第54話 黒幕の正体
「どうして来たんだ、モナ!!」
「ふふふっ、丁度良かったよ。これで役者は整ったようだ」
ウルの伝言にあった忠告には従わず、母であるレジーナを誘拐した犯人の元へとやって来た。
母はスラム街にある駐屯地に監禁されているらしいが、そちらは別の人物に任せておいた。
教会の祭壇にはウルと犯人が相対している。
幼い頃からずっと一緒に育ってきたはずのミケは、普段の人懐っこい表情から悪人の顔になってしまっている。それがなによりもショックだった。
「ミケ……どうして」
「だから言っただろう! 僕を選ばないと大事な人間を失うってな! 聖女の癖に役目を放り出して、こんな奴と添い遂げようなんてするからだ! ましてやコイツの中身は魔王だぞ。それをキミは分かってるのか!?」
どんな方法を使ったのか、ウルはロープで身体を拘束されて身動きが取れないようだ。
ひざ裏を蹴り、床に跪かせる。彼の銀髪を鷲掴み、物のように見せつけてきた。ミケにとって、彼はもう仲間でも何でもないようだ。
「そんな他人が勝手に決めたことなんて知らないわよ! それに分かってないのはミケの方でしょう!! アンタ、いったい何をしたのか分かってるの? 人のお母さんを拉致しておいて好きだなんて、その口で良く言えたわね!!」
「うるさい!! そんなのは僕の指示じゃない!」
彼の本性というべきか、昔の我が儘だった部分がまたぶり返してしまっているように見える。
自分の思い通りに行かないと拗ね、自分がやったことを棚に上げて他人のせいにする。
ともかく、彼の口からポロっと重要なセリフが出てきた。
すべてがこのウルの独断だと思っていたが、それはどうやら違ったらしい。
「……どういうこと?」
「ふはははっ。僕は偉大なる神に選ばれたんだ。この偽物勇者なんかより、僕を選んだ!! だから僕こそが勇者なんだよ!! アハハハッ!!」
「な、何を言ってるのよ? 先代聖女であるお母さんが、そこのレオが勇者だって女神様から宣託を……」
もう一緒に旅をした時の彼は居なくなってしまった。気が狂ったようにクルクルと回りながら喜びの声を上げている。
「だからそれが間違いだったんだよ。これから僕は神の加護を得て、新たに真の勇者となる。そしてモナと結ばれるのは、僕ひとりだ!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。アンタまさか、その神って……」
何かに気付いた様子を見て、ミケはニヤリと嗤った。
「そうさ。この世に神は他には居ない。キミの母に罰を与え、次なる勇者として僕を選んだのは――」
その時、三人しか居ないと思われた教会に四人目が現れた。
ゆっくりと女神像の後ろから出てきたのは、ローブを被った仮面の人物。
その人物を指差し、ミケは己の主人の正体を明かす。
「――他でもない、この世界の主神である女神様さ!」
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