第20話『巨船』

久里浜沖を船が行く


黒い大きな船体で

波を蹴散らし掻き分けて

堂々と波の上をはって行く


何者も寄せ付けないような

頑丈な勇ましい船体


吐き出される黒い煙に

海猫達は巻かれ

遠くから船体を見送っている


そして僕は少年院の金網越しに

その船を見送っている


やがて低く

腹の底まで染み渡るような

太い汽笛を残したままその船は

遠い沖へと消えて行く


力強い前進

黒い大きな船体はまっしぐらに

遠い沖へと消えて行った


エネルギーの固まり

そんな言葉とぴったりの船体


巨船の力


僕はこう願う


幸せの港へ

まっしぐらに進んで行きたいと


少年院から消えて行きたいと







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