2-3.魔法への第一歩

 前に2話更新しています。

 ――――――――――


「シミィンちゃん、もう大丈夫なの?」

「……ん、だいじょうぶ」


 ベッドから起きあがったわたしを心配するモルモルにそう返事をする。そんなモルモルのまわりにはフワフワとひかる白色の光の玉が浮いていた。

 部屋のなかを見ると森の木に近い緑色、すこし明るい黄色、海みたいな青色、すこしくすんだ銀色、キラキラとした白銀色の光の玉が浮かんで見えた。

 それに鉢植えを見ると……植えられたハーブの先から緑色の線が伸びているのが見えるし……これって、どういうことなんだろう?

 自分の目はどうなってしまったのか、すこしだけ不安に感じながら朝ごはんを食べるためにリビングルームに行く。

 廊下にも同じような光の玉が見えていて、リビングルームに入るとパパ、ママ、モルファルがいた。

 そこでようやく、家のなかに浮かんでいた光の玉はみんなの体から出ているのだということに気づいた。


「おはようシミィン。もう具合は良いのか?」

「シミィンちゃん、おはよ~。熱は……うん、熱くないわね~」

「ん、おはよう。パパ、ママ」

「おはようございますシミィンさん。大丈夫そうですが……何かありましたか?」

「なんにもないよ。モルファル」


 やさしく微笑むパパとママとモルファル。

 そんなみんなから、モワモワと体から色のついたなにかが出ている。そしてある程度したら、モワモワとしたそれが光の玉になって、空中に浮いていた。

 モルファルから緑色のひかり、モルモルから黄色のひかり、パパから青色のひかり、ママから銀色のひかりが出て……シャボン玉みたいに玉になってでている。

 だけどみんなそれに気づかない。……わたしの目がやっぱり変になっているみたいだった。

 師匠に聞いてみないと……。そう思いながらわたしは朝ごはんを食べる。

 今日はパパがおかゆを作ってくれていて、わたしはそれを食べた。

 ちなみにモルファルたちも日本食は大丈夫だから、同じように食べている。

 だから残っている量はすくないかもしれないけど、いつもはお茶わん半分でお腹いっぱいになるのに……残っていたぶんを全部食べることが出来て、パパたちは驚いていた。

 驚いていたけど、いっぱい食べたわたしを見て、嬉しそうにしてくれた。

 「よく食べたなぁ」とか「いっぱい食べたわね~」とパパとママは言っていた。

 ……いままで小食だったから仕方ないけど、本当にお腹がすいていたから食べることが出来た。


 これも、どうしてなのか師匠に聞いてみようかな。


 ●


「まがん?」

『うむ、お主の目の異常。それはお主の瞳が魔眼へと進化してしまった影響じゃ。それと食べる量が増えたのは体内の魔力が消費されていたから回復するため……じゃろうな』


 心配するママやモルモルたちに手を振ってさんぽをするために森に入ったわたしは、師匠のもとへと一直線に向かった。

 師匠は数日前に見たときと同じように、地面に座っていて目を閉じていた。

 けどわたしが近づくと目をあけて声をかけてきたから、自分にいま起きていることを聞いてみた。

 そして出てきたのが、まがんというものだった。あといっぱい食べれた理由も。


「それって、なんなの? へんなもの……なの?」

『大丈夫じゃ。この世界ではどうか分からぬが、わしの世界では魔眼を持っている者は数多く居た。じゃから心配するな。それに探せばきっとこの世界にも魔眼持ちは居る』


 不安そうにしていたわたしを励ますように師匠はそう言って微笑む。

 心配しなくても良い、そう言われてわたしは安心したけど……この見えるものっていったい何なんだろう?


「そうなんだ。よかった……。でも、この見えているものってなんなの?」

『ふむ……。お主から聞いたかぎりじゃと、その浮いている光の玉はその者から漏れ出した魔力じゃろうな』

「? パパたち、魔法つかえないよ?」

『うむ。溜め込むための器がないから溜まるわけがない。じゃから生成された魔力が漏れ出し、周囲に漂っておるのじゃ』

「そうなんだ。じゃあ、こっちのせんは?」


 師匠の言葉になっとくしながら、今度はせんについて聞く。

 そういえば、つまめるのかな? あのときはボーっとしながらつまめてたけど……。

 そう思いながら、わたしが来れなかったあいだに師匠が食べていたリンゴンベリーコケモモのあまりを見た。

 収穫時期じゃなかったから、まだ少し緑色でおいしくなさそう。

 そんな実だけど、ちいさい……せんが見えた。これってつまめるのかな?


