第46話 英雄譚の裏側で
女神と初代国王、そして勇者と聖女の伝説には裏がある。
魔王が再び現れた時、女神の宣託が降りた。
しかし、初代とは違い勇者に選ばれたのは、王族の誰かではなかった。
選ばれたのは今代の勇者であるレオナルドと同じように、出自も分からぬ平民の男児。
民は再び自分たちから英雄が生まれることに歓喜した。
彼こそが救国の英雄。国父の再来であると。
しかし、プライドの高い王族の一部がそれを許さなかった。
それも当然である。
もしこの英雄が偉業を成した時、もしかしたら国を興したり自分に成り代わって王になるかもしれないのだ。
そして当時の王子の一人が、立ち上がってしまった。
『我こそが勇者の本来の血筋であり、勇者だ。あの者は偽物である』と言って、女神が選んだ幼き勇者を害そうとしたのだ。
結果、勇者は死なず、王子は死んだ。
雲一つない快晴のさ中、突如降り注いだ轟雷によって王子と周囲の兵はあっという間に消し炭となってしまった。
このことを女神が憂いたのか、再び宣託があり『勇者と聖女、そして国は盟友あれ』とのお触れをだしたのだ。
「それから我らルネイサスの王族と勇者は女神の化身である聖女を伴侶、そして母としたのだ。血の繋がりによって、その絆が失われぬように」
「はい。そのことは重々承知しております」
聖女となったものは、教会と国との関係を強固とするために繋がりを持つことになっていた。
教会は国の安寧の為に民の保護をし、そして国が教会を保護するのである。
つまり、聖女は勇者と王族の両者と結ばれ、子を成す必要があるということだ。
この場には二人しかいないとはいえ、このことを知っているのは極僅かな人間しか居ない。
必要になった時、ふさわしい手段によってのみ伝えられる極秘事項。
それは当事者であるモナや、彼女を愛する王子ミケでさえ知らされていない。
「つまり、モナにはあの件についても……?」
「はい。それはあまりにも酷だと思いましたので。時を見て私から、とは思っていたのですが」
「しかし、知らない方が残酷だぞ……」
深く、長い溜め息を吐くフレイ王。
この短時間で更けてしまったような、非常に疲れた表情をしている。
一方のレジーナは、何か覚悟を決めた眼差しで告げた。
「――えぇ、私から伝えようかと思います。勇者が一年後には、女神様の許に召されるという事実を」
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