第19話『風哭き』

風が今日も哭いている


激しく時に柔らかく

ポールの国旗を震わせて


風が今日も哭いている


低く高く波となり

緑の草の上をはい


高い塀を乗り越えて

沢山の砂を舞い上げて


学舎を吹き倒すかのように…


格子を通り抜ける風は今日も

かん高く哭き声を震わせる


絶え間なく波のように押し寄せる風

黒潮匂う久里浜の風は

懐かしさ漂う古里の海のように

僕の心に深い余韻を残したまま

知らぬうちに通り過ぎていった


そして風は今日も哭いている


優しく時には狂ったように

吐き出されて行く


煙突の煙を吹き消しながら


風は今日も哭いている


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