青い星と月の間の誓い
この世界にはいくつもの紛争が古来より起こっている。
平和のためにといいながらもも多くの血を流し、絶え間ない戦さ。
一度は二度と戦争をしませんと戦争放棄したはずの日本国でさえも、大規模な戦乱にこそならなかったが、あらゆる時代、あらゆる場所、あらゆる集団によって、幾度となく闘いが繰り広げられていた。
そして、世界が宇宙に夢を求めた時代。
敬政七年 日本国宙域内で起こったテロ事件により”と呼ばれるテロ集団の活動が表面化した。
それから、いや応なく世界においても紛争は激化し始めていた。
一歩間違えれば、第三次世界大戦が起こらないとも限らない状況まで陥った。
それをどうにか防ぐことができたのは、日本国で発足された“トリプルエス”の活躍があってこそだ。
その中で第89師団「神風」のすさまじい活躍は伝説となっていおり、いつの間にか第89師団に入ることを夢見るものたちが増えた。そのおかげでトリプルエス入隊志願者が年々増えており、いわば飽和状態となってきている。
「英雄か」
彼がつぶやいた。
「わしらは、別に大しとらんけどな。そうだろ?」
彼の視線は宇宙にぽっかりと浮かぶ青い星へと注がれる。
「たしかにそうだな。おれたちは、いわれるままに動いたに過ぎない」
ずれた眼鏡を戻しながら、別の男がいう。
「実際に信念なんてあってないようなもん。わしちはただの組織にいる下っ端。上の命令には逆らえないってもんじゃ」
「そうだな。組織がいやなら、抜けるしか……」
「わしらが上に立つしかなかってことじゃのう」
「そうか、その方法があったな」
「なんじゃ、やる気か? 大久保」
「ああ、おれは出世するつもりだ。お前は?」
「わしは、もう少し地べたを這いずってみるぜよ」
「俺は降りる」
二人は、先ほどまでずっと黙っていたもう一人の仲間のほうへと視線を向ける。
「降りる?」
「おまん、やめんのか?」
男が立ち上がる。
「ああ、俺はここをやめて、地球へ戻る」
「なぜ?」
「やりたいことができた」
「
「ああ、あそこにしかない。早く見つけてやらないといけないんだよ」
「見つける? なにを」
「迷子だ……」
西郷と大久保は、お互いに顔を見合わせると、地球のほうへと手を伸ばしていたもう一人の仲間の横顔を見る。
「お前、保父さんにでもなるんか?」
「それもいいかもな」
「げっ、似合わねえ。目つき悪すぎじゃろう」
「うるせえ。でも、決めた。俺は地球へ戻る」
「なら、仕方ないか。これから、おれたちはバラバラな道をいく」
「バラバラなのは木戸だけじゃ。わしは残る」
「遠く離れても、俺たちは仲間だよな?」
「当たり前だ。木戸」
「そうじゃ、わしらは月で頑張る。おまんに地球をまかせた」
三人は右手を重ね、お互いに誓いを立てる。
青い星が三人をいつまでも見つめていた。
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