将来はどうしたいか分からない私

龍川嵐

将来の不安

苦しい。息ができない。胸が苦しい。

なぜ将来に何をしたいか決めなければならない?

まだ先のこと知らないのに、決めることができるのか。それがとても不思議である。パンフレットや資料などにざっと目を通しても、ピンと来ない。

何も知らないまま、進路を決めなければならないかな?

誰かに相談をしても、ほとんどの人が「それは、みんな誰でもよくあるよ」と答えることが多い。この言葉はよく聞く。なぜみんなはこの言葉を使いたがるだろう。励ましの言葉が見つからないので、定番のフレーズを使ってるかな?

なぜ私のことを見ないの?

なぜ私ではなく、全体を捉えて助言するの?

一般的な常識は置いといて、私のことを見て欲しい。

だけれど、みんなは「一番大事のは、先生や両親から決められるではなく、自分で決めることよ。自分のやりたいことをやると良い」とアドバイスされた。

みんなは真剣に私の話を聞こうとしない。表面は心配して話を聞いてあげる態度であるが、内面ではどうでもいい、さっさと終わらせて欲しいとかでも考える。

何のために相談したのか分からない。

私は何も言わずに、作り笑顔を浮かんで、「そうだったか、話を聞くと気持ちが軽くなった。ありがとう」と相談に乗ってくれた人に伝えた。

気持ちが軽くなったと言ったけど、本当は重たいな気持ちのままだ。でもこれ以上に話しても相手は同じことを答えてしまうから。何度も話しても話しても無駄だと思う。だから私は嘘をついて、早く切り上げた。

どうして苦しくなるだろう?どうして胸が痛くなるだろう?

何をしたいか一つだけ決めれば良い。でも複数の選択の中でたった一つだけ決めなければならない?宇宙に行くと同じくらい人生で大きな決断でもない。それなのに進路の決め方で人生が左右される。なんだか理不尽だなと感じる。

心の中ではふわふわと浮いている感覚がする。足が地面に着かない。無重力の中に私自身が浮いていて、吐き気がするくらい気持ち悪い。

なぜ苦しまなければならないの?早く苦しみを解放したい。

私は就職する気はまだない。学びたいことがあるので、大学に進学しようと思っいる。しかし、複数の学校がある。なぜ複数の学校があるのか分からない。確かにそれぞれの学校によって学べる内容が異なる。しかし、学べる分野が似ている学校は複数ある。なぜ複数があるのか分からない。教育方針が異なるから?学校環境が異なるから?しかし、学校はどこへ行っても同じだし、学ぶ内容も変わりはない。だから、学校を統一すれば良いじゃないかと考えてしまう。

私は大人になりたくない。大人になると責任を持たなければならない。お客様を第一にして考える必要がある。何かのクレームでも起きたら、お客様に怒られる。お客様が納得するまで謝り続けなければならない。一日中に謝り続ける大人になるのを想像するとゾッとする。

私は未来に生きる価値がない。生きる意味がないなら、死んだ方が良いかな?死んだら、両親に悲しませてしまう。私は周りの人に迷惑をかけてほしくない。じゃあ、どうやって迷惑をかけず、苦しみを開放するか?考えても分からない。苦しい生活を続いてきた。でも心の支えとなっているのは、日記だ。日記を書くと、自分の気持ちを全部吐き出すことができる。楽になった訳はないが、日記を書くと不思議けれど、悩みや苦しみなどを一切考えなくなる。でも書き止めたら、再び苦しくなる。書く時間だけ幸せになれる。

もう学校に行きたくない。先生に何か言われるのが怖い。早く進路を決めなければならない。あなたはどうしたいのかと言われるばかりで本当に苦しくなる。うるさいと反抗したいが、反抗するのが難しい。

私は空気を読んで、「えへへ、ごめんなさい。まだ迷っています」と無理に笑顔を作って、答えた。

心の中では、本当は泣き叫びたい。どうすれば良いか分からない!なぜ進路を決めなければならないのか!自分のペースで決めることができないのか!と胸を裂け破りたいくらい叫びたかった。

他の友達はもう進路を決めていた。周りの人はほとんど決めていた。私だけまだ決めていない。周りの人から孤立になってしまった。

友達はいるのに、寂しい。自分の気持ちと同じ人がいなくて寂しい。

私はどうすれば良い?友達と同じ大学に進学する?この大学に進学したい理由?私の友達が進学するから?それはダメだ。理由になっていない。理由なしで入学できると良いなぁといつも考えていた。

椅子に座った。いつもより大きな溜息を吐き、背伸びをした。

「「あ〜何も考えずに過ごしたい!」」

ん?同じタイミングに同じ言葉を話した?

