。
知らない人が見ていたらまるでひとり芝居のように見えるけど、それを見ていた戦士が微妙そうな表情をしながらナイトの状況を口にする。
「うわ……、騎士のオッサンは転生じゃなくて、憑依って聞いてたけど……そんな感じなんだ。なんつーか奇妙感じだな」
「ククッ、武士系外国女子……オタク受け抜群だね」
「それにしても3人とも通ってるとこが聖ファンだったのか。痛系高校ネームって笑ってたけど、まさか知り合いが居たなんてなー」
武士系外国女子、それは普通にありだと思う。というか、バッチコイだよ。
魔術師、こっちの世界でオタク文化に触れてかなり濃くなっちゃってるねー。というか、厨二病絶賛まっしぐらに見えてしまうよ。
なんて思っていると武闘家がジュースを飲みながら、聞いていた話の感想を口にした。
「まあ、こっちも他校に前世仲間が居るなんて予想もしていなかったから驚いたけど、県境の高校だっけ?」
「そーそー、隣県の男子校に通ってるんだけど、女気ゼロだよゼロ」
「で、ゴールデンウィークだから遠出しようって話になって、現破治に遊びに来たってわけよ」
「それで成果は?」
「ゼロだよチクショウ!!」
痛いところを突かれたみたいで戦士が頭を抱え、武闘家は遠くを見据え、魔術師は現実逃避をした。
まーまー、こんな美少女たちといっしょにハンバーガー食べているんだから喜びなって。
「まーまー、こんな美少女たちといっしょにハンバーガー食べているんだから喜びなって」
「「「は?」」」
「何言ってんのこいつ。みたいな顔をされると傷つくんだけど?」
「いや、だって……ねぇ?」
「だよなぁ……」
「中身が、ねぇ……」
何というか酷い言われようだった。
まあ、ボクも見た目が超絶美少女でも、中身が前世で仲良く女の尻とかおっぱいを追いかけまわしてた親友だったら嬉しいとはあまり思わない。
って、それと同じ心境かー。納得納得。
「じゃあ、納得ついでにおっぱい揉んでみる?」
「「「え、い、いや、その~……勇者だし、ねぇ?」」」
「あっはっは、冗談に決まってるだろー? 童貞っぽい反応するなっての」
揶揄うように人並みにはあるおっぱいを両手で寄せながら戦士たちに言うと、彼らは皆同じ反応をしてくれた。
それに対してケラケラ笑うと今にも血の涙を流しそうなぐらいにグギギと歯を食いしばっていた。
っと、こっちもバカをやりすぎないようにしないと。そろそろナイトの視線が怖いし。
「それでそっちの今の名前ってどんな名前なの?」
「そういうそっちは……優木四夜、半田恋、ナイト=グレートシールドだったっけか?」
「そうそう。何というかボクらっぽい名前でしょ?」
「ああ、それっぽい名前だな。じゃあ、こっちも改めて紹介するか――まずは俺からさせてもらうな」
ボクの言葉に戦士は納得しながら頷き、そしてちょっとカッコつけながら自分を指差すと今世での名前を口にし始めた。
ちなみに戦士の見た目は180センチほどの身長で平均的な体形、髪は短めに切って茶髪に染めている。服装もラフな格好で、首のほうにチェーンネックレスを付けているから……いわゆるチャラ男といった印象が強い。
なんというか、自分をカッコいいと思っているけど実は周りからの評価は全然といった感じがするのは気のせいじゃないと思う。
「今の俺の名前は
「なるほど、ボクらより1つ年上なんだね」
「そういうことだな。ほら、つぎは武が行けよ」
「ん? おお、わかった」
戦士――いや、戦冶が隣でハンバーガーを食べる武闘家を肘で突くと返事をして、ハンバーガーを呑みこんでからボクたちを見る。
武闘家は……なんていうか、角刈りのマッスルだった。
戦冶よりも少し高い身長だけど、見事な逆三角形を創っている。マッチョ好きの女性が見たら興奮するだろうし、筋肉に憧れる男子が見たらアニキと呼びたくなるだろうなー。
けど生憎とボクは女性のおっぱいとプルンとしたお尻のほうが好きだからなびかない。
服装は黒のタンクトップに迷彩柄のズボン、それとブーツというどこの軍人だよとツッコミを入れたくなるファッションだ。
「今のオレは
