4-3.飼い犬がいる生活。
犬を抱きしめ、家に帰るために急いでみちを歩く。
だけど犬は少しずつぐったりとし始めていた。……これはまずい。
「だいじょうぶ……?」
『クゥン、クン……(ははうえ、ははうえ……)』
「……しかたない。ちゃんとした回復魔法は持っていないけど……これを使おう」
このままだと死んでしまう。それを理解したから、わたしはまえに手を伸ばす。
すると魔法でつくった倉庫にわたしの手は入る。
指に触れる感覚はいつも使う杖、ローブ、他にもいろいろ。触れる度に頭の中にじぶんが触れたものが何かが浮かんでくる。……けど欲しいのはこれじゃない。師匠がわたしに残してくれた物。
思っていたところで、カツンと指にガラス質のなにかが当たるのを感じた。それを手に取って倉庫から手を取りだす。
手にはガラスのびんが握られていた。師匠がのこしていったポーション。
「あった。……飲んで」
『キュン……クゥン……』
「……のめ」
『ァオ?! ァオン、アォォン(にがい、にがいよぉ)……ワウ、ワウゥ?(あれ、いたくない?) ワ……ワゥゥゥゥ~~ン!!(い……痛くなくなった~~!!)』
ふたを外して飲み口を近づけると、犬は飲みたくないというように顔をポーションから背ける。においがすごく草のにおいがするから仕方ないと思う。
だけどわたしは一言だけいうと口にムリヤリにポーションをつけて飲ませた。口の端から緑色の液体がこぼれるのが見えたけど、十分にのませたから大丈夫。
とつぜんのわたしの行動に驚いたように犬は鳴いて尻尾をピンと立てる。
だけどあまりの味になさけない声を上げていたけど、ポーションの効果がきいてきたみたいでキョトンとした顔をしていた。
そして完全にケガが治ったことを理解したみたいで元気な鳴き声をあげながら、尻尾をブンブンふってきた。
「ん、元気になった」
『ワゥン、ワゥ……クゥン?(これって、お前が……やったの?)』
「シミィン」
『ワン?(え?)』
「わたしの名前。お前じゃない」
『ワゥン。クゥン、クゥゥン!(わかった。シミィン、シミィン!) ワン、ワンワン!(おれ、たすけてくれた!) ハッハッハッハッ!(シミィン、やさしい。好き!)』
「……かわいい。ぜったいに飼う」
キラキラとわたしを見る犬のかわいさを感じていると、家が近づいてきて晩ごはんの匂いがしてきた。
すると、犬は視線をわたしから匂いがするほうへと変えた。
『ワン、ワンワンワンッ!(なにこれ、いい匂いがする!)』
「パパの料理は美味しい」
『ワンッ、ワウワウ、ワフンッ!(パパ、シミィンのパパ、料理おいしそう!)』
「ん」
期待に胸を膨らませるような犬の鳴き声を聞きながら、わたしは家の中へと入る。もちろん裏口から。
裏口の扉を開けると漂ってきていた匂いはより濃くなって、犬は口からよだれを垂らしはじめていた。しかもお腹がすいているみたいでおなかがキュルキュル鳴いている。
わたしもちょっと疲れているから、匂いにつられてクゥと小さくなったかも知れない。
そう思っているとわたしに気づいたパパがこっちを見た。
「お、シミィン。帰ってきたか!」
「ん。ただいま、パパ」
「おかえり。……ん、その子は? どうしたんだ?」
「拾った。飼って……、いい?」
『クゥン……』
わたしに笑がおを向けてくれるパパにわたしは返事をすると、パパは腕のなかに抱かれた犬に気づいたみたいで聞いてきた。
だからそう言ってから、見上げるようにパパを見る。ついでに犬も同じように見た。
むかしあったらしいテレビのCMのような光景かなと思っていると、パパは「う……っ」とうめき声をあげた。
「く……! か、かわいい。妖精のようにかわいいシミィンが愛らしい子犬を抱き上げてるのが超絶たまらない! け、けど落ち着け、俺の一存で勝手に決めたらママも困ってしまう……!」
『ワゥン……』
「くそ! 可愛い! おなか減ってるのか……ベーコンの切れ端、食べるか?」
『ワンッ! ハグハグハグ……ワンッ!(おいしいっ!)』
犬の愛らしさにこうふんしているみたいで、パパはもうメロメロだった。
その証拠におなかが減っているのが分かったみたいで、まな板の上に残っていた料理につかったベーコンの切れはしを近づける。
犬はすぐにこうふんして、わたしの腕のなかで体勢をかえると口を開けた。その中にパパがベーコンの切れはしを入れるとすぐに噛みはじめて、嬉しそうに鳴きごえを上げた。
よかったね。
「…………シミィン、とりあえず上に連れていってママにも聞いてみなさい。ママが良いって言って、ちゃんとシミィンが世話をするなら……パパは飼っても良いから」
「ん、ありがとうパパ。晩ごはん、きたいしてる。行こう」
『ワフンッ!』
「ああ、美味しい料理を期待してな!」
パパからは許可はもらった。次はママ。
そう思いながら、わたしは犬を連れて2階へと上がっていった。
●
「ママ、ただいま」
「シミィンちゃんおかえりなさ~い、下から聞こえていたわよ~。シミィンちゃんが拾ってきた子はどんな子かしら~?」
「ん、この子。かわいい」
『ワンッ(よろしくっ)』
ニコニコほほえむママがわたしに近づいてきたから、犬を前にだす。
犬もアピールじょうずになってきたみたいで、元気にほえた。というかオオカミのはずなのに、犬だ。
そう思っているとママがこっちに近づいてきて、犬の頭をなでた。
もちろん乱暴にじゃなくて、やさしくいたわるように。
『クゥ~ン……(い~におい……)』
「あらあら、おとなしい子ね~」
「ママがやさしく撫でてくれてるから、当りまえ」
「あら~♥」
わたしがそう言うとママは照れながらほほえんだ。
しょうじき言って、わたしのママは美人だ。
わたしよりも金色よりの長くてサラサラのプラチナブロンドの髪をうしろでひとつに纏めていて、おっとりとした目元からのぞくブルーアイズがきれいで日本人とは違った北欧系の外人だってわかる顔立ち。
身長はすこしだけ背が高いほうだと思う。だって185センチもあるパパと並ぶとママの頭はパパのあごしたあたりだからそう思う。そしておっぱいも大きい。
ママみたいな体型をモデル体型っていうんだろうな。……きっとあれがママを見たら、即座に声をかけてナンパするに違いない。
そんな美人なママはいつもママオーラって感じのものをはなっているぼんやりさんだ。
だけどお店ではお客さんにとっても人気で、ママ目的で来る人もいたりする。
そしてママオーラがすごいから、わたしのママはママだってわたしは思う。
こういうのを……こぎとえるごすむ、ってやつだっけ?