『線……多分じゃが、脈だと思われる。つまりは地脈やそれが持っている脈じゃが……基本的に見えるだけで特に問題はないはずじゃ』

「そうなの?」


 ……つまめた。地面に伸びてる脈がちみゃくっていうのかな?

 そんなことを考えながら、わたしはせんをつまんだままリンゴンベリーを地面にうめて……ちみゃくのせんとつなげた。


『まあ、万が一にも脈をつまめたとしてもやめておくべきじゃな。地脈とはマナが満ちているから、繋げられたものがどうなるかは分かったものではな…………シミィンよ。お主なにをしておる?』

「……実のせんがつまめて、ちみゃくとつなげた…………」

『お、お主……――っ! シミィン!!』


 わたしの言葉に師匠はおどろきとあきれを混ぜた表情をうかべたけど、すぐにわたしを引っぱり自分のもとへと寄せた。

 直後、わたしが植えてちみゃくとつなげたリンゴンベリーが異常な成長をはじめた。

 リンゴンベリーはわたしの腰あたりまでの低い木で、秋になるといくつものちいさな実がなるものだったはず。

 けれど、わたしがちみゃくにつなげた影響からか植えたリンゴンベリーは一気に成長して、わたしの身長よりも大きくなっていて、たいりょうの実をみのらせていた。……しかも、なんだか金色に光っていた。


「び、びっくり……」

『馬鹿者! ちゃんと話を聞いてから行動をせよ!!』

「っ! ……ごめん、なさい」


 驚いていたわたしへと師匠が怒鳴った。

 突然の怒鳴り声におどろき、ビクッとしながら師匠を見ると……真剣に怒っていた。

 これは悪いことだったんだと理解して、わたしはすぐに謝った。


『わかれば良い。それにこれは良い教訓と思え』

「うん……」

『強大な力は強大な影響を及ぼすこともある。それをお前は理解した』

「うん、気をつける……」


 すごく落ちこみながら、師匠にあやまり、気をつけようと思う。

 ……そういえば、わたしもあのちみゃくをつかんでた……よね?


「ししょう、ちみゃく……わたしもつかんでたよね?」

『そうじゃな。お主の今起きている症状の原因のひとつはそれじゃろう』

「……治る、かな?」

『大丈夫と思っておくのが一番じゃ。とりあえず今はその魔眼がどのような効果を引き起こしているかを調べてみるべきじゃな』


 そう言って、師匠はわたしの瞳を調べはじめた。

 だけどいまのわたしは少し変になっているみたいで、師匠が調べるのに苦労していた。

 けど頑張った結果、わたしの瞳にはこんな効果がやどっていたといった。


 ・ちみゃくを視ることが出来る。しかもにんしきしたら、そのちみゃくを掴むことも出来るみたい。

 ・魔力を視ることが出来る。

 ・魔法の術式っていうのも理解できるらしい。

 ・精霊や妖精への理解をできたら、視れるそうだ。


 ちみゃくはさっき痛いほど理解した……。

 もしも使ってみたいと思うなら、師匠がやり方を理解してからするようにと言ってた。


 つぎの魔力を視るのは師匠やわたし、それにパパたちから出ているあの色つきの玉とかそんなのを視ることが出来るみたいで、師匠がいうにはまがんの中では一般的らしい。


 そのつぎの魔法の術式は何だか変な感じだった。

 だって師匠がわたしの瞳を調べているときに出た魔法陣を視た瞬間、頭のなかに『あいてを調べる』『どんな能力があるか』『その結果を知らせる』というのが浮かんだから。

 それを師匠にいうと小さい火の魔法を使って小さな火をだして視るように言ってきた。

 視れば『火が出る』『熱い』『燃える』といった感じだった。

 この効果は魔法使いだったら喉から手が出るほどに欲しいものだそうだ。

 魔法陣がどうやって作られているのかを知れば、それをもとに新しい魔法だって作れるかららしい。

 わたしもこれからのことを考えると、とっても必要なものなのかも知れない。


 最後の精霊や妖精にはおどろいた。

 だって、お話で聞いたことがあるけど本当にいることにびっくりした。

 師匠も視ることができるみたいで、この世界にもいると言ってくれたから……視れたら見てみたいと思ってしまった。

 おはなしとか……できるのかな?


 そんなことを思いながら、すこしだけ……ワクワクしてしまっていた。

 あと、黄金のリンゴンベリーはすごくおいしかった。そして師匠がいうには、魔力を回復させる作用もあるみたい。


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 来年もよろしくお願いします。

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