「なるほどー。不破治でトレーニングって言っても畑を耕すぐらいだと思うけど?」
「畑か……、うまくすればいいトレーニングとなりそうだな……」
「あ、本気でなんかやりそうだ」
前世の武闘家は鍛錬に拘っていた細身の体型だったけど、筋肉信者になっている今の彼はいったい何があったんだろうね……。
まあそれは放っておいて……、最後は魔術師だね。
「ククッ……どう考えても僕だよね? 僕の名前は
「あ、うん……。自分を卑下しなくても良いと思うけど?」
「自分の名前だから卑下したくなるんだよ……ハハハ」
遠い目をしながら術流は空笑いするけど、本当に大事なときにボケを噛ましてしまいそうな名前で何とも言えないや……。
ちなみに彼は坊ちゃんヘアにメガネというちょっと暗めな印象が感じられるし、体型もヒョロヒョロで身長は165センチぐらいかなと思える。
服装もアニメキャラのプリントがされたシャツにジーパンといった格好だから、普通にオタクと感じてしまうなー。
ま、元々前世でも魔術師は女性受けしていなかったからなー、見た目も性格も。
「戦冶、武、術流だね。改めてよろしく!」
「ああ、よろしくな。四夜」
「こちらこそ」
「ククッ……、懐かしの仲間たちが女性となっていた……おもろ」
ボクに返事をしながら、戦冶と武はサムズアップ。術流はキモ――気色が悪い笑みを浮かべつつ口元に手を当てる。
ちなみに同じようにナイトたちは返事をしているけど、レンのほうは「えー、こいつらと?」といった感じの嫌そうな顔をしていた。
まあ、ナイトは生徒会長だから色んな生徒と遭遇しているんだろうなー。
生徒……生徒……。
「うぁ~~……、何でここにはシミィンちゃんがいないんだよぉ~~」
「うわっ!? いったいどうしたんだよ四夜?」
「有家さん、気にしないでください。四夜さんにとっては何時ものことですから」
「なるほど……、四夜お前今度はどんな子に惚れたんだよ?」
前世でもあったことだったからか、戦冶は呆れたようにボクを見る。
そんな彼らにボクは言う。
その瞬間、ボクはバッと顔を上げた。
「なんていうかね、見た目はすっごく地味な女の子なんだけどさきっと磨けばすっごく輝くって感じなんだよね。そして抱き締めたらポキッと折れてしまうんじゃないかってぐらいに細くって、グルグルメガネを外してぎっちぎちに結んだ三つ編みを解いたらきっとすっごく美人じゃないかって思うんだよ。ウェーブかかった灰色の髪がきっとすごくかわいいだろうし、目の色もきっと可愛いに違いないんだよ! そしてそしてなんと彼女は賢者なんだとボクは思っているんだ!」
「お、おい、四夜おちつ――って、賢者のジジイの転生!? マジで!?」
「あの爺さんも女にって……想像つかない」
「ククッ、不破治は
興奮しながら話すボクに対して、戦冶が落ち着かせようとしたけど賢者の転生した人物だというと彼らは全員驚いた様子を見せる。
うん、そりゃあボクだって驚いたよ。でもね、きっとというか絶対に賢者の転生した姿に決まっているんだ。色んな魔法を使えたし、ボクらを助けてくれた。
だけど、ナイトとレンはそうは思っていないみたいで、顔をしかめながら否定する。
「わたくしは彼女が賢者さまではないと思いますわ。だって、聞いていた賢者さまのイメージとまったく違いますもの」
「あたしも同意見。というか彼女のことが嫌い」
「ふたりとも……」
彼女たちの率直な意見にボクは困る。
まあ、賢者だと思うのに……そうじゃなくてもテイマーかもしれないのに自分には関係ないって言ってたことは腹が立ったけどさ。ついでにボクも怒って剣を突きつけたけどさー……。
「なんつーか、関係最悪ってのは分かったわ……。転生した賢者のジジイ、見てみたいと思うけど……聞いていると怖いな」
そんなボクたちを見て、苦笑しながら戦冶はそう言った。
まあ、ゾクゾクするほどに可愛いと思うから仕方ない。
そう思いながらボクはポテトを口に入れた。
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