「あら~、かわいいわね~♥ けどちょっと毛が汚れているから、ごはんを食べたら洗ってあげないといけないわね~」
「ん、それはわたしがやる」
「わかったわ~。それじゃあ、飼ってもいいわよ~」
「……ありがと、ママ。よかったね」
『ワウンッ!(やったぁ!)』
そんなことを思っている間にママは犬の頭をなでていた手をいどうさせて、体のところどころに触れて犬の体の汚れっぷりを見てママは言う。
ママの言葉に拾ってきたのはわたしだし、洗うのは当たりまえだと思いながら少しだけ胸を張っていうとママも犬を飼うことを許可してくれた。
それにわたしは小さく微笑み、犬も嬉しそうに尻尾を振って……制服ごしにわたしのおなかをくすぐるようにしていて、くすぐったかった。
とりあえず、飼ってもいいって言われたから名前を決めないと。
ママの母国にはオオカミの伝説がいっぱいあるから、その名前を使いたいな。
そう思いながら、わたしは料理を持って戻ってきたパパとママ、それと新しい家族になった犬といっしょに晩ご飯を食べた。
ちなみにパパは犬を紹介してからの短い間に犬ようご飯として、わたしたち用のスープをすこし使い、それにごはんと空飛ぶヤコブさんに使うローストチキンを使ってドロドロに煮込んだおかゆのようなものをつくってくれていて、あら熱を取り平皿によそわれた美味しそうに食べていた。
『ワンッ、ワンワンッ!(うまい、うまいうまい!)』
「おいしそうに食べてる。ありがと、パパ」
「おう、美味しいか? ははっ、シミィンにそう言ってもらえると嬉しいなぁ!」
「ほんとう、美味しいわ~♪ ありがとうね、パパ♥」
尻尾をふりながら犬はごはんをいっしんふらんに食べている。
犬にもパパのごはんは美味しかったみたい。そう思いながらわたしもママもパパのごはんを食べた。
ちなみにママは接客担当だから、料理のうでは……さっせばいい。
そして犬はパパがつくったごはんが空っぽになるまで食べて、パパとママを驚かせていた。まあ、犬みたいなオオカミのモンスターだからいっぱい食べるのは当りまえ。
食後のフィーカを楽しみ、しばらくゆっくりしているとお風呂が沸いたことを知らせるアラームが鳴った。
アラームを聞いて、パパとママに先に入ってもらい、わたしは犬を洗うために最後に入ることを言うと2人はうなづいて、ママ、パパの順で入っていった。
パパが入っている間にわたしはいちど部屋に戻って汚れてもいい古くなったワンピースを取ってリビングに戻る。ちなみに着替えていないから制服のままだけど、洗濯をしてもらうつもり。
お風呂上がりのママはくつろぐ犬の近くにクッションをおいて座って、やさしく背なかを撫でていたけど、戻ってきたわたしに気づくとやさしく微笑んでくれた。
「この子、かわいいわね~」
『クゥ~ン……(ふぁ~……)』
「すごく気持ちよさそう。この子……名前どうしよう」
「あら~決めていなかったのね~、いい名前にするのよ~?」
「ん、いい名前を考える」
「さっぱりしたー! シミィンが最後だけど温まるんだぞ」
「わかった。それじゃあ、入ってくる。行こう」
『ワン!(わかった!)』
「あ、そうだシミィンちゃん~。ママも調べたけど、ワンちゃんには人げん用のシャンプーや石鹸はつよいみたいよ~」
「ん、わかった。この子が嫌がったら洗うだけにする」
「そうしなさ~い」
うなづいてママに言ったのと同じタイミングでパパがお風呂から上がってきた。
あついからか上はシャツだけで、下はわたしたちに遠慮してパジャマのズボンの格好でお風呂あがりのお水を飲みながらわたしを見送る。
犬を連れて入ろうとしたわたしにママがそう言ったので、頷く。
でもママ、この子……普通の犬じゃないから、たぶん大丈夫だって思う。
そう思いながら犬を連れてわたしはお風呂に向かった。
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シミィンのパパとママの外見イメージ
・パパ:185センチの細身の筋肉質のイケオジ料理人
・ママ:168センチのモデル系北欧美人(巨乳)
・シミィン:143せんち(実はそれ以下かも知れない)の妖精(ロリ)体型(えいえんのぺったん)
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