誰かと思って、横に振り向いたら、男子高校生と目が合った。

二人ともプッと笑い出した。

「あはは、同じタイミングに同じ言葉を話せるのはあんまりないよね」

「それな!マジで奇跡じゃないか!」

「あなたは…倉本さん?」

「ああ、あれ?俺って有名なの?」

「うん、バスケ部で部長だし、顔がイケメンで人気がある」

「そうなの?知らなかった、ハハハ。君は佐藤さんよね?」

「え?なんで知ってる?」

「学校の中で知らない生徒はいないと思う。相当有名だ。顔は可愛いし、困っている人をほっとけなくて助けに行くところが人気だわ」

「そうだったか、えへへありがとう」

「なんで大きな溜息を吐いてるけど、何の悩みでもある?よかったら俺が聞いてあげるから」

「ありがとう」

進路の悩み、苦しかったこととかなどを話した。

笑って呆れるかと思ったが、彼は真剣な顔にして私の話を聞いてくれた。こんな態度で聞いてくれたのは初めてなのかな。嬉しすぎて、日記だけしか吐き出せなかった内容も全部話した。

話を終えると、さっきまで海の中で溺れて苦しかった。しかし、今はスッと気持ちが軽くなった。彼なら話しやすいなと実感した。

倉本さんは、顔だけ上の方に向けたまま、私に話しかけた。

「驚いたわ。俺と似たような悩みを持っていたわ」

「本当…?」

「なあ、佐藤さん。俺の悩みを聞いてくれる?」

「うん、もちろん私でよろしければ話を聞いてあげる」

少し間を入れてから語り始めた。

俺はバスケ部の部長として指示をしている。中三の時スカウトされた。先生や部員に初めて全国大会に行けると思って期待されていた。最初は良かったが、結果は夢の全国大会に行くことができなかった。先輩や先生に冷ややかな瞳で見つめられた。全国大会に行けなかったのは倉本さんのせいだと言われていた。なぜ俺が責任を持たなければならないと思った。再び冷ややかな瞳で見つめられたくないので、先生と部員、みんなの期待を裏切らないように頑張って練習をした。結果は全国大会に行くことができた。しかし、心の中では満たされなかった。何のために頑張ってきた?先生や部員のために戦ってきた?途中からバスケをする意味を失ってしまった。全国大会に行ってから、バスケのことが嫌いになった。

もうバスケをやめようと思ったが、なんと大学にスカウトされた。俺はスカウトを断ろうと思ったが、両親や先生が嬉しそうな表情を見て、なんか断りにくいだった。もしこの場で断ったら再び冷ややかな瞳で見つめられるじゃないか怖い。

ポロポロと涙が出てきた。手で拭って話を止めた。

「ごめん、男が泣くのは情けないな、ハハハ…」

俺が彼女を見ると、佐藤さんが泣いていた。

「うお!なんで泣いてる?」

「ううん、情けなくはない。あなたの気持ちはよくわかった」

「そか…実はこの悩みは誰にも言えなかった。でも佐藤さんに話すことができて本当に嬉しかった。話を聞いてくれてありがとう」

二人は目を晴れたまま、青い空をボーッと眺めた。何も考えずにただ空を眺めるだけでも幸せだなと思った。

「なあ…卒業後、どうする?」

「んーまだ考えてない」

「実は起業をしている。俺は社長として働いている。秘書が欲しいと思っている。まあ、やりたいかやりたくないか君の自由だけどね」

「起業をしてるの?社長?すごいね…」

私がダラダラとしている間に彼は一人だけこっそりと起業をしていた。

「いやぁ、今の時代ならインターネットがあるから誰でも若者でも起業ができるようになった。他の会社と比べて自由時間がたくさん作っている。どう?」

「私は書くのが好き。将来小説家になりたいなと思った。小説を書く時間を作ることができる?」

「もちろん、作れる」

今日、会ったばかりなのに自分と相手も自分の悩みを吐き出せたのは初めてだった。この人なら信用していけそうと思った。

「秘書になりたい。あなたの秘書になって、支えてあげたい」

「ありがとう」ポケットの中から出した名刺を佐藤さんに渡して「俺の会社へようこそ!」と言った。

私は名刺を受けて、ありがとうと伝えた。

「あ…の…佐藤さん、初めて会ったばっかりなのに一目惚れをしました。佐藤さんのこと好きです。結婚してください」

「え?結婚?」

「はい、今すぐ結婚して、あなたを支えてあげたいです!そして小説家になる前となった後もあなたのそばにずっと一緒にいたいです」

「プッ、あははは、なんで丁寧語を使ってるの?まだ高校生だけれど…嬉しい。こんな私だけどよろしくね」

作り笑顔でもなく、自然の笑顔で同意した。

彼はマジ?と言って、大きくジャンプして大喜びをした。

彼を見て、あはははとお腹を抱えて笑った。

もちろん将来のことはまだ不安が残っている。胸を引き締めるくらい苦しいけれど、彼のそばにいるなら安心できる。

さっきまでは真っ暗な未来だったが、今は光が見えた。まだ不安という気持ちは残っているけれど、彼がいるので大丈夫。彼が頑張っているので、私も小説を頑張って作ろうと思った。早く家に帰って小説を書きたい。


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将来はどうしたいか分からない私 龍川嵐 @takaccti

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