第14話『逆流』

ある日一人の若者が

四角い社会から巣立って行った


それは自由の待っている明るい社会…

  

何も知らない若者は

温かく迎えてくれる社会を期待し

希望に胸を膨らませていた


新しい仕事を新しい生活を

力いっぱい生き抜こうとしていた


そんな若者を待っていたのは

空しい灰色の空と

変わり果てたあの娘の心だった


真面目に生きようとしていた若者の心は

何時しかネオンの渦の中へ

小さく白い泡のように消えていった…


裏切られた口惜しさと

捨てられた淋しさが

若者の荒んだ心を呼び戻し

ふっと気がついた若者の周りには

物言わぬ冷たい灰色の壁だけが 大きく立ちはだかっていた

  

若者は四角い社会へと戻っていた…

  

今は淋しさだけが

若者の心の中に

深く巣を作っているだけでした